忍び寄る「統一教会」

祈りの対象が神様だろうが仏様だろうが、人を不幸にする教えが「宗教」であるはずがない。そうした意味で、安倍晋三元首相の銃撃事件で脚光を浴びることになった旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、決して「宗教」ではなく、日本人を食い物にするカルト集団に過ぎない。銃撃事件の犯人である山上徹也容疑者は、統一教会によって家庭をバラバラにされたというが、同じような被害者が数多くいることは、すでに国民の共通認識となっている。

霊感商法や集団結婚式が社会問題化した当時を覚えている人の多くは、統一教会が名を変えて存続していたことや、安倍派を中心とする自民党の政治家たちがカルト集団と手を組んでいたことに驚いたようだが、悪質な行為を繰り返してきた教団は、それこそ私たちの身近なところで大っぴらに活動している。

■名称変更で地域社会に溶け込んでいた

先月、福岡県福岡市のある小学校区で、地域の自治組織によって作成された印刷部が全戸配布された。恒例だった校区の体育祭が、コロナ禍のせいで今年も中止になったことを知らせる内容で、関係者の挨拶や過去の体育祭の記録写真を7ページほどにまとめている。

 その2ページ目の自治組織(校区自治協議会)の挨拶文の下、地域の商店や医療機関にまじって『世界平和統一家庭連合 福岡教会』の広告が掲載されていた。

銃撃事件から印刷までの時間の関係や掲載料などの問題で削除が難しかったのだろうが、この集団が、ごく普通に私たちの暮らしの中に溶け込んでいるのが分かる。地元の自治組織が発行した印刷物に広告を載せている団体が、かつて社会を騒然とさせたカルト集団・統一教会だと気付く住民は少なかったのではないだろうか。団体の名称を変更して日本国民の注目を逸らそうとした統一教会の目論見は、まんまと成功していたということだ。

■豊富な資金 ― 原資は日本人の資産

広告に掲載された世界平和統一家庭連合の住所について土地と建物の登記を確認したところ、物件自体は立派なビルで、2015年(平成27年)6月に「世界基督教統一神霊協会」(統一教会)が売買で取得したものだった。同年8月に組織名が変更されたことで、現在の所有者は「世界平和統一家庭連合」になっている。ビルのは西鉄の駅から歩いて3分ほどの好立地で、建坪約1,157㎡。過去の抵当権設定状況からみて、取引額は億単位だったとみられる。(*下の画像参照)

 この福岡教会のビルから歩いて5分の場所には、下の画像のビルもある。

 このビルの土地・建物は、2020年(令和2年)9月に世界平和統一家庭連合が「生命観」として購入したもので、建坪約464㎡。やはり駅から5分の、しかも、大きな通りに面した好立地に存在している。取得するのに、それなりの金額がかかったのは、容易に想像がつく。

旧統一教会が豊富な資金を持ち、全国各地に教会やその関連団体、さらにはグループ企業などが数え切れないほどの不動産を保有していることが分かっている。「教会」だけでも相当な数だ。旧統一教会の本部は東京都渋谷区松濤で、「家庭教会」と呼ばれる物件は本部を含めて290箇所。北海道12、東北24、関東54、東京34、中部57、近畿45、中国26、四国13、九州・沖縄24という内訳となっている。その他にも目的別に多数の不動産物件が存在するのは、前述したとおりだ。

旧統一教会が保有する不動産は、そのほとんどが現金一括で買収されたものばかり。原資が、霊感商法によって日本人に壺や印鑑、多宝塔、宝石といった商品を売りつけて集めたり、マインドコントロールで献金させたカネであることは言うまでもない。日本人のカネで旧統一教会が日本の不動産を買い漁り、その不動産物件を拠点に、日本人の別のカモを取り込むという構図だ。まともな宗教団体のやることとは思えない。

多くの不幸がもたらされるようなものが宗教であるはずがない。恐ろしいのは、気付かぬうちに旧統一教会やその関連施設が地域に溶け込み、私たちに忍び寄っていることだ。

岸田文雄首相は17日、衆院予算委員会で旧統一教会に対し、宗教法人法に基づき解散命令請求の前段となる「質問権」の規定を使い、調査に乗り出すことを表明した。解散させることが、被害拡大を防ぐ唯一の手段である。

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