令和のフィクサーが率いる「大樹総研」と権力者たちの蜜月

東京地検特捜部を担当する報道関係者の間で、民間のコンサル会社「大樹総研」が注目を集めている。

政財界のフィクサーとして知られる矢島義也(本名:義成)会長が率いる同社には、今年5月に東京地検特捜部が詐欺の疑いで逮捕した太陽光発電関連会社「テクノシステム」の代表・生田尚之容疑者が頻繁に出入りしていたとされる。

また、先月初めにインターネットを介して融資を仲介するmaneoマーケットの創業者・瀧本憲治氏が日比谷公園内のトイレで自殺した際には、背景に薬品関連会社「テラ」の株価操作問題と大樹総研の関与があるという情報が確信を持って語られる状況となっていた。

与野党に拡げた政界ネットワークを利用して大樹総研を急成長させた矢島氏が、特に近いと言われているのが菅義偉首相と二階俊博自民党幹事長。ハンターが、永田町関係者からその親密さを物語る証拠を入手した。

■「大樹通信」に登場する政治家たち

前述したテクノシステムの事件はメガソーラー発電、テラの新薬開発に絡む株価操作疑惑は新型コロナ関連と、大樹総研はある意味“時代の波”に乗った案件で暗躍してきた。力の源泉は矢島氏の築いてきた人脈だ。

グループ内には、東大をはじめとする有名大学卒のスタッフやキャリア官僚出身者を多く抱え、その人脈を利用して仕事を進める。

一方で、旧民主党関係者から拡げた政界ネットワークをフル活用して、政財界に影響力を行使するまでになった。特に親密だとされるのが菅首相と二階幹事長という、まさに政権の中枢である。

記者の手元に、大樹総研が毎月永田町界隈に配布している「大樹通信」なるマンスリーレポートがある。注目すべきものを紹介しよう。

まず2016年9月号。二階幹事長から贈られた大賀ハス(古代ハス)の開花式典の模様が掲載されている。

式典の舞台となったのは、大樹総研が数億円をかけて千葉県山武郡に整備した和風迎賓館「大樹庵」。記事中の記念写真の中央には青い半袖シャツ姿の二階幹事長が写っている。その2人隣が矢島氏である。

次は2017年2月号。前年末に行われた大樹総研の忘年会のシーンが、自慢気に掲載されている。この時は当時官房長官だった菅氏が講演し、柿沢未途、長島昭久、細野豪志、野間健など旧民主党系を中心に、多くの政界関係者が参加していたことが分かる。

乾杯の音頭は北尾吉孝SBIホールディングスCEO。菅政権誕生とともに地銀再編を仕掛けてきた北尾氏を、菅氏と引き合わせたのは他ならぬ矢島氏だという話がある。

今年3月の千葉県知事選挙で初当選した熊谷俊人氏(当時千葉市長)も、矢島人脈の一人としてマイクの前に立っていた。

最後は2017年8月号。「世界津波の日」記念碑除幕式式典レポートと銘打ち、大樹庵での式典で二階幹事長と側近の林幹雄代議士が除幕を行っていた。一民間企業(政策シンクタンクを自称してはいるが)の忘年会や私的な式典に、政権幹部や政治家がここまで馳せ参じる話は聞いたことがない。

「大樹通信」に掲載された一連の写真は、菅首相や二階幹事長といった政治家の影響力をバックに官僚接待を繰り返し、うまく“時代の波”を捉えてきた令和のフィクサー・矢島氏の原点。東京地検特捜部が狙っているのは、永田町や霞が関がらみの贈収賄ではないかと言われている。

 

 

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