【南国殖産・田川バイオマスの闇】佐々木県議会副議長の関与、明らかに

 地元住民が反対運動を展開している「田川バイオマス発電所」(福岡県田川市)の不適切な事業認可過程が明らかになる中、発電所誘致に尽力した福岡県議会の佐々木允副議長が、SNS上で「あくまでも民間の工事であり、田川市役所も私も含め関係はございません」と計画への関与を否定していたことが分かった。

 問題のSNS投稿は、テレビ番組で発電所計画を巡るトラブルを知った市民の疑問に答えた際のものだが、田川市が早い段階から計画に関与していたことは既報の通り。佐々木氏に至っては、計画が進む過程で、事業主である南国殖産(鹿児島市)と建設に反対する地元区長との間を取り持ち、「南国殖産ー佐々木氏ー地元区長」の3者によるZOOM会議に参加して同社を擁護するなど、積極的に計画を後押ししていた。

 田川市と佐々木副議長が、田川バイオマス発電所の建設計画に関与していたのは疑う余地のない事実。佐々木氏は、副議長就任後の批判を避けるため、虚偽に等しい投稿を行った可能性がある。

■副議長就任の朝

 統一地方選後、初となる福岡県議会臨時議会が開かれた今年5月15日。佐々木県議は7時半頃、X(旧ツイッター)に次のような投稿をしていた。

 5月15日は、すでに内定していた佐々木氏の副議長就任が正式に決まる日。念願のポストを手に入れたことで、浮き立つ思いだったに違いない。そこにぶつけられたのが、KBC九州朝日放送が朝の情報番組「アサデス」で流した田川バイオマス発電所建設計画を巡るトラブルの報道だった。

 発電所建設計画の起点となっていたのは、2018年6月県議会における佐々木県議のバイオマス推進発言。田川バイオマス発電所の事業者である南国殖産を批判する形となったアサデスの報道内容は、副議長就任を前にして高揚していた佐々木氏に冷や水を浴びせる格好となっていた。しかし、自分に批判の矢が飛んでくることを防ぎたかったのか、このあと佐々木氏は保身に走る。

 アサデスを見たある田川市民が、「すがすがしい」とつぶやいた佐々木県議のX(旧ツイッター)に、《今、アサデスで田川バイオマス事業の特集を放送しています。これは、田川市としての事業なんですか?鹿児島の業者しか名前が出てこないです。》と質問を投稿したところ、佐々木氏は、何を思ったのか自らが深く関わってきたバイオマス発電への関与を否定したのだ。(*下がその時のツイッターの画像

 この佐々木氏の投稿があった直後、バイオマス発電所の建設に反対する市民の間から、「嘘つき」「南国殖産の手先のくせに」などという同氏に対する厳しい批判の声が上がったのは言うまでもない。「関係ない」と述べた佐々木氏が、実は南国殖産側の立場で動いていたことを、多くの関係者が知っていたからだ。

■露骨な南国殖産擁護

 佐々木氏と南国殖産の親密さを印象付けた出来事は、2021年8月に起きていた。同月25日、発電所建設に異を唱えていた関係校区の区長に、佐々木県議から「南国殖産が話したいと言っている」との連絡が届く。発電所の計画はつぶれたものと思っていた区長が「発電所の話は生きているんですか?」と聞き直したところ、佐々木氏は「はい、生きてます」。新型コロナの感染拡大中だったため、「とにかく話を聞かねば」と考えた区長が提案したZOOM会議が決まったという。

 同月30日のZOOM会議には区長の他、佐々木氏と南国殖産の2名が参加。南国側が、事業計画が続行されていることを明かしたあと、区長と同社側とのやり取りが続いた。

区長:なぜ、川より低い洪水時浸水箇所に建設するんですか?川が氾濫したら、油の流出などの二次災害の可能性がある土地に。

南国:そこまで考えていなかった。法的に補償すべき時は補償します。

区長:「安全です!と言ってても絶対安全なことはない。九州豪雨の時、彦山川もあと少しで氾濫するところだった!武雄市のように、浸水によりオイルが流出したら周りの農地や住宅地の被害は尋常ではない!(建設予定地の)周りは、田んぼや農地や住宅地ばかりで、二次被害になりますよ!それを、はなから河川氾濫時には災害となる可能性があるとは。何事ですか!ねえ、佐々木県議」

 2019年夏に九州北部を襲った大雨で大量の油が流出した佐賀県の事例を挙げ、南国殖産の担当者を厳しく追及する区長。地元田川の代表として県議会に出ている佐々木氏は、当然事業者を諭すと考えていた。しかし、あろうことか佐々木氏は、大声でこう逆ギレした。

○○区長、何を言ってるんですか!一番のリスクは、南国殖産ですよ!

 市民側の立場で調整に乗り出してくれたとばかり思い込んでいた区長はショックで二の句が継げなかったという。南国殖産と区長をつないだ佐々木氏は、田川市民ではなく南国側の人間だったということだ。

■残されていたもう一つの証拠

 佐々木氏と南国殖産の関係を示す証拠は、他にも残されていた。同年10月11日、ZOOM会議に参加していた南国殖産の社員から、区長が作成と配布を依頼した事業パンフレットの原案ができたとの連絡。関係者による内容の打ち合わせの場所として南国側がメールで指定してきた場所は、なんと佐々木県議の事務所だった。(*下がその時のメールの画像。赤いアンダーラインはハンター編集部

 “なんで中立であるべき地元県議が、ここまで南国殖産に協力しているのか”――不快に思った区長は、佐々木県議の事務所で行われる打ち合わせ会への参加を即座に断ったという。

 南国殖産を擁護し、会議に際して事務所まで提供していた佐々木氏。「関係はございません」というX(旧ツイッター)への投稿が、「嘘」と批判されるのは当然のことだろう。

 佐々木副議長と南国殖産の関係を巡っては、同氏と南国側の代理人弁護士が古くからの「友人」で(*下が現在は削除されているSNSの投稿画像)、その弁護士は佐々木氏の兄が代表の福祉関連企業で2021年春まで役員を務めていたことも分かっている。

 田川バイオマスの事業者である南国殖産(鹿児島県)は、事業認可を求めるため2018年(平成30年)12月20日付で九州経済産業局に提出した『バイオマス燃料の調達及び使用計画書』に、建設予定地の公表前であったにもかかわらず「これまで地元の代表者に対しては事業内容の説明をし理解は得られている」と事実上の虚偽を記載。2020年3月31日に差し替えた同計画書には、「宴会」を「住民説明会」と明記するなど虚偽申請を繰り返していた。

 発電所の立地自治体である田川市も、二場公人前市長(今年4月の市長選で落選)時代の議会質疑などで事実と異なる答弁を行っていた他、計画段階における協議の記録など関連文書が不存在であることも明らかとなっており、事業の正当性が疑われる状況となっている。

 

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