し尿処理施設「田川地区クリーンセンター」の管理・運営を行うため田川市・郡の1市7町村で構成されている一部事務組合「田川地区広域環境衛生施設組合」の組合長を務める永原譲二大任町長の「暴走」が、地域社会に大きな混乱をもたらした。
クリーンセンターの管理・運営だけに専念すればいいものを、「平準化」と称して勝手にし尿処理業者の受け持ち区域を変更したのだ。当然ながら。何十年もの付き合いがある業者と突然縁を切られた住民からは、「誰がこんな勝手なことをやっているのか!」、「永原に契約を縛る権利はないはず」、「住民に不安が広がっているのに、関係市町村は、なぜ指をくわえて見ているのか」、「永原という組合長を辞めさせるべきだ」などといった厳しい意見が噴き出している。
泣かされているのは住民だけではない。理不尽な「平準化」によって、し尿処理に携わってきた従業員らが職を奪われるケースが続出。永原氏がその過程で、本来なら提出義務のない従業員の個人情報まで取り上げていたことが分かった。
■「個人情報」次々要求
田川地区クリーンセンターの管理・運営を行うため、同施設の稼動に合わせて設立されたのが田川地区広域環境衛生施設組合だ。設立は2021年。組合設立に伴い、「田川地区広域環境衛生施設組合廃棄物の処理及び清掃に関する条例」(以下、「条例」)「田川地区広域環境衛生施設組合規約」(以下、「規約」)、「田川地区広域環境衛生施設組合廃棄物の処理及び清掃に関する条例施行規則」(以下、「規則」)が、参加自治体の同意を得る形で制定されている。
一方、し尿処理行政の根拠となる法律は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)と「浄化槽法」。一部事務組合を設立した場合の参加自治体の首長権限などについて規定しているのが「地方自治法」である。
暴走する永原氏側は「これらの法令に則っている」と強弁するだろうだが、規則の中にある条文を悪用し、到底必要とは思えない個人情報まで集めていた。このことについて、あるし尿処理業者の元従業員が次のように憤る。
「永原組合長から会社に対し、給与台帳、売上台帳、顧客台帳、さらには従業員個々の源泉徴収票まで提出するよう求められました。私たちの個人情報が、し尿処理の許可業務に必要とは思えません。別の会社に私らの個人情報が流出した可能性さえあります。改めて条例や規約、規則について勉強させてもらいましたが、給与台帳や顧客台帳はもちろん、源泉徴収票などの提出を求めることを定めた条文などないんです。永原に人様の個人情報を取り上げる権限があるとは思えません。許可権を盾にやりたい放題。市長村長や議員たちは、なんで黙っているのでしょう」
これまで報じてきた通り、条例、規約、規則のどれを読み込んでも、業者の「区割り」に関する組合長の権限を定めた条文はみつからない。条例や規約にないことをやっているのだ。同じように給与台帳、売上台帳、顧客台帳、さらには従業員個々の源泉徴収票といった書類の提出義務を定めた条文もない。では、どうのようにして業者らの個人情報を集めたのか?そもそも、本当にそうした非常識な指示を出したのか?取材する過程で入手したのが、下3件のFAXである。
確かに永原氏側は、昨年11月29日に決算書(直近2か年分)、住所記載の従業員名簿、常行院の健康保険証(カード)の写しを、12月7日には従業員全員の賃金台帳(直近2年分)の写しを、そして同月11日には社員の源泉徴収票の写し(直近2年分)を、業者の集まりである田川地区環境整備事業協同組合を通じて、提出するよう命じていた。
いずれも許可申請にあたって「規則」が定めている提出文書ではない。しかも、11月29日、12月7日、12月11日と五月雨式に提出文書を求めており、計画性がなかったことも分かる。裏を返せば、永原氏周辺の“思い付き”で、し尿処理業者を丸裸にしていった過程ともとれる。では、この異常な許可行政を可能にしたのは、条例なのか、規約なのか、規則なのか?
永原氏の巧妙なところは、田川地区クリーンセンターの稼動に合わせて田川地区広域環境衛生施設組合が設立された際、将来の“私物化”を狙って、「規則」の中にある条文を潜り込ませていたことだ。下は、規則に盛り込まれた一般廃棄物収集運搬業許可申請と浄化槽清掃業の許可申請に必要な書類について規定した条文だが、それぞれの最後に「その他組合長が必要と認める書類」とある。実は、これが個人情報収集の根拠となっている。
つまり、永原氏が求めれば、業者側は何でもかんでも提出しなければならないということ。拒めば許可取り消し、あるいは許可の更新を認めないというわけだ。恫喝行政もここまで来れば犯罪に近い。永原氏は田川地区広域環境衛生施設組合を構成する自治体の首長らになんの相談もなく独裁的な行政運営を行っているため、各自治体は住民に詳しい説明ができない状況だという。住民の知る権利に応えることのできない行政が、まともであるはずがない。
永原氏は、し尿処理業者を丸裸にするため、その会社で働く従業員の個人情報まで調べ、気に入らない業者に少しでも問題が見つかれば容赦なく取り潰し、あるいは仕事を減らして体力を奪うということを実行してきた。ハンターには、永原氏によって反社との付き合いをでっち上げられ、理不尽な形で会社を追われた人のケースや、「いうこと聞かな、許可出さんぞ」と脅され、渋々インチキ「平準化」に従った事例など、様々な情報が寄せられている。誰かがこの暴走を止めなければ、田川市・郡の広域行政は、永原氏による私物化が進む一方だ。
時代が求めているのは「ガラス張りの行政」。そのためには徹底した情報公開が必要となる。田川地域において、ごみ処理施設の建設やし尿処理行政の進め方を巡って混乱が続いているのは、地方公共団体である「田川郡東部環境衛生施設組合」「田川地区広域環境衛生施設組合」の両一部事務組合に情報公開制度が整備されていないせい。そこで田川市、川崎町、糸田町、大任町、福智町、添田町の議員有志21名が5月23日、二つの組合の組合長を務める永原譲二大任町長に対して、両組合に情報公開条例を制定するよう申し入れたが、同町長はこれを黙殺。情報公開制度の導入に応じない構えだ。行政機関のトップが情報を隠蔽する場合の理由は一つしかない。知られたくない不都合な真実があるということだ。
指定暴力団「太州会」の企業舎弟から町長になった永原氏による強権政治によって、田川地域の政治や行政は大きくねじ曲げられてきた。し尿処理やごみ収集は、言うまでもなく住民の暮らしに直結した問題だが、永原氏は、建設関係だけでなくそうした分野まで私物化する姿勢を露わにしている。問われているのは住民の意識。“これでいいのか?”から“変えなければならない”に移行する時期に来ているのではないだろうか。
ところで、永原氏が「平準化」のたくらみを練ったのが、し尿処理施設「田川地区クリーンセンター」の事務室。同センターの見学コース以外の施設内容を知る住民は、ほとんどいないという。そこで何が起きていた「不都合な真実」の実態を知れば、おそらく田川市・郡の住民は黙っていられなくなるはずだ。詳細は次稿で。