指宿市長選で傷ついた“三反園センセイ”の御威光

今月6日、鹿児島県指宿市の市長選挙が行われ、新人で元衆議院議員の打越明司氏が、4期目を目指した現職の豊留悦男氏ら3人を破って初当選を果たした。

選挙戦は、打越氏と豊留氏による事実上の一騎打ち。最後まで競り合うとみられていたが、ふたを開けてみれば、打越氏の1万1,618票に対し豊留氏は6,316票と約半分の得票に終わっている。

豊留氏にとって誤算だったのは、頼りにした「三反園訓センセイ」の意外な不人気。県知事選に落選して衆院議員に転身した三反園氏は、選挙戦終盤で指宿市に入り現職への投票を呼び掛けたが効果なく、逆に「票を減らした」と言われる始末となっている。

■出身地「指宿」では一定の強さ

テレビ朝日のコメンテーターだった三反園氏は指宿市の出身。2016年の鹿児島県知事選挙では「脱原発」を掲げ、当時の現職伊藤祐一郎氏に約8万4千票もの差をつけて勝利した(*三反園氏42万6,471票、伊藤氏34万2,239票)。この時の指宿市での得票は15,742票。伊藤氏は5,098票だった。

全国的にも注目を集める存在となった三反園氏だったが、それからの4年間はまさに最悪。候補者調整のために「脱原発」を目指す勢力と政策協定を結んでおきながら、知事に就任したとたん約束を反故にし、協定の相手との面会はもちろん、電話やメールもシャットアウトするという非常識な姿勢に終始した。

「嘘つき」との評価に加え、知事選直前には、予算を盾に県内自治体の首長に選挙支援を強要したことも発覚。自民・公明の推薦を得て強いと思われていた2020年の知事選では、複数の対立候補が出馬して「反三反園」の票が割れたにもかかわらず、不覚を取る(*三反園氏19万5941票、塩田康一氏22万2,676票、伊藤氏13万2,732票)。同年の知事選における三反園氏の指宿市での得票は9,668票。前回から6,000票以上を減らすという結果だった。

故郷とはありがたいもので、指宿市民が失意の三反園氏を完全に見捨てることはなかった。昨年の総選挙で国会議員への転身を図った同氏は、再び指宿市で1万票を超える支持を集める。下に、計3回の選挙における三反園氏と主な対抗馬の得票をまとめた。

三反園票は、もちろん実績に対するものではなく、「地元だから」という理由が大半だろう。三反園氏が挑んだ3回の選挙では、指宿市で必ず5,000票以上の「反三反園票」が出ているし、評判が悪い時期には6,000票も減らしている。一定の支持はあるが、圧倒的な強さではないということだ。しかも現在は無所属。国会議員として、地元選挙区の役に立つことは難しい。その三反園氏を、「先生」と持ち上げたのが、今度の指宿市長選で惨敗した豊留氏だった。

■「センセイ」になった元知事に厳しい声

下の画像は、豊留氏が選挙戦終盤にインスタグラムに投稿した写真と書き込み(赤いアンダーラインはハンター編集部)。たすき掛けの豊留氏の横でマイクを握っているのが三反園訓センセイである。

県知事選で落選して国政に転じた人物を「先生」と持ち上げる神経は理解できないが、三反園氏の街頭での訴えや選挙カーに同乗しての選挙支援はまたたく間に指宿市民に伝わったという。
「三反園さんが豊留市長の選挙カーに乗ってました」
「元知事が現職の応援演説をやっています」――ハンターにもそうした情報が次から次にメールされてきたが、「票が増えるとは思えんけど」という感想がほとんどだった。三反園センセイが盛り上げた市長選の結果は、次の通りである。

・打越明司(無・新)11,618票
 ・豊留悦男(無・現) 6,316票
 ・米倉由晋(無・新) 3,642票
 ・武田信弘(無・新)    179票

前述したように、4期目を狙った現職の豊留氏はダブルスコアでの敗戦。三反園氏の応援は功を奏すどころか、票を減らした可能性さえある。

指宿市在住の40代の主婦が、こう話す。
「私は最初の知事選で三反園さんに(一票を)入れ、おととしの知事選では塩田(康一・現知事)さんに投票しました。噓つきは嫌いだからです。実績もなかったし。知事を落選した三反園さんは、雨の日も風の日も街頭で頭を下げていましたから、『成長したのかな』と思って去年の衆議院の選挙では三反園さんに入れました。それが、国会議員としての実績も積まないうちに、こんどは豊留さんの応援……。人の選挙をやってる場合ではないでしょう。だいたい、豊留さんは3期も市長をやっているのに、指宿は少しも良くなっていない。さびれる一方ですよ。三反園さんはセンセイなんて呼ばれて、勘違いしているんじゃないですか」

小規模ながら何人もの従業員を抱える会社を経営する60代の男性は、呆れ顔だ。
「三反園は思い違いをしている。彼は指宿高校の卒業生で、テレビ朝日の記者時代から地元の星だった。知名度を生かして知事になったが、変節が激しすぎて、1期で終わった。選挙は知名度ですから、話題になった方が勝ち。今度は朝立ちを繰り返して同情をひく戦術で国会議員になったけど、指宿市民が彼の政治家としての可能性にかけて一票を入れてるわけじゃない。指宿出身だから――ただそれだけですよ。なにがセンセイだ。ばかばかしい。私も指宿高校卒ですが、彼についていい評判を聞いたことはない。豊留さんでも打越さんでもよかったが、三反園が豊留さんの選挙カーに乗っているのを見て打越にした」

たしかに、三反園氏には知事としてのさしたる実績はない。無所属の1回生議員でしかない現状では、地元選出の代議士として満足な仕事ができるとも思えない。そんな三反園氏が支援した現職市長が、ダブルスコアでの敗戦――。センセイの御威光に、傷がついた格好だ。

 

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