江差看護学院教員らの不正受給、道議会で明るみに|副学院長「ばれたらおまえのせい」

北海道立江差高等看護学院で起きたパワハラ問題を巡り2日、ハンターの報道で浮上した教員らの不正受給疑惑(⇒「江差高等看護学院・パワハラ教員が不正受給」)について、学院を所管する道庁が不適切事務処理の事実を認め、少なくとも6年間で300万円以上の出張旅費が過剰に支給されていたことを明らかにした。

不正受給に関与した教員らは紋別高等看護学院など3校で計35人に上り、うち4人が江差の現副学院長などの管理職。同件では同副学院長を含む4人が処分の対象となったが、いずれも「厳重注意」など軽い制裁に留まっていた。

■パワハラに加え不正受給も

道が看護学校教員による出張旅費不正受給を認めたのは、2日午前に招集された道議会保健福祉委員会。「ニュースサイト・ハンターによると」と切り出した真下紀子委員(共産)が不正発覚当時の調査結果を尋ねると、看護学院を所管する保健福祉部医務薬務課は次のような事実をあきらかにした(いずれも2013年から18年までの6年間)。

・公共交通を使ったことにして自家用車で移動:旭川、江差、及び紋別で1871件・290万1,963円

・同じく学生に手配されたバスに同乗:紋別で24件・28万2,880円

・自家用車の移動距離の誤算出など:紋別で4件・3,014円

以上を合計すると1,899件・318万7,857円となり、不正に関与した教職員は旭川20人、紋別14人、及び江差1人の計35人に上る。6年間にわたって不適切な処理が続いた理由は「長年の慣行」で「制度を正しく理解していなかったため」という。

これに真下委員が「ならば、なぜ(不正をせず)公共交通を使っていた職員もいたのか」と疑問を呈したが、担当課の答弁は「すべての教員に共通する事由ではない」との説明に留まった。

道の言う「制度を正しく理解していなかった」なる釈明が虚偽であることは、担当職員自身がよく知っているはずだ。2019年5月23日付で当時の保健福祉部長が作成した『事故発生報告書』には、はっきりと次のように記されている。
《副学院長は、所属職員の旅行実態が命令とは異なることを認識していながら、自家用車の公用使用等、必要な是正措置を取らず、また、自らも自家用車を使用していた》
(*下が報告書の該当部分。以下、画像の赤いアンダーラインはハンター編集部) 故意による旅費の不正受給は、詐欺を疑われてもやむを得ない行為。しかし関係者の処分は4人に留まり、いずれも懲戒に到らない「注意」で済まされた。同時期に発覚した北海道警察・興部警察署の署長(当時)による約4万円の旅費不正受給では、当該署長が「戒告」の懲戒処分を受け、辞職するに到っている。のちに道医務薬務課が紋別看護学院の教員から匿名告発を受けた際に作成した『電話受理票』には、副学院長がこの署長のケースを引き合いに出して告発者を脅した事実が記録されることになった。その脅し文句は、次のように記されている。
《ばれたらおまえのせいだからな》
(*下が電話受理票の該当部分)

こうした事実に基づいて質問を重ねる真下委員に、担当課は単純な「イエス・ノー」を尋ねる問いへの答弁も覚束なくなっていく。「当時、処分を議会報告したか」の質問に答えるまでに約1分間を要した際は、真下委員の両隣りに掛ける別会派の委員らが「したかしてないか、だよ」と不規則発言を漏らしたほどだ。問題を初めて追及することになった真下委員は、パワハラのみならず不正受給についても「第三者の眼を入れた調査が必要」と指摘することになった。

同日の委員会では平出陽子委員(民主)も質問に臨み、昨年9月に江差の副学院長らのパワハラで匿名告発を受けた医務薬務課の職員が「その先生はそんな人ではない」と相談に取り合わなかった事実を指摘、まさにその職員が今春から江差の教員に異動した人事を厳しく追及した。

また今回のパワハラ発覚後、地元保健所長を兼ねる学院長が問題を報じた新聞記事などを教員らに配布した際、一部の教員が「腹が立つね」と破り捨てた逸話を報告、反省のみられない当事者らへの厳しい処分を迫った。対応を明言しない担当課の答弁に、平出委員は「納得できない」などと述べ、「次回の委員会でも質問させていただく」と、その場で“通告”するに到っている。

医務薬務課によると、5月に発足した第三者調査委員会は6月末までに学生らへの聴き取り調査を終えており、7月中にも教員への聴き取りを始める見込み。学生らへの救済策を講じる時期については、今なお「できるだけ速やかに」との説明に留まっている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

*「江差高等看護学院の正常化を求める父母の会」公式サイト⇒https://esashi-seijo.main.jp/

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1. 北海道警察の方面本部で監察官室長を務める警察官が泥酔して110番通報される騒ぎがあった。監察官室は職…
  2. 裏金事件で責任を問われて派閥を解散し、3月に政界引退を発表した二階俊博元幹事長の後継問題に大きな動き…
  3.  三つの衆議院補欠選挙がはじまった。最も注目されるのは東京15区。柿沢未途氏の公職選挙法違反事件を受…
  4. 二階俊博元自民党幹事長の「政界引退」記者会見から約1か月。同氏の地元である和歌山県にさらなる激震だ。…
  5. 在学生の自殺事案で賠償交渉の「決裂」が伝わった北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で(既…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る