苦戦の都民ファーストに思わぬ“援軍”|流れ変えた麻生氏の「自分でまいた種」

総選挙の前哨戦となった東京都議会議員選挙の投開票日まであと2日。「こんなはずではなかったのですが……」と演説で枯れた声を振り絞るのは、東京都の小池百合子知事が創設した都民ファーストの会の現職都議。風に乗った前回の都議選(2017年)とは情勢が一変しており、焦燥感が漂う。惨敗必至の情勢だったが、思わぬ「援軍」が現れた。

■情勢調査「43議席減」の衝撃

6月26日、27日に自民党が実施した世論調査の結果からはじき出された各党の獲得議席数は、次のようなものだった。(*表は左から自民の調査結果を基にした予想議席、前回獲得議席、増減)

自民・公明の国政与党連合が、過半数を楽に超えそうな勢いで優位に展開している。

一方、前回選挙(2017年)で55議席を獲得し、都議会第一党に躍り出た知事与党の都民ファーストは大苦戦だ。予測からすると、4分の1ほどに減らす大惨敗となりそうな情勢だ。

前回の都議選で公明と組んだ都民ファーストは、勝負に出た小池知事の人気にあやかって1人区である千代田区、中央区で自民の重鎮を蹴散らし、2人区の台東区、府中市などで2議席を独占した。定数5の板橋区では都民が2議席、公明、共産、民進がそれぞれ1議席ずつ獲得し自民がゼロという結果だった。都議会では一強状態だった都民ファーストが、ようやく二桁に届く程度だというのだから、まさに一寸先は闇の世界だ。

今回、都民ファーストが低迷している理由が、2つあるという。

「まず、都民ファーストの都議は1回生がほとんど。いきなり都議になって、先生、先生とおだてられ、舞い上がってしまった。そのせいで、地元活動がおろそかだったのは明らかです。また、地域政党としての戦略がなく、都議選でも他の地方議員に個人的関係で選対をまかせるなど、体制を整えることができていません。

次に、前回の選挙では都民ファースト=小池知事。都民の候補者であれば、すぐに名前を覚えてもらえた。しかし、特別顧問となった小池氏は前面に出て支援してくれることはない。小池の風がなく、自民はじめ他の党からは猛攻撃――。1年生議員の力ではどうにもならなりません」(前出・都民の都議)

頼みの小池知事は22日夜、過労による入院を発表。選挙戦終盤の「小池サプライズ」も消えたとみられている。

■風向き変えた麻生発言

前回から倍増が見込まれ圧勝ムードの自民。しかし、都議選の応援演説に出向いた麻生太郎副総理兼財務相の不用意な一言が、流れを変えた。

「自分でまいた種でしょう」、「知事が自分でやり、過労で倒れた。同情している人もいるだろうが、そういう組織にしたのは知事」――。思ったことをすぐ口にする、麻生氏の悪い癖が出た。

病気、過労は誰にでもあること。事実、安倍晋三氏は2度、病によって総理の座を降りた。麻生氏の批判は的外れで、すぐさま炎上した。

2016年の東京都知事選。小池知事が優勢の中で、自民推薦候補の支援に立った石原慎太郎元都知事は「大年増の厚化粧がいるんだ」と小池知事を指して、言いたい放題。大炎上し、小池知事圧勝の流れを作りだした。今回の麻生発言に、石原の暴言を重ねて見ている関係者は少なくあるまい。

告示前の世論調査で、最高で55とみられていた自民党の議席数。しかし、麻生氏の「自分で蒔いた種」発言以降、期日前投票の出口調査でも支持が急落傾向にあるという。

「麻生氏にはマイクを握らせないようにしてほしい」――自民党都議候補のぼやきだ。五輪前の首都決戦から、目が離せそうもない。

 

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