首相演説ヤジ排除事件の国家賠償請求訴訟で実質全面勝訴判決を得た原告らが3月31日、被告の北海道に対して控訴の断念を申し入れた。原告代理人らは鈴木直道知事へ直接『要請書』を手渡す考えだったが、知事側が多忙を理由に面会を断ったため、郵送とファクスによる要請となった。
ヤジ排除問題の国賠訴訟で一審判決が言い渡されたのは3月25日。札幌地裁の廣瀬孝裁判長は、安倍晋三首相(当時)の選挙演説にヤジを飛ばした市民らを排除した警察官の対応を違法と断じ、政権にヤジを飛ばす行為は憲法の「表現の自由」で保障されているとした。
判決を受け、北海道警察は「内容を精査し、対応を検討する」とコメント。一方、道の知事部局は現時点で控訴の意向の有無などをあきらかにしていない。
原告弁護団は判決翌週の28日、道秘書課に知事との面会を申し入れたが、31日午前になって「公務多忙のため面会不可」との回答が伝えられたため、要請書を送付する形で控訴断念などを申し入れることになった。
要請書によると、原告側が道に求めたのは「控訴の断念」「原告らへの謝罪」「再発防止策の実施」及び「排除事件の検証」の4点。31日午後に設けた記者会見で、原告の大杉雅栄さん(34)は次のように訴えた。
「排除当日は鈴木知事も現場にいて、ヤジを聴いているはず。その後あたかも自身は関係者でないかのように『警察には真摯な説明を求める』などと言い続けたが、自分は道の責任者としてどう思っているのかを問いたい」
控訴期限は4月8日で、原告・被告の双方が同日までに控訴を申し立てなければ一審判決が確定することになる。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |