国民と乖離する自民党|「フランス視察」女性局長・松川るい議員の土壇場

自民党女性局のフランス研修をめぐり「観光旅行」にしか見えない写真を投稿して批判を浴びている女性局長の松川るい参議院議員。炎上を受けた自民党の大阪府連は、松川問題を協議するため8月10日に緊急で「役員連絡会」を開催すると決めたが、前日の9日になって急遽中止。混乱が続く事態となっている。長期政権の奢りが顕在化しているのは確かだが、自民党議員と国民との距離は、離れる一方だ。

■党内からも厳しい批判

松川氏は7月27日、滞在先であるフランス・パリのエッフェル塔前で、塔の形を真似たポーズをとっている3人の写真を公開。笑顔ではしゃいでいたのは、山研修に参加していた口典子堺市議と高木公香豊中市議、そして松川氏の3人だった。

松川氏については、研修先での写真などから自分の娘を同行していたことも明らかになっている(*ネット上で炎上したことを受け、いずれの写真も削除)。

事態を重くみた自民党大阪府連の枚方支部は「嘲笑うかのような7月27日の松川るい参議院議員のフランス投稿には呆れる」「大阪府連の執行部のこのような軽率な行為の積み重ねが、今日の大阪府連の結果となっている」として、茂木敏允幹事長に松川氏の選挙区支部長更迭を申し入れた。自民党の大阪市議が、次のようにぼやく。
「松川の失態で、大阪府連や支部などには電話など数えきれいないおどののクレームがきています。党員からも『どうなっているのか』と怒りの声が続々。冗談じゃない。すぐにでも支部長を更迭すべきだ」

自民党は、2021年の総選挙、2022年の参議院選挙、今年の統一地方選と日本維新の会にぼろ負けが続く状況。「大阪刷新本部」の本部長も兼ねる茂木幹事長は今月2日、来るべき総選挙にに備えるため、未定となっていた大阪府内小選挙区の新たな支部長を発表したばかりだった。

背水の陣を敷いた大阪府連にあって松川氏は政調会長という重い役職。前出の大阪市議は怒り心頭だ。
「8月2日、茂木幹事長が記者会見前に府連の全体会議で今後の方針について説明しました。しかし、政調会長である松川は姿さえ見せませんでした。府連内では、マスコミが松川を待ち構えていたので『逃げたんだろう』という話が広がっています。無責任。即刻辞任すべきでしょう」

問題のフランス研修は、どうみても観光旅行だ。写真週刊誌「FLASH」が入手した『令和5年女性局フランス研修 研修ノート』と題された冊子には、出発(7月24日)から帰国(28日)までの3泊5日に及ぶ日程が記載されているのだが、同誌は純粋な研修に充てられていたのは「たったの6時間」と報じている。

ディナークルーズやショッピングの時間も確保されており、観光旅行そのもの。自民党幹部によれば、その『研修』は国会議員が1人30万円、地方議員らは1人20万円が自己負担で、残りは自民党本部が支払っているという。

コロナ禍が明け、夏休みに入って海外旅行の需要は急増。日本航空や全日空は、コロナ禍前の2019年の9割近くまで国際線の便数を回復させている。当然、航空券の価格も上昇しており、日本航空や全日空で東京―パリ間往復を検索すると、エコノミークラスで安くても20万円から30万円といったところが相場となっている。

自民党が支払ったという旅費の原資に、国民の税金で賄われている政党助成金が含まれているのは周知のとおり。政治家の給料も血税が原資だ。政権与党の政治家たちによる海外への視察や研修となれば、エコノミークラスで行くことはまずありえない。最低でもビジネスクラス。ファーストクラスであってもおかしくない。そうなれば航空券代だけで1人100万円近くなる計算となる。自民党の元府議が、次のように嘆く。
「大阪府や大阪市でも以前、議会のヨーロッパ研修がありましたよ。観光と思われるスケジュールにならないように、朝5時半にホテルのロビーに集合し、歩いて周辺を見学。その後、本格的な研修や視察に行きました。ほとんどの時間を、公的な動きに費やしていたものです。今回の日程表を見ると、何の研修かまったくわかりません」

■呆れるしかない「子連れ視察」

もう一つの大きな問題は松川氏が自分の娘を同行させていたことだ。未成年者なので、おそらく松川氏と同じホテルの部屋。またフランスの国会議事堂でも娘の写真が撮られているので、道中の車も一緒だったとみられている。ホテルや車の費用には自民党からの支出も含まれており、公私混同の暴走に血税が使われた可能性が高い。この点について、ある自民党の幹部が苦々しげにこう話す。
「エッフェル塔の写真以上に娘の同行が問題だ。松川氏は、“女性局の研修旅行”を理由に、『子ども同伴OK』という話を持ち出した。しかし、それは出発の2週間ほど前のことらしい。国会議員の海外研修に子どもを連れて行くなんて聞いたことがない。当然、他の参加者は高い航空券などの問題もあって誰も連れていかなったらしい。松川氏は、自分の行為を正当化するため『子ども同伴は許可を得ている』と抗弁しているが、誰がそんな許可を出すんでしょうかね」

松川氏は外務省の出身で、夫の新居雄介氏は総合外交政策局審議官。9月の人事異動では、国際情報統括官に「出世」が決まっているという。外務省の幹部OBが、声を潜めて解説する。
「外務省や国交省のキャリア官僚やOBには、航空会社によっては特別価格が昔から慣例のように存在します。私も退官後にアメリカに何度か行ったが、ビジネスクラスで往復して20万円前後。それに税金がプラスされる程度でした。基本は本人しか使えないが、事情があれば妻など家族もOKという場合がある。ハッキリ言って役得です。松川さんがそれを使っていれば、さらに問題視されかねない。自民党女性局の研修ともなれば、現地の日本大使館は付きっきりで世話にあたる。それも税金が原資なんですけどね」

報道各社の世論調査によれば、岸田政権の支持率は右肩下がり。木原誠二官房副長官のスキャンダルと秋本真利衆議院議員の贈収賄事件に続き、松川氏の観光旅行疑惑と下げ要因が連続している状況だ。岸田派のある国会議員は、「3つも重なれば解散総選挙は遠のくばかり」と嘆くが、遠のいているのは自民党と国民との距離だろう。

松川氏はSNS上で「パリに終日滞在していたのは丸2日で有意義な研修」だったと強弁、「誤解を招いた」とも述べているが、何が「誤解」なのか――?国会議員なら、公の場で説明すべきだろう。これは自民党の責任でもある。

 

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