不祥事、万博、斎藤知事で都議選惨敗|どうなる日本維新の会 

「えらいことになってしまった。もう大阪だけでやるしかない」と悲痛な表情で話すのは、大阪選出の日本維新の会国会議員。自民党、立憲民主党に次ぎ衆参合わせて55議席の勢力を擁する維新だが、6月22日に投開票された東京都議選で議席0となり、党内に衝撃が走った。

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前回の都議選では1人当選していた維新は6人を擁立。しかし、その1議席も失い、全員落選という結果に終わった。

2年前の統一地方選や2022年の参議院選挙で大きく勢力を伸ばし、野党第1党をうかがうほどだった維新。急激に支持が落ち込んでいる原因は、相次ぐ所属議員のスキャンダルと不評の大阪・関西万博、さらには兵庫県の斎藤元彦知事を巡る騒ぎだという。

維新の不祥事については過去何度も報じてきた(既報)が、都議選から参議院選挙と続く中でもスキャンダルが止まらない。

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4月20日付けで大阪府忠岡町の町長だった杉原健士氏が突然辞職した。同氏は大阪維新の会が公認した人物だが、町が発注した公共工事の入札最低制限価格などを業者に漏らし、官製談合防止法違反などの疑いで書類送検された。杉原氏は業者に情報を漏らしたことを認めており、立件が確実視されている。

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6月には、やはり大阪維新に所属していた生田達也藤井寺市市議が、体調不良として市議会を欠席。SNSに万博のイベントに参加していた写真がアップされていたことから、辞職勧告決議案が可決された。

「生田氏はうなぎなどの販売をしている“れいわ水産”の役員についています。会社が万博で出展するというので、手伝いをするためウソをついて市議会を欠席したんです。『藤井寺市の特産品のイベントだったので手伝いをしたかった』など言っていましたが、調べてみると自分の会社のPR。とんでもない詭弁ですよ」(決議に賛成した藤井寺市議)

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石川県の能登半島は、昨年の能登半島地震と豪雨災害で未曾有の被害を受けた。石川県庁に出向いたのは、大阪府八尾市の維新市議3人。寄付金を届けるため石川県庁を訪問したが、その際、酒を飲んでいたことがばれて厳重注意処分を受けている。

3人は、石川県庁で維新の顧問でもある馳浩知事と面談し寄付金を手渡したが、訪問直前の昼食時に飲酒。大阪から石川県に向かう列車でも飲酒をしていた。同県の関係者は「市議が寄付金を持参。それも維新所属ということで丁重にお迎えせねばと待っていた。やってきた3人は昼から赤ら顔。誰もが変だなと思いました」と振り返る。

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支払い実態がないにもかかわらず、事務員などにカネを渡したとして選挙運動費用収支報告書に記載していたことが判明したのは維新の西田薫衆議院議員。2023年4月の大阪府議選に西田氏が出馬したとき、虚偽の選挙費用79万円を支出として記載していた。西田氏は昨年の総選挙で当選しており、現在は衆議院議員だ。

ある維新の大阪府議がこう話す。

「府議選でボランティアに参加してもらった人たちに白紙の領収書を渡して住所、氏名などを書かせていたそうです。一人当たり5万円から13万5千円を支払ったことにしていたので、選挙費用としてはかなり高額。維新には『ボランティアが間違って書いた』と弁明していますが、そんな話を信じる人はいませんよ」

選挙運動費用収支報告書を入手して確認してみたが、23年3月31日に、9人に対し79万円を払ったことが記載されていた。備考欄には《1日10000円(5日分)4/9支払》などと記されており、とてもボランティアが勝手に記録できるような内容ではない。

この件が発覚した西田氏は、ボランティアだとしていた運動員たちに自らカネを支払って帳尻合わせをしたというから呆れるしかない。維新は西田氏に対して戒告処分を決めている。

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とても書ききれない維新のスキャンダルに追い打ちをかけているのが万博だ。6月21日現在、万博の入場者数は約104万人(国際博覧会発表)。しかし、これにはメディアや万博のスタッフなどに配布される「AD証」の数も含まれており、Ad証での入場者は1日あたり1万8,000人前後とみられる。それを差し引くと、100万人には達していないことになる。

「6月21日は土曜日で17万人を超す入場者があったと発表されました。しかし1万8千人ほどが入場券を買わないスタッフですので、実数は15万人台です。きちんと生の入場者数を発表したほうがいいのですが、維新としてはなんとか2,820万人という目標を達成したい。ですが国民目線では『おかしいじゃないか』ということになる。とりわけ関西以外は万博の報道も少なく、盛り上がりに欠けており、よけいにマイナスに映っているのが実情でしょう」(前出・維新の国会議員)

万博ではガスが原因とおもわれる異臭騒ぎや大量の虫の発生、さらには海水を引き込んでいるウォータープラザの水から指針値を超えるレジオネラ属菌は検出され夜のショーが中止なるなどトラブル続出だ。維新の関係者が言う「報じられるのは、マイナスなニュースばかり。それが維新に支持下落につながっている」という見立ては間違いではあるまい。

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そこへ斎藤兵庫知事の問題が重くのしかかる。維新は2021年に斎藤知事が当選してから県政与党となった。知事の内部告発問題が昨年3月に発覚した際も擁護を続けた。亡くなった人や県議会議員を誹謗中傷したNHK党の立花孝志氏らに内部情報を漏えいした増山誠県議と岸口実県議(ともに現在は離党)に対しては、県議会で問責決議案が可決されている。

「現在、増山、岸口両氏は『躍動の会』という会派を結成し、公然と斎藤知事を応援し、知事与党のようなふるまいをみせている。昨年11月の選挙で斎藤知事が再選されたとはいえ、百条委員会、第三者委員会などでパワハラなどの問題が認定されている。斎藤知事に大きな問題があることは事実なのに……」(前出の維新議員)

揺れる維新だが、トップである大阪府の吉村洋文知事は指導力を発揮できないでいる。東京の維新関係者は、「都議選で吉村代表が応援に入っても聴衆はまばら。人気がない。『斎藤知事の味方がきた』『インチキ万博』などと悪い評判ばかりだ。それなのに大阪の国会議員らは、吉村代表が来ると大入り満員だとえらそうな態度をとる。大阪とそれ以外の維新では亀裂が深まるばかりだ」と渋い表情で語る。

前回の参議院選挙では選挙区4、比例8の12議席を獲得した維新だが、情勢調査では、この数字をかなり下回るとの結果が出ている。

「選挙区で1か2、比例で3か4というのが党内でささやかれている参議院選挙の数字です。ここまで負ければ吉村代表の進退問題になるでしょう。吉村さんの他に発信力、カリスマ性があるような人物は見当たらないですから、分裂に向かうことも想定されます。すでに新たな党に移籍するような動きをみせている議員もいる」(同)

不祥事に万博、斎藤知事のトリプルパンチで維新は大揺れに揺れている。

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