新型コロナウイルスの感染拡大を受け、独自の施策を次々に打ち出した福岡市。高島宗一郎市長の見事な手腕には脱帽するしかない状況なのだが、残念なことに足下の市役所では市民への背信行為が後を絶たない。
老朽化した市民会館の立て替えに合わせ計画された、総事業費200億円超の「福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業」では、原案の「地下駐車場」にこだわって、多くの業者が要望した「地上駐車場」を強く否定。応札希望者が撤退せざるを得ない状況を作り出した上で、入札直前に特定業者の「地上駐車場案」をのみ、巨大プロジェクトではあり得ない「一者応札」へと誘導していた。
明らかな「官業癒着」の一形態だが、福岡市には、役所と特定企業の不適切な関係を示す、もう一つの事例が存在している。
■膨大な作業量の道路清掃業務
夜間の9時過ぎ、あるいは早朝に、市内を走る下のような車両を見かけることがあるはずだ。車体は黄色で、低速走行になると「作業中」の電光掲示が点灯する。ロードスイーパー(道路清掃車)と呼ばれる特殊車両である。
福岡市は昭和47年から、市内の幹線道路の美観を保つ目的で、複数のルートを設定して、民間業者に清掃業務を委託。ロードスイーパー・散水車・ダンプの3台を1セットとし、路線延長370.42キロの道路清掃を実施している。計2件の業務委託契約にかかる予算は約6億円超。ダンプ車の作業員は、ほうきやかごにより人力でごみを収集し、荷台に積み込んで可燃物工場や資源化センターに運ぶことになっている。
昨年まで使用されていた「仕様書」の記述によれば、こうなる。
(定期清掃)
・指定された路線の歩道(街路樹帯を含む)及び車道両脇又は中央分離帯(グリーンベルト)両脇を清掃する。収集したごみは、原則として当日中に清掃工場、資源化センター又は埋立場に搬入する。また、搬入についてはそれぞれの受入区分に応じたものとする。なお、清掃に使用する車両は、各コースにつき、清掃車・散水車・ダンプの3台1セットとするとともに、各車両の運転手以外の歩道の掃き出し人員として、各コースにつき3名以上を充てること。
つまり、車両の運転手3人を含む6人の作業チームで、道路清掃を行うということ。3人は、車を降りてゴミを掃き出す作業員だ。作業時間も決められており、コースに応じて『午前5時から午後1時までの8時間』と『午後9時から午前5時までの8時間』に区分されている(いずれも休憩は1時間)。
各コースとも1日に20キロから30キロを清掃することになるため、作業員にとっては大変な仕事。膨大な作業量である。当然、会社の車庫を出てから帰社するまで、定められた時間をフルに使わなければならないはずだ。特にダンプ車の作業員は、ほうきやかごにより人力でごみを収集するのだから、わずかな時間で仕事が終わるわけがない。ところが……。
■読者の疑問、取材で疑惑へ
昨年夏、ハンターの読者から1通のメールが送られてきた。業者が行っている夜間の道路清掃についての内容で、“「散水車」と明記された車両が11時台にフルスピードで走っていたが、一体どんな仕事ぶりなのか”――というものだった。
興味を抱いたハンターの記者が、調査を開始。福岡市への情報公開請求で入手した資料や現場取材から見えてきたのは、市の業務委託を請負っているのが2社で、会社によって作業時間に大きな違いがあるという事実だった。
不適切な作業実態があれば、税金の無駄遣いにつながりかねない。市側に疑問点を指摘した上で、3月に予定されていた道路清掃業務の業者選定までに、担当部局がどのような対応をするのか黙って見守る方針をとった。
そして4月、改めて関連文書の情報公開請求を行ったところ、市と業者の癒着を疑わせる、とんでもない内容が記された文書が開示される。次週、市民の税金を食い物にしたも同然の、道路清掃業務の実態を詳報する。