総裁選に向けて動き出した自民党

小池百合子氏が3選を決めた東京都知事選が終わり、次の政治課題に注目が集まり出した永田町。「ポスト岸田」に向け、9月に行われる自民党総裁選への動きがあわただしくなってきた。

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参議院のドンと呼ばれた故・青木幹雄元官房長官が唱えた「青木の法則」は、内閣支持率と与党・自民党の政党支持率を足した数字が50%を下回ると、政権運営が厳しくなるというもの。直近の世論調査によれば、毎日新聞は岸田内閣を「支持する」が17%、自民党「支持」が18%で合計が35%にしかならない。

共同通信の調査では、岸田内閣「支持」が22.2%、自民党「支持」が26.5%で合計が48.7%となる。いずれの調査でも50%を割る状況が数か月間続いており、岸田首相は相当追い込まれていると見るべきだろう。

岸田首相はこの状況を打開すべく、世論調査で人気が高い石破茂元幹事長に「幹事長を打診」という裏情報を報じたが(既報)、石破氏は《自民党の石破茂元幹事長(67)が、9月に想定される党総裁選に立候補する意向であることが分かった》(6月28日時事通信)という報道でも明らかなとおり、総裁選出馬を決断した模様だ。

「岸田首相は、こっそりと石破氏に幹事長を打診したがすぐに外に漏れてしまった。主流派の麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長は激怒。岸田首相も動きがとれなくなった。とりわけ麻生氏は石破氏が大嫌いだ。石破氏もそれを見て、なかったことにと総裁選に打って出る決断をしたようだ」――かつて石破派に所属していた国会議員はそう話す。

総裁選は2カ月も先。なぜ、石破氏はこれほど早く出馬の意欲を見せるのか。裏には連携しているのは菅義偉元首相の動きがある。

菅氏は、6月23日に文藝春秋のネット番組で「総裁選には新たなリーダーが必要」と発言。石破氏の意思表示は、菅氏の「岸田おろし」発言を受けたものとみられる。

総裁選に出るには20人という推薦人の数が大きなハードルになるが、「石破氏のバックには、非主流派に追いやられている菅さんや二階俊博元幹事長らがついている。石破派はとっくに解散しているが、それでも数人は今も石破さんを慕っている。推薦人はクリアできるでしょう」(前出・旧石破派の国会議員)

石破氏の動きに黙ってられないのが茂木幹事長だ。6月30日、フジテレビの番組に出演し「首相になってなってやりたい仕事があるのは間違いありません」とポスト岸田に名乗りを上げる発言。即座にネットニュースが反応した。ある旧茂木派の国会議員が次のように解説する。

「茂木さんも、石破さんが総裁選出馬と報じられ我慢ならなかったのでしょう。飲んで『次は俺だから』とご機嫌の時は、嬉しそうな茂木さんだが、岸田総理が続投を目指す意向なので、最近はご機嫌斜めでした」

茂木氏は6月22日、東国幹衆院議員の会合に出席した。そこで東氏は「岸田総理・総裁はゆめゆめ再選などと軽々しく口にするべきではない。思いとどまって自民党の新しい扉を開くべきだ。国民の信頼回復には新しい門出が必要だ」とこちらも「岸田おろし」に言及した。ただ、茂木派でもある東氏の発言に、党内からは「茂木幹事長が出席したのは東の北海道第6支部の集まり。あまりにやることがみえみえ。やらせのようなものです」と突き放す声も聞こえてくる。

茂木幹事長は岸田首相より2歳年長の68歳だ。今回の総裁選を逃せば3年後は70歳を超えるため、“焦り”もあるようだ。

そして、もう一人、総裁選で有力視されるのが加藤勝信元官房長官。菅政権の際は官房長官にも起用された人物である。これまで黒子的な存在だった加藤氏だが、6月初めに菅義偉前首相が呼びかけ、萩生田光一元政調会長、武田良太元総務相、小泉進次郎元環境相と会食している。

「武田さんの周辺から、会食の情報が出てマスコミが殺到。当初、メンバーにはなかった進次郎氏が入っていたのでより騒ぎが大きくなった。裏金事件の萩生田さんと武田さんはまったく総裁選とは無縁。謹慎中の身でしょう。進次郎氏はまだ早いとなれば、地味な加藤氏しかないということで、一躍、総裁選候補に躍り出た」と二階派の国会議員。影が薄い加藤氏が総裁選出馬となれば、茂木幹事長や同じ派閥の小渕優子選対委員長を一歩リードすることになる。

「派閥内の競争で優位に立てる。出馬できなくとも、名前が売れるので損はない」(前出・茂木派の国会議員)

肝心の岸田首相は、次期総裁選について何も語っていない。旧岸田派の国会議員はこう話す。
「内閣改造、党役員人事を早めにやって支持率を戻し、総裁選出馬表明の日程を計算しているのは間違いない。岸田派を解散したことで基盤が弱まったから、支えてくれている麻生副総裁や茂木幹事長のご機嫌を損ねることはできません。内閣改造、党役員人事での起用を狙っていた石破さんが総裁選に意欲を示し、進次郎も菅さん(元総理)の非主流派につくとなれば、手駒は少なくなる。支持率が低迷する中、距離を置く人が少なくないので『政権末期というのはこういうことか』と漏らす側近もいます。ただ、総裁選前にどうしても内閣改造と党役員人事に着手したい。お盆までに電撃的にやるのでは」

茂木幹事長、石破氏、加藤氏の総裁選をうかがう面々だが、加藤氏は元茂木派。石破氏も茂木派の前身である経世会の出身だ。旧経世会系のOB3人が、「ポスト岸田」でしのぎを削るという現状を前出の旧岸田派議員は次のように解説する、

「裏金事件で旧安倍派から総裁選候補者となり得た全員が消えてしまった。麻生副総裁も自派の河野太郎デジタル相にはストップをかけて、キングメーカーの存在感をいかんなく発揮している。石破さんの他には岸田首相を脅かしそうな候補がいない。まさに裏金事件のおかげで助けられている」

岸田首相が自ら決めた派閥解散、解消。だが、唯一残っている派閥、麻生派が岸田首相の命運を握るという、実に皮肉な実情だ。岸田首相の自民党に未来がないことは明白である。

 

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