混乱続く徳島市政|くすぶる内藤市長の「刑事的問題」発言

2億円の市税負担で、事実上16億円規模の保育所整備事業が実現する直前だった6月、初当選直後の内藤佐和子徳島市長が計画の見直しを発表した。唐突な方針転換に市民から厳しい批判が出る中、「代案を9月を目途に示す」としていた内藤市長が、8月24日の記者会見で新たな保育政策を提示した。

合わせると40施設以上ある市立の幼稚園、保育所、認定こども園を10年かけて集約し、認定こども園を15の中学校区ごとに1か所設置するという内容。さらに、保育士の増員で待機児童解消を図るとして、そのための待遇改善策などをまとめるのだという。停滞する保育の問題に動きが出たのは確かだが、一方で、6月の記者会見で飛び出した内藤市長の発言を巡り、くすぶり続けている問題がある。

 

■保育所整備事業への「介入」巡る議論

事の発端は、6月に開かれた徳島市議会でのやり取り。まず、市長寄りと見られている岡孝治市議(徳島活性会議)が代表質問で、「特定の第三者たちによる(保育)事業への過度な介入が行われたという疑念が払拭できない」として市に調査を求めたことが始まりだった。

内藤市長が見直しを決めた保育所整備事業の担当者に、何者かが不当な圧力をかけ、方針転換を迫った可能性があるという主張だ。この場合、特定の第三者とは市の関係者ということになる。

岡市議の発言に反応したのは、市長と距離を置く山本武生市議(自民党市議団)。同市議は、翌日の代表質問で「(第三者とは)私のことであると思う」と担当者へ“提言”したことを認めた上で、“介入”という言われ方に強く反発した。

山本市議はハンターの取材に対しても、「保育所整備事業について、『公募する保育事業者は社会福祉法人が理想ではないか』と市の担当者に見解を述べたことはある。でも、実際には民間企業にまで間口を広げた形で公募することになった。介入なんてあるわけがない」と述べ、議会での追及に不快感を示していた。

■「刑事的な問題」と市長が明言

その後、市議会4会派が市長に対し「第三者が過度に介入した疑いがある」として調査を申し入れ。これに対し、内藤市長は6月30日の会見で「調査を進めるうちに、刑事的な問題に発展する可能性がある」と発言し、記者団に噛みつかれることになる。

申し入れがあった直後で本格的な調査が行われておらず、何の根拠もない段階で「刑事的」という言葉――。会見で、記者から質問が集中したのは言うまでもない。会見という公式の場での市長発言は、極めて重いものだ。どのような根拠で「刑事的」と言うのか、記者なら当然確認せざるを得ない。複数の記者から発言の根拠を尋ねられたが、市長は「調査の関係で回答を控える」という曖昧な答弁で逃げを打った。

徳島市の条例では、市政への要望は文書に残して市長に上げることになっている。だが、公文書開示請求によって、「第三者による介入を示す文書」が存在していなかったことが分かっている。前出の山本市議によると、職員から「市政への要望に関する文書約700枚を調べたが、該当文書は存在しない」という旨の報告を受けているという。

問題の市長会見中、市の担当者は「現時点で第三者の介入があったという報告はあがっていない」と発言しており、その時点で市長発言の根拠となる”材料”はなかった。一部の記者からは、「印象操作ではないか」との指摘も挙がっていたという。

市長は第三者委員会の設置を視野に調査を検討するとしていたが、2か月経った現在でも第三者委員会は設置されておらず、調査が進んでいるのかどうかも不明。6月議会を傍聴していたという徳島市在住の女性(40代)は、「(会見での)市長の発言が行き過ぎたものだったと思えてならないが……」と首をかしげる。

■歯切れの悪い市長の回答

「刑事的」発言を重く見たのは、マスコミだけではない。8月11日には、自民・共産・無所属の市議11人が共同で、市長に対し「刑事的というが、何罪に当たるのか」など発言の根拠や調査内容、進捗について回答するよう要求。市長は、10日後の同月21日に回答している。市議らが求めた内容と市長の回答をまとめた。

歯切れの悪い市長の回答から分かるのは、現在もまだ調査中で、第三者委員会の設置には至っていないということだけ。「刑事的な問題」と発言した根拠は不明のままだ。回答書を読んだという市議の一人は「会見時と何ら変わらない。回答として、まったく中身がない」と憤る。回答を求めた市議らは、市長の発言を重くみており、再度質問状を送るなどして問題を追及していく方針だという。

(東城洋平)

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