安倍晋三元首相の銃撃事件でクローズアップされることになった旧統一教会(世界平和統一家庭連合)。かつて霊感商法や集団結婚式で注目され、反社会的な組織として断罪されたはずの教団が、名称を変えて生き残っていてことに驚いた国民は少なくなかったはずだ。
被害者を生み続けてきたカルト集団の存続を許してきたのは、他ならぬ安倍元首相をはじめとする自民党の政治家たち。惨劇を契機に、政治と宗教の関係が問われている。
■国内の宗教法人は18万
自民党議員と友好的な関係を持つ宗教法人は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の他にも数多く存在する。
神道政治連盟、公益財団法人全日本仏教会、天台宗、高野山真言宗、真言宗智山派、真言宗豊山派、浄土宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、臨済宗妙心寺派、曹洞宗、日蓮宗、インナートリップ・イデオローグ・リサーチセンター(霊友会)、崇教真光、立正佼成会、佛所護念会教団、妙智会教団、新生佛教教団、松緑神道大和山など数えだせばきりがない。以前は幸福の科学も自民党議員の支援団体だったが、幸福実現党の立ち上げで離れた。
このほかにも自民党議員を支援する法人、団体は数多く存在する。宗教団体ではないが、一般社団法人 実践倫理宏正会などには与野党から多くの議員が支援を求めて「朝起き会」や研修に参加している。
宗教団体と政治家の関係は思想でつながっているわけではなく、単なる組織票期待や選挙のお手伝い要員だ。それゆえ自民から維新、立民、国民など幅広い政党の議員の名前が取りざたされているのだが、そこに政党の主義主張は関係ない。票のためなら何でも良いのだ。特に自民党の場合、一人の議員が関係する宗教法人が10以上にわたることもある。
国内における宗教法人の数は約18万(181,252法人 平成29年12月31日 文化庁統計)。旧統一教会だけでなく、多少の差こそあれ宗教団体による財産被害は後を絶たず、いわゆる霊感・霊視商法、宗教団体からの脱退問題、宗教団体と近隣との生活トラブル、名誉毀損、入信脱退問題など様々な紛争が生じている。それにもかかわらず政治家が宗教団体との付き合いを続けてきたのは、政治家自身が敵に回したくない相手だと考えてきたからに他ならない。
■問われる宗教法人非課税の妥当性
では、宗教法人であることの特典とは何か――。
筆者が銀行員をしていた頃、創価学会から頻繁に30億~40億円が入金され、大口の定期預金が組まれていた。あまり知られてはいないが、宗教法人の預金利息には税金がかからない(*一般法人の場合、受取利息には15.315%の源泉所得税及び復興特別所得税がかかる)。宗教活動は一般の企業活動と違い、営利を目的に行われるものではないとされているので、所得税の対象にはならないことになっている。そのため寄付やお賽銭も所得にならないと規定されている(国税庁法人課税課)。
宗教法人が信者から多額の寄付を集め、それを金融商品で運用した場合を想定してみよう。例えば、10億円を金融商品(外貨建てMMFなど)で運用すると5パーセント程度の利息が発生する。年額にして5,000万円以上の利益だが、これを外貨から日本円へ交換しても非課税扱いとなる。信者数の多い巨大宗教法人であれば、非課税額は莫大な金額となる。
物品販売や駐車場経営などの収益事業に対しては課税されることとなるが、“線香やろうそく、供花などの販売であっても、専ら参詣に当たって神前、仏前などに捧げるために下賜するものは、収益事業には該当しない”など曖昧な点もある。
「収益」を上げれば、宗教法人であっても所得税が課税されるのだが、税法上「公益法人等」に分類されるため、税率は一般の企業より優遇されている。なんとも魅力的な特典が多いのが実情だ。
宗教法人への課税強化について語ると、「庶民のための小さな神社と、統一教会的な大きな集団は一緒にするな」と怒られるかもしれないが、そもそも小さな神社などには収益がほとんどないので課税されていない。
公平の原則からすれば、大規模な宗教法人への課税強化や寄付額の上限規制など抜本的な法整備が必要なのだが、宗教団体からの猛反発は必至だ。情けないことに、宗教法人を敵に回したくない自民党は法改正に踏み込めないだろうし、創価学会を母体にする公明党が宗教法人への課税強化に賛成するとは到底考えられない。
信教の自由は十分に尊重されなければならないが、宗教団体がその信者や、宗教活動によって集めた非課税のおカネを使って政治的な影響力を自由に行使するという、今の日本の状態は民主主義のあり方として間違っているのだ。
(国会議員秘書)