道警不祥事・現金盗やわいせつ事案は未発表

北海道警察で本年6月までに処分があった警察官の不祥事のうち、捜査の対象となった犯罪の少なくとも2件が報道発表されていないことがわかった。いずれも警察庁の「発表の指針」に基づいて未発表となった形だが、処分そのものが不当に軽かったと思われる事案もあり、ほかの公務員にはない“警察特権”が疑われる。

■一般人は晒し者、警察官だけ特別扱い

筆者は本年4月から7月にかけ、北海道情報公開条例に基づく公文書開示請求により道警の不祥事記録を入手、開示された『懲戒処分一覧』などを確認した結果、道警の本年上半期の懲戒処分と監督上の措置(懲戒に到らない軽い制裁)が計33件に上ることがわかった。この中に事件として捜査された事案があるか、及び報道発表された事案があるかを検証するため、さらに『事件指揮簿』や『報道メモ』などの公文書を入手して先の記録と突き合わせたところ、事件捜査の対象となりながらも報道発表されなかった事案が少なくとも2件あることがあきらかになった。

道警が一部開示した『懲戒処分一覧』を見ると、3月10日に「減給(10分の1×6カ月)」の懲戒処分を受けた巡査の不祥事は「信用失墜事案」とされている。ところがこれは、別の公文書では「窃盗」と記録されているのだ。当時作成された『事件指揮簿兼犯罪事件処理簿』には、こうある(一部伏字は道警)。

被疑者は、令和3年2月3日■■■職場内において、■■■所有の現金8万円及び■■■所有の現金1万5千円を窃取したものである

  事件は、被害を受けた同僚の届け出により発覚。道警は「警察本部長指揮事件」として捜査したが、容疑者である巡査の身柄拘束の有無や検察官送致の時期などはわかっていない。これを「信用失墜事案」として処分した道警は、事件そのものを報道発表しなかった。警察庁が定める『懲戒処分の発表の指針』では、「私的な行為」での処分は「停職以上」のみが発表の対象とされており、巡査の「減給」はそれに該当しないためだ。

 しかし現在、北海道の知事部局や教育委員会などは職員の懲戒処分を原則全件公表し、処分内容を公式サイトに掲載している。悪質なケースについては職員の氏名や年齢を開示することもある。同じ道職員の中で警察官だけがこれを免れ、ほかにない特権を享受しているのだ。

さらに「懲戒に到らない制裁」となると、そもそも発表の対象として想定されておらず、公文書開示請求を経ない限りほぼ永久に藪の中となる。

3月22日、上の窃盗事件を起こした警察官とは別の巡査が、監督上の措置として「警察本部長訓戒」を受けていた。「訓戒」とは、いわばお説教。ほぼペナルティとは言えない対応だが、巡査の事件の記録を紐解くとこんなことが書いてある。

被疑者は、■■■インターネット接続機能を有するスマートフォンを使用して、ソーシャルネットワーキングサービス「Twitter」上に、■■■インターネットを利用する不特定多数の者に、その画像を閲覧可能な状態に設定し、もって、わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列したものである

ツイッターにわいせつ画像を投稿した事件で、罪名は「わいせつ物頒布等(公然陳列)」。事件は巡査の訓戒措置と同日に釧路地方検察庁北見支部に送致されたが、当の巡査が逮捕されたのか、あるいは書類送検だったのか、その別は明かされていない。犯罪に関与して処分を受けた警察官は依願退職を申し出るのが一般的だが、この巡査がそうしたかどうかはわかっておらず、場合によっては事件が略式起訴に終わって本人が今も警察官として勤務し続けている可能性もある。

先の「減給」処分を受けた巡査が計9万5000円の窃盗事件を起こした2月3日、道警は複数の窃盗事件を報道発表し、公式サイトに各件の概要を掲載した。それらはいずれも警察官ならぬ一般市民が起こした事件で、中には被害額が9万円には程遠いと思われる微罪も含まれていた。以下に列挙する。

《店舗でICカードを盗んだ自称建築作業員の男(18)を逮捕》札幌北署

《店舗で財布を盗んだ契約社員の男(68)を逮捕》釧路署

《車両内から現金などを盗んだ無職の男(54)を逮捕》函館中央署

《店舗で食料品を盗んだ無職の男(64)を逮捕》札幌北署

《店舗で本を盗んだ無職の男(22)を逮捕》札幌中央署

一般人が「食料品」や「本」を盗むと晒し者になり、警察官が「9万5000円」を盗むと事件そのものが隠される――。各都道府県警察が「警察官募集」の資料にこの事実を盛り込んでおけば、人材不足は一気に解消するのではないだろうか。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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