西村康稔経済再生担当相が、酒類の提供禁止に従わない飲食店に「金融機関からも働き掛けを行ってもらう」と発言したことについて、嵐のような批判が湧き上がった。
■鳴り響く西村事務所の電話
新型コロナウイルスの影響で、酒を扱う店舗や業者の経済的苦痛は大きくなる一方。そこに、金融機関の優越的地位を行政が悪用し酒を売らないよう働きかけることは、行き過ぎた“圧力”以外のなにものでもない。批判は当然だろう。
あまりの反応に、西村氏は「私の発言で混乱を招き、不安を与えることになってしまった。趣旨を十分伝え切れず、反省している」と陳謝。しかし、業界団体だけでなく、法曹界や保守系の識者からも反発の声が広がった。政治家の失言は枚挙に暇がないが、今回の炎上は、政権を揺るがしかねない最大級のものとなっている。
こうした事態を受け、金融庁も全国銀行協会に送ろうとしていた依頼文書を引っ込めざるを得なくなった。
全国から批判の電話が内閣府や議員会館に殺到しているが、西村氏の国会事務所は月曜日から一切電話に出ていない。第一議員会館の廊下では呼び出し音が鳴り響いている。
■危険水域に近づいた内閣支持率
週末に行われたNHKの世論調査では、2012年12月に自民党が政権を奪還して以来最低の33%という数字を記録。内閣支持率が危険水域といわれる20%台に近づいた。
自民党が伸び悩んだ(というより惨敗)先月の東京都議選でも明らかな通り、4度目となる緊急事態宣言が発出された東京都では、特に支持率低下が著しい。そこに西村発言。秋に選挙を控える自民党議員からは、「勘弁してくれよ」「西村さんの頭には、死活問題にあえぐ飲食店の姿は浮かばないのか」との強い不満の声が漏れる。
13日、西村発言を受けて急遽、国会内で「街の酒屋さんを守る国会議員の会 緊急総会」が開かれた。冒頭、同会の最高顧問・野田毅衆院議員は業界団体に対して「西村発言を心からお詫びします」と発言。役員だけでなく、自民党の森山国対委員長や山口選挙対策委員長も急遽出席し、お詫びをして火消しにつとめた。
迷走を続ける政権のコロナ対策。13日夕には、酒類提供を続ける飲食店との取引停止を求めた販売事業者への依頼(*下の文書参照。画像クリックで拡大)も撤回されることになった。
西村氏に対してはネット上で、「反省しなくていいので、議員辞職してください」などと大臣辞任だけでなく議員辞職まで求める意見も――。13日の会見では、「責任を果たしていきたい」と辞任を否定している。