なめられた福岡県民|県議会副議長、辞任届置き捨てで久留米市長選出馬の非常識

今年6月に福岡県議会副議長に就任し、1カ月前に就任祝賀会を開いて多額の政治資金を集めたばかりの十中大雅氏が、16日午後久留米市役所で会見を開き、来年1月に予定される久留米市長選に立候補することを表明した。立候補するのは自由だが、十中氏は現職の副議長。12月定例会の開会を控え県議会や所属する自民党県議団とどう話をつけるのか注目していたところ、議会事務局に議長あての辞任届が入っているとみられる封筒を置き捨てにし、一方的に議員と副議長を「辞めた」と言っていることが分かった。

■宙に浮いた封筒の中の「辞任届」

関係者の話によると、十中氏は先週、秋田章二県議会議長に面会して市長選出馬のため副議長を辞任することを報告。辞任届を手交しようとしたが、12月定例会の開催を前にした重要な時期であることなどを理由に、議長が受け取りを拒んだという。

議長の対応は当然だ。県議会12月定例会の開会日は来月1日。来週24日には代表者会議が開かれ、県政の課題や議会運営についての調整が図られる予定となっている。副議長の要職にある県議が、個人的な理由で辞任し、コロナ禍にある県政を放り出すという話を「はい、そうですか」と認めるわけにはいかない。その場は「考えます」と引き下がった十中氏だったが、15日になって異常な行動に出る。

同日午前、県政界に流れたのは「十中が辞任届を提出するらしい」という情報。報道関係者も確認に走ったが、夕方まで「辞任届提出」を確認することはできなかった。ところが十中氏は、一人で議会事務局を訪れ、「何かが入った封筒」を議長に渡すよう頼んで県議会をあとにしていた。この際十中氏は、封筒の中身について何も説明していなかった。

封筒を渡された議会事務局の職員は、議長あての親書であるため、開封することはできない。議長は19日まで出張で、中身の確認も不可能。十中氏の辞任届提出の話は、藪の中という状況になっていた。

封筒の中に入っているのが、副議長の辞任届と議員の辞職願であることが分かったのは、16日に十中氏が開いた出馬会見の席上。十中氏自身が、副議長の辞任届と県議の辞職願を、議長あてに提出したことを説明し、顛末が明らかとなった。ただし、その時点で議長は封筒の中を確認すらしておらず、議会も議員辞職未承認。市長選出馬に前のめりになった十中氏が、勝手に「辞めた」と言っているだけだ。まさに県民不在。副議長の職にある政治家が、議会制民主主義を冒涜したに等しい。

■背後に鳩山二郎衆院議員の影

市長選に向けて暴走する十中氏のうしろに、久留米市を地盤とする鳩山二郎衆院議員の影がチラついていることもわかってきた。ハンターの取材によれば、鳩山氏の事務所は“十中支援”で固まっており、16日の十中氏の出馬会見には鳩山氏の女性秘書が顔をみせていた。久留米政界の事情に詳しい自民党員は、こう話す。
「鳩山の支援が見込めるからこそ、十中は強硬姿勢に出れた。鳩山のうしろには、武田良太前総務大臣がいる。おそらく古賀誠さんも十中支持に動くだろう。久留米市民にとっては迷惑な話だ。そもそも、惜しまれながら1期で辞める大久保(勉)市長は、後継について何も示していない。こんな騒ぎになるのなら、大変だがもう一度だけ、大久保市長に選挙に出てもらった方がいい。それがだめなら、ハッキリと後継者を指名するべきだ。そうすれば、バカなことをやっている県議会の副議長や、利権まみれの議員は出ても票は集まらない。それにしても、副議長や議員の辞職願を封筒に入れておいてくるなど、十中の姿勢は最低。県民をなめるなと言いたい」

 

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