今月12日に行われた鹿児島県知事選挙で、2期目を目指して自民・公明両党の推薦を受けながら落選した三反園訓氏(62)が、次の総選挙で衆議院鹿児島2区から出馬するのではないかという観測が広がっている。
■政治家続行を宣言
今月中旬、周辺の関係者に身の振り方を尋ねられた三反園氏は、こう答えたという――「政治の世界で生きる」。
知事になる前の三反園氏の職業は、テレビ朝日の政治コメンテーター。関係者は「政治評論家」にでもなるつもりかと考えたが、その後の話から三反園氏が目指しているのが「国会議員」だと分かる。
落選後、三反園氏は自民党の関係者に「鹿児島2区の後援会組織だけは残すよう」指示したとされ、狙いが衆議院鹿児島2区であることも周知の事実となりつつある。
鹿児島2区は、鹿児島市の一部(谷山・喜入の各支所管内)、指宿市、枕崎市、、南さつま市、奄美市、南九州市、大島郡で構成されており、三反園氏の出身地である指宿市が含まれている。2016年の知事選も今回も、三反園氏が得票トップをとった自治体だ。
今回敗れたとはいえ、2区内の自治体のうち、2位に甘んじたのは鹿児島市と南さつま市だけで、枕崎市、奄美市、南九州市、大島郡でも一位を守っている。
鹿児島県の衆議院の選挙区は4つ。知事選では初当選した塩田康一氏(54)が1区と3区で最多得票だったが、三反園氏は2区と森山裕自民党県連会長の地元である4区で踏ん張りを見せた。ただ、4区は森山氏の牙城であり、割り込むことは困難。出身地の指宿市を含む2区に狙いを定めたということだろう。
鹿児島2区の現職は、自民党の金子万寿夫衆院議員(73)。町議、議員秘書を経て県議6期、この間県議会議長や全国都道府県議会議長会会長も務めたベテラン政治家だ。現在、衆議院議員として当選3回。出身地の奄美を中心に堅固な地盤を誇る。引退が取り沙汰される状況ではないが、三反園氏が2区からの衆院選出馬を視野に入れているという情報は、すでに知っているはずだ。
■厳しい現実
三反園氏の国政転出はあるのか――。ある自民党関係者は、次のように解説する。
「金子さんは三反園を後継に指名するつもりはない。そもそも、引退するなんて言ってないんだから。県連会長の森山さんは75歳でも、まだまだやる気。金子さんも、あと2回(の選挙)は頑張るだろう。三反園が2区で勝負したいと思うのは勝手だが、自前の後援会なんてないに等しい。今回の知事選は、すべて自民党や推薦した団体、創価学会といった組織が票を出しただけなんだから。相変わらず身勝手というか、世間知らずというか、自分の失態で選挙に負けたことを理解していないんじゃないか」
別の県連関係者も、厳しい見方を示す。
「引退が決まっている野村哲郎参議院議員の後継、という考え方もあるだろうが支持母体の農協も自民党の鹿児島県連も三反園さんを認めないだろう。知事選の敗北後、感想を聞かれた自民党の幹部は『候補者本人の問題』と切って捨てた。こんなことを言われる政治家がいるのか、という話だ。2区で選挙に出るのは勝手だが、どこの政党から出るのか?最初に裏切った野党は見向きもしないだろうし、自民党も相手にしない。二階さん(俊博・自民党幹事長)と親しいらしいが、地元の地方議員は誰もついてこないよ。無理だ、無理」
知事選で初当選した塩田氏の得票は222,676票。敗れはしたものの三反園氏は195,941票をとった。その差約27,000票。惨敗とは言えない票の出方が、三反園氏に希望を持たせているのだろう。しかし、伊藤祐一郎元知事の132,732票を塩田氏の得票に足せば、“反三反園”は355,408票となる。三反園氏と“反三反園陣営”の得票差は約16万票だ。反三反園陣営が候補者を一本化していたとすれば、ダブルスコアで勝負が決まっていた可能性が高い。三反園氏にとっては、つらい現実と言えそうだ。