【田川市議会百条委】執行部寄りの市議が疑惑報じた「インターネットサイト」を誹謗中傷|真相究明を妨害

 次々に不正を疑わせる事実が明らかとなっている福岡県田川市(二場公人市長)の「一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託」業者選定プロポーザルの過程を検証するため市議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)で、執行部寄りとみられる市議会議員が、ハンターの記事が議場で読み上げられた直後に発言を求め、記事の発信元である「インターネットサイト」について「姿も見えない」「公式の報道機関でもない」「社員が何人いるかも分からないようなところ」などと一方的に中傷。あたかもハンターの記事に虚偽の疑いがあるかのような主張を行っていたことが分かった。

 発言した市議本人に抗議したが、「ハンターのことだとは言っていない」と姑息な逃げ口上。念のため残された議会の記録を遡って調べたところ、本サイトを否定することで、記事にある「二場市政の疑惑」に蓋をしようとする同市議の姿勢が浮き彫りとなった。

■非常識議員の狙いは明らかに「ハンター」

 問題の発言を行ったのは、今村寿人市議会議員(当2回)。14日に開かれた百条委員会の中で、ごみ収集事業を担当する環境対策課の池口芳幸課長が、プロポーザルで選ばれた収集運搬業者のゴルフコンペに深く関わっていたことについての議論が行われる中、執行部を追求する香月隆一市議が、この疑惑を報じたハンターの記事を読み上げた直後、次のように発言していた。

あの~、まあ、客観的に聞いた感じでですね、インターネットサイト、ま、あの、インターネットの恐ろしいところがあってですね、姿も見えない、例えばその、公式の報道機関でもない、ま、特定の、何人社員が、何人おるかも分からないようなところで、まあ、ある一人が、事実確認もしないで、例えば虚偽のことを書いても、それがインターネットで流れるわけですね。それがその、虚偽か真実かも分からない内容を、この公の場で、その記事の内容を言うというのは、ちょっと問題と思うんですけど、まあ、この部分に関しては、委員長が制止するとかですね、そういった対応をしていただきたいと思います。

 議論の流れから、今村氏が「虚偽か真実かも分からない内容(の記事)」だと言いがかりをつけているのは、ハンターが今年4月7日に配信した記事(田川市環境課長、利害関係者にゴルフ場手配|コンペ参加の可能性も)。池口課長が今年1月30日にゴルフコンペを開こうと計画していた収集運搬業者「早雲商事」のために田川郡内のゴルフ場を予約し、さらにはコンペに参加していた可能性まであることを報じたものだ。早雲商事は昨年、百条委設置の原因となった問題のプロポーザルで委託業者に選ばれており、池口課長は同社の代表の「友達」(池口課長自身の表現)。さらに、課長が、プロポーザルの審査委員を務めていたことから「官業癒着」だとして、厳しく批判する内容だった。

 百条委員会で香月市議が読み上げたのは、ハンターの記者と池口課長の一問一答。百条委の委員長が途中で制止したため最後まで読み上げることはなかったが、次のようなやり取りだった。

――確認するが、今年の1月30日に鷹羽ロイヤルカントリークラブで行われた早雲商事のゴルフコンペに参加していないか?
課長:1月30日……?

――早雲商事の周年行事。
課長:……1月30日……。あー、いや行ってないですね。

――課長のお名前でゴルフ場を押さえたのではないか?
課長:ああ?

――早雲の周年行事だが。
課長:早雲の?

――早雲商事の社長はお友達のはずだが?
課長:ああ、友達ですけど。

――ゴルフコンペに出たのではないか?
課長:出てないですよ。

――出ていない?
課長:出てないですよ。

――課長の名前で会場を押さえてないか?
課長:……あっ、会場は押さえてはやりましたけど、出てないですよ。

――会場は押さえた。あなた、会員ですね。
課長:私、会員ですよ

――それもわかっている。
課長:あっ、はい。

――ゴルフコンペに出たはずだが?
課長:出てないですよ。

――なんでゴルフ場をおさえてやったのか?
課長:なんで?友達だからですよ

――しかし、早雲商事の代表は利害関係者ではないのか?
課長:利害関係者……。そんなゴルフなんか行っていませんから。通常は職場の付き合いで行ってますけど。役所の人と。

――なんで早雲のためにゴルフ場の予約をとってやる必要があるのか?
課長:友達ですよ。

―――友達だったら何しても良いのか?
課長:なんで?

――なんで?便宜供与だ。度を越えてないか、公務員としては。利害関係者だろう。
課長:利害関係……。だから、ゴルフなんか行ってないって言ってるじゃないですか。

――だけど、ゴルフ場押さえたのはあなただ。
課長:そんな手続きなんかしてやっても……。なんで?良くないですか?

――逆に聞くが、不適切だと思わないのか?便宜供与だろう。
課長:いや、おさえてやっただけでしょーが。なんで?

――あなたは鷹羽の会員の立場を使って、早雲商事のためにやってあげたのではないか?
課長:早雲商事さんも会員ですよ

――それをわざわざ、あなたが押さえたわけだ。
課長:自分の友達……。

――ゴルフ場は押さえてやったけど、何が悪いんだとおっしゃるのか?
課長:あっ、はい、はい、はい。普通の手続きを、手続きをしてやったんですよ

――ゴルフには行ってないのか?
課長:はい。

――行ってたらどうするのか?
課長:何を行ってたらって。行ってないって。

――もし行っていたら?
課長:行ってないって。

――ゴルフ場押さえたのは、あなたで間違いないか?
課長:ああ、もしかしたら違うかも、違うかもしれませんね。

 要するに今村市議は、この課長と記者のやり取りも含めた疑惑のプロポーザルに関する一連の記事に対し、「姿も見えない」「公式の報道機関でもない」「社員が何人いるかも分からないような」インターネットサイトが、「事実確認もしないで、例えば虚偽のことを書いて」とした上で、「この公の場で、(虚偽か真実かも分からない)その記事の内容を言うというのは、ちょっと問題」と言っているのだ。

 だが、池口課長とのやり取りは、別の関係者への取材を積み重ねた上で本人に確認取材したときの正確な記録に基づくもの。もちろん、そこに至るまでの事実確認は怠ってないし、そもそも池口課長自身が「ゴルフ場をおさえた」ことを認めている。それこそ、ハンターの記者に事実確認もしていない今村氏から、難癖をつけられる覚えはない。

■姑息な言い逃れは通用しない

 15日、今村氏本人に抗議するため電話連絡したところ、同氏は「ニュースサイトっていうか、特定のどこか分からないけど」「ニュースサイトの記事を公の場で読み上げるのは問題だと言っただけ」「社名は言っていない」「あなたのところ(ハンター)と一切言っていない」「私は、(ハンターの記事だとは)知らなかった」「見解の違い」「香月議員の発言に対して言っただけ」と姑息な逃げ口上を繰り返すばかり。“公式の報道機関”の定義について問い質すと「分かりません」、“テレビや新聞の報道内容にも虚偽か真実か判断できないものがある”と追及すると「それは分かっている」、“ほとんどのテレビや新聞、週刊誌も独自の「ニュースサイト」を運営しているが?”と聞いてみると「公式な報道機関ならわかる」などと無責任な回答が続いた。

 どれだけごまかそうと、今村氏は百条委の中で「この公の場で、その記事の内容を言うというのは、ちょっと問題」と発言しており、「公の場」で言われた「その記事の内容」がハンターの記事の内容だった以上、「ハンターのことは言っていない」という主張は否定されることになる。

 田川市議会の記録を遡って調べると、今村氏の言い訳は、一切通用しないことが明らかになる。

 今年5月25日に開かれた市議会厚生委員会の席上、前出の香月議員が、問題のプロポーザルに関する下のハンターの配信記事3件を列挙し、執行部側に説明を求めた。

・4月7日配信 《田川市環境課長、利害関係者にゴルフ場手配|コンペ参加の可能性も
・5月12日配信《田川市・疑惑のプロポーザル担当課長が業者のゴルフコンペに参加|「行ってない」は真っ赤な嘘
・5月19日配信《田川市・疑惑のごみ収集業者プロポーザルに新事実|ルール無視して「業務提案書」隠蔽

 非常識なことに田川市の執行部側は、担当課長に浮上したゴルフ疑惑を「プライバシーの問題」として事実上の回答拒否。そこで挙手した今村氏は、次のように発言していた。

議論の根底にあるのがニュースサイトですね。私も確認しましたけど、所在やその会社の実態など不明なサイトでありまして、ただ個人が書き込んだような内容じゃないかと思うんですけど、そういう真偽もよく分からないようなないようについては、厚生委員会で取り上げる内容ではないと思います。

 14日の百条委員会で香月議員が取り上げたのは、前述した4月7日配信の記事の中の、担当課長と記者との一問一答だ。今村氏は、5月の時点でこの記事を含む一連の報道について「私も確認した」と明言しており、記事を配信したのがニュースサイト『ハンター』であると理解していたことになる。5月議会と今回の百条委で提示されたハンターの同じ記事を巡る議論でありながら、抗議されたとたん、「ハンターのことは言っていない」という今村氏の主張は、その場しのぎの言い逃れ、それこそ「虚偽」に近い。

 そもそも個人ブログの記述であろうが、大手メディアの報道であろうが、行政に関わる疑惑が浮上した場合、その真偽を確かめるのがチェック機能を有する議会の使命。疑惑を前に、ニュースの発信元に根拠のない言いがかりをつけ真相究明を妨害するのなら、議会人としての資格はあるまい。議会の使命や議員としてのイロハが分からないのなら、税金の無駄遣いをなくすためにも即刻辞任するのが市民のためだ。

 ちなみに、関係者の名誉のためにあえて記すが、本サイトを運営する「株式会社ハンター」には複数の社員もいれば、全国にきちんと委託契約したジャーナリストもいて、公益性のある記事しか配信しない方針を貫いてきた。今村氏が何を確認したのか分からないが、2011年(平成23年)から続く過去記事を調べるなり、直接ハンターに問い合わせするなりしていれば、5月25日と今月14日の的外れな発言はできなかったはずだ。議会という「公の場で」本サイトを貶めた今村氏には、改めて謝罪を要求したい。

 実は、今村氏がけなしたハンターが、ごみ収集運搬業者選定のプロポーザルに関する取材と並行して調べを進めてきた事案がある。積み上げた事実を検討すれば、やはり「疑惑」と言わざるを得ない問題が浮上する。その疑惑の登場人物の中に――というより中心に――百条委で不見識を露呈させた今村寿人市議会議員がいる。詳細は、次週の配信記事で。

(中願寺純則)

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