令和の米騒動と石破・小泉コンビの目論見

「コメ買ったことがない。売るほどある」という国民を逆なでする発言で、農水大臣辞任に追い込まれた江藤拓氏。石破茂首相は、その後任に小泉進次郎氏を起用した。5月18日、江藤氏が佐賀県で行われた政治資金パーティーで“失言”したときは「コメの高騰にきちんと答えを出すように」と続投を決めたが、世論の強い反発を受け一転して更迭となった。さっそく備蓄米の入札契約を見直し、随意契約によって5キロ2,000円を実現させるとした小泉新大臣だが……。

◆   ◆   ◆

ある自民党幹部が内幕を語る。

「石破総理は当初、周囲の心配をよそに江藤氏にそのままやらせる方針で強行突破を図った。党内に人脈も人望がない総理は、江藤氏を更迭することで反発され、政権の足を引っ張られるのではないかと危惧したようだ。しかし、コメ高騰の時にあまりに非常識な発言。大炎上となり、総理も格好悪いことを承知で切り替えるしかなかった。その日に江藤氏の更迭を決断。同時に小泉氏でいくことを森山裕幹事長らに指示していた」

江藤氏の発言は実にひどいものだった。当選8回の江藤氏の父は、総務庁長官などを歴任した江藤隆美氏。つまり世襲議員だ。今回の「コメが食品庫に売るほどある」という“失言”は、もらい慣れした“上級国民”の証明でもある。

後任の小泉氏は、就任記者会見で「最も力を入れるのはコメ。コメに尽きます。コメ担当大臣だ」と威勢よく発言。5月28日に予定していた備蓄米の入札を中止し、任意の業者との「随意契約」による放出に切り替えると表明した。

最初に「随意契約」で面談した相手は、大手ネット通販・楽天グループの三木谷浩史会長。直後に小泉氏は、メディアを引き連れスーパーや米穀店を視察し「やる気」をアピールした。自ら出演したテレビ番組では「コメ5キロで2,000円」と断言して即実行。その後、契約申し込みが殺到したことで「2021年産の古古古米5キロ1,800円」という方針を打ち出した。しかし、古古古米の評判の悪さもあって消費者の反応はイマイチ。米農家や町の販売店、さらには地方のスーパーからは、大手優遇となる一連の対応に批判の声が聞こえてくる。

農水省幹部は苦笑いしながらこう明かす。

「(小泉大臣からは)就任早々、『メディアで注目されるような対策を』という指示があり、視察やテレビ出演をおぜん立てしました。就任初日からアクセル全開です。国民の共感を得られると思っているのでしょうが、一部の備蓄米で全体の価格が下がるかどうかは分かりません」

前出の自民党幹部も「農水大臣の適任者は他にもいた。わざわざ知名度が高く、コメという国民の関心事であり難題であるにも関わらず小泉氏をあてた。みんなが思い浮かべるのは、衆議院の解散総選挙だ。早ければ参議院選挙とダブル――という声も党内では聞こえる。ただ、コメの価格が下がるかどうか……」と話す。つまり、令和の米騒動から発展して、「コメ解散」の可能性があるというのだ。

参議院選挙の前哨戦となる東京都議選は、6月22日が投開票だ。前回、2021年の都議選では、自民党は33議席を獲得して第一党になった。だが、東京都の小池百合子知事率いる都民ファーストの会は31議席を獲得し、その差は2議席しかない。自民党は安倍派などの裏金事件に続き、都議会の会派「都議会自民党」でも裏金が横行していたことが発覚。裏金議員のうち、現職16人と元職1人が都議選に出馬予定だ。自民党の都議がため息をつく。

「昨年の衆議院選挙でも裏金議員には厳しい審判が下った。東京では“鉄板”と言われ、大臣経験者だった丸川珠代氏までボロ負けしている。都議選でも裏金議員には冷たい風が吹きそうだ」

昨年の東京都知事選で小池氏に次ぐ2位に食い込んだ石丸伸二氏の「再生の道」など、新しい勢力も参戦。ある自民党の現職参議院議員はこう話す。

「都議選で自民党がかなり議席を減らすのは間違いない。そんなムードの中で参議院選挙という流れになれば、負けるのは目に見えている。それなら、人気者である小泉さんをコメ担当大臣にして、高騰する値段を下げればゲームチェンジャーになりうる。自民党の支持を回復させたいというのが石破総理の思い。夏の参議院選挙では自分も改選。これまで小泉氏をさほど支持してこなかったが、コメの値段を下げてもらって、都議選と参議院選挙につなげてほしいと祈るような気持ちだ」

だが、ことはうまく運ぶだろうか。江藤氏は、農水大臣が2度目で、業界団体に近いとみられていた。JAグループ関連の政治団体からの献金を受けたにもかかわらず、記載がなく訂正を余儀なくされたことも。一方、小泉氏は党の農林部会長時代、農産品の流通過程を見直すなどの「農協改革」を打ち出し、JAなど業界団体と激しく対立した経緯がある。自民党で「農業競争力強化プログラム」が承認されたが、最後は業界団体に押されて中身が“骨抜き”に――。この時小泉氏は、「日本の農政は業界団体ばかりに気を使っている。骨抜きではなく、負けて勝つだ」と奇妙な言い訳をして、部会長を退いた。

党内基盤が弱く、首相の座もグラグラの石破氏と昨年の総裁選で「圧勝」と言われながら失速して3位に沈んだ小泉氏。二人の思惑について、前出の自民党幹部は次のように話している。

「石破総理も小泉大臣も、コメの値段が下がって参議院選挙に勝てれば、それだけでいいと考えている。総理は延命、小泉氏は復活となるからだ。お互いがウインウインになる可能性を秘めている。だが、全体的なコメの値段が下がらず、都議選にも参議院選挙にも負ければ、ともに政治生命の危機に陥る。この1カ月でコメの値段が下がるかどうかで解散総選挙になるかどうかが決まる。下手をすれば政権交代だ」

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