福岡県大任町・独裁町政の闇|隠蔽される公共工事の実態

人口5,000人ほどの町が次々に発注した巨額な公共工事の実態を、役場ぐるみで隠蔽するという異常な事態が続いている。

福岡県田川郡大任町(永原譲二町長)が、それぞれ約90億円、約220億円の契約額で発注した事業の「積算書」を「不存在」と回答。事業を予算化するにあたって必要になるはずの基礎資料を作成せぬまま、業者側の言い値で契約を結んでいたことが分かった。

業者選定プロポーザルの評価点や下請け施工業者を明示するため法で公表が義務付けられた施工体系図なども非開示。ハンターの報道で事情を知った町の関係者からは「住民監査請求が必要」「町長独裁の弊害」「最終的には住民訴訟を視野に入れるべきだ」といった批判の声が上がり始めている。

■巨額公共事業「積算書」が不存在

ハンターは今年7月、大任町に対し「大任町ごみ処理施設整備工事」(契約金額220億円)と「汚泥再生処理センター整備工事」(契約金額89億8,560万円)の関連文書を開示請求した。

これに対し、町はまず施工体系図を「体系図を受け取っていない」などと無責任な理由で非開示とし、下請け業者名を隠す姿勢を露わにしていた。

事業の正当性が疑われたため、別の町発注工事関連文書に加え「大任町ごみ処理施設整備工事」と「汚泥再生処理センター整備工事」の積算書及び参考見積りの情報公開を請求したところ、返ってきたのは下の回答だった。両事業を予算化するためには必須の積算書は、存在していないという。

町側に確認したところ、「国の助成金を活用したプロポーザルなので必要なかった」という信じられない理由で不存在を決めていた。

「積算書」は、役所が予算を協議のための基礎資料であり、これがなければ事業の予算化はできない。積算書がなければ、予定価格を決めることもできないということだ。行政機関が積算書なしで、公共工事を発注したという事例は聞いたことがない。もちろん、随意契約であっても予定価格は必要で、当然「積算書」が不可欠となる。

九州地方のある自治体の市長経験者は、こう話している。
「積算書なしでは事業の予算化はできませんよ。国の補助事業であろうとなかろうと、予定価格は必要になるんですから。予算の大枠が決まっていたとしても、適正な入札を担保するためには予定価格の設定が絶対条件。そのために積算書を作成するんです」

別の自治体の副市長経験者も、同様の解説だ。
「積算書のない公共事業なんて考えれれませんね。あり得ない。業者選定が総合評価であろうがプロポーザルであろうが、予定価格がなければ業者提案の比較ができない。予定価格は積算書に基づき決めるものですから、その積算書が“ない”わけがないでしょう」

■隠蔽の背景

精算書がないということは、入札予定価格が算出できないことを意味している。では、プロポーザル方式が採用された「大任町ごみ処理施設整備工事」と「汚泥再生処理センター整備工事」の業者選定では、どうやって応札額を比較しようとしていたのだろう。

驚いたことに、両事業のプロポーザルにおいて「応札額」は評価の対象になっていなかった。下は、両事業の業者選定の評価項目と評価点を示す集計表だが、業者の応札額については評価されていない。両事業では、最初から応札金額の提示を求めておらず、技術提案の内容だけを審査していた。

「大任町ごみ処理施設整備工事」は契約金額220億円、「汚泥再生処理センター整備工事」は契約金額89億8,560万円という大事業だ。にも関わらず、積算書なしで予定価格も決めずに入札を実施した上、応札額について妥当かどうかも検討しなかったというのだから呆れるしかない。通常の競争ならあり得ないことが可能となったのは、いずれの入札も「一者応札」だったからに他ならない。

これだけの大型公共事業なら複数の企業が手を挙げそうなものだが、なぜかごみ処理施設整備工事も汚泥再生処理センター整備工事も、プロポーザルに応募したのは1社だけ。技術提案が落第点でなければ、請負金額がいくらになろうが自動的に受注が決まる仕組みになっていた。不正が疑われて当然の、不透明な業者選定だろう。

不透明さに拍車をかけているのが、度々報じてきた大任町の隠蔽姿勢。上掲の集計表は、本来隠す必要のない評価項目ごとの得点を黒塗りにし、評価委員が手書きした下の評価調書(いわゆる「個票」)も、点数が黒塗り非開示になっている。

業者選定の正当性を担保する証拠書類の重要部分を黒塗りにして隠し、公表が義務付けられた下請け体制も非開示にする大任町。非常識な隠蔽は、汚れた公共事業の象徴だ。ある大任町の関係者は、町発注工事の裏について、次のように話している。

「積算書はあっても出さんよ。計画段階で、一定の割合を乗っけとるからね。積算書も設計図書も絶対に公表せん。乗っけた分は、権力者にバックされるけん、隠蔽にも力が入る。キックバックのやり方はケースバイケースやけど、事実上のペーパーカンパニーを使ったり、直接持ってこさせたり、ね。だから、下請け業者の名前も公表せん。できんよね。取材されてしゃべられたら、やばかもん。

暴力支配やけん、誰も止められん。そこにいきなりハンターの情報公開請求で、町長にとっては青天の霹靂やった。なんとか引っ込めさせようと裏で手を回したが、ことごとく失敗した。あんた(記者)のところにも、誰かがなんか言うてきたでしょ。永原(町長)は、コロナ感染ば暴かれて困っとろうが、新聞やらテレビのバカチンどもは、怖いのか能力がないのか、知っとってもなんも書かん(笑)。どこでどうやって感染したか、私も知りたか。人数が記事の通りなら、何をやりよったか大体わかるけどね(笑)」

確かに、大任町が発注した事業は不透明であり、開示請求に対する極端な隠蔽姿勢は異常というしかない。町の関係者を取材すると、誰もが「公共工事における権力者へのキックバック」に言及する。税金を食って肥え太った悪者がいるということだ。役場が法令を無視してまで工事の関連文書を非開示にするのは、そうした汚れた公共事業の実態を隠蔽したいからだろう。独裁町政の闇は、深い。

 

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