日本維新の会・参院選公認予定者の経歴に疑問噴出

日本維新の会は、今年夏の参議院議員選挙東京選挙区で大阪市議の海老沢由紀氏(48)の擁立を発表した。なぜ、大阪市議から東京選挙区なのか実に不思議だ。その海老沢氏には、二つの疑問が生じている。

■「スノーボーダー日本チャンピオン」への疑問

当初、維新は政調会長の音喜多駿参院議員、総務会長の柳ヶ瀬裕文参院議員が中心になって有名人、著名人を模索してきたが頓挫。そこで、鳩山由紀夫元首相の親族が有力候補となった。「ところが」と、日本維新の会幹部は話す。
「鳩山氏の親族は学者できちんとれているので、ブランドの威光もありそれで決まりかと思っていた。すると、党本部から急に『海老沢でいく』と指令が飛んできた。馬場代表のお気に入りだからと聞かされた」

海老沢氏は大阪市の出身で、ホームページや過去の選挙公報には「元プロスノーボーダーで日本チャンピオン」「美魔女コンテストファイナリスト」などというプロフィールが並ぶ。橋下徹氏時代の「維新塾1期生」で、これまで2012年の総選挙では夫の実家がある茨城1区から、2013年の東京都議選では世田谷区から、17年の東京都議選では町田市から維新公認で出馬して、いずれも落選している。

「(維新公認で)どこからで立候補してくれる。話も出馬した選挙区に合わせてくれ、資金力もある。“プロ候補者”なんて言われていました。論功行賞なのか、2019年の大阪市議選で当選することができた」(前出・維新の幹部)

維新にとっては便利な海老沢氏だが、今回の出馬で2つの「疑惑」が浮上している。海老沢氏がプロフィールに書いている「元プロスノーボーダーで日本チャンピオン」という内容と、大阪市議選に出馬した際の居住実態だ。

この点について、記者会見で海老沢氏は「(私は)1997年か98年スノーボードクロスマスターズのグランドチャンピオン。(現在は)スノーボードクロス。名前がかわっています。当時、どういう名前か覚えていない(*当時はボーダークロス)。日本スノーボード協会発行のプロスノーボーダー名鑑でチャンピオンとある」と話したが、自分が日本チャンピオンになった種目名を忘れてしまうというのはどういうことなのか?

■「居住実態」への疑問

居住実態については「住所は大阪市の生野区です。大阪市会議員の住所に住んでいる。家族を残して住んでいる。主人、子供は東京都内に住んでいます。実家が生野区にあり、旧姓で実家で父と母で暮らしている」と説明したが、疑問は残る。

確かに、海老沢氏が住んでいるという大阪市生野区の住所は政治資金収支報告書にも自宅としての記載がある。だが、近所の人に聞くと「海老沢さんの旧姓はIさんです。ここは実家で、一度結婚して出て行った。それが離婚して、子連れで戻ってきた。その後、再婚されて出て行かれたようです。大阪の市会議員になったけど、ここで姿を見たことはない。多分、住んでいませんよ」と居住を否定する。

これまで、居住実態が問題になり当選無効となったケースはいくつもある。直近では埼玉県戸田市のスーパークレイジー君こと西本誠氏。大阪維新の会でも、2015年に大阪府寝屋川市の市議選で当選した候補が、居住実態が問題になり当選無効とされている。

ちなみに、海老沢氏が大阪市議となったのは東成区。彼女が「住んでいる」と主張しているのは、大阪市生野区の実家だ。つまり、住んでいる区は違うことになる。

また、海老沢氏の夫は東京都杉並区で歯科医院を経営。海老沢氏は、バツイチで子持ち同士の夫と結婚し4人の子供を東京で育てているとSNSなどで明かしているが、本当に大阪市に住むことができたのか?

海老沢氏は2018年12月8日、「七五三おめでとう。あなたの毎日が幸せであふれますように」とツイッターに投稿。自身の子供が七五三のお参りをしている写真も添付され、撮影地は『東京・港区から』となっている。大阪市議会議員選挙は、2019年3月29日告示だ。選挙に出馬するには「3か月要件」があり、総務省のホームページには《引き続き3カ月以上その市区町村に住所のある者》と記されている。

海老沢氏が3か月前から大阪に住んでいたのかどうか、判然としない。

■深まる疑惑

さらに疑惑を深めたのが、日本維新の会トップのコメントだ。松井一郎代表は「彼女は東京で政治活動していた。2019年、大阪市議会で過半数狙う。東成区で可能性があると覚悟ある人、全国で探す。海老沢さん本来東京でやりたい。告示1週間前。大阪で人がいなかった。当時、手を挙げてくれなかった。全国で探したのは海老沢、無理やり立候補してもらった。維新スピリッツもっているので、従来の地盤、東京でがんばれということ」と4月14日の記者会見で話した。

また、馬場伸幸共同代表は海老沢氏の記者会見時に「こういう時代なんで何とかこの大阪から選挙に市議会候補として出てほしいという話をしましたら、まあ、彼女の方もですね、それは党の指令ですか?という返答が返ってきましたんで、党の命令ですというふうに私が返しましたら、二つ返事でですね、それなら維新の会の為に私は単身で大阪へ行って選挙に挑戦します。とわずか告示の2、3日前だったというふうに思います。まあ、それだけ彼女はですね、この日本維新の会に対する思い入れ、またこの維新の会を、大きくして行きたいと、やはり党勢を拡大していかなければならないという、そういう思いがですね、誰よりも強い、人一倍強い女性でございます」――これが事実なら、3か月前に海老沢氏に居住実態があったのかますます疑問視される。

維新による候補者の「粗製乱造」については、4月18日の配信記でも指摘したところだ。新たな不祥事にならないことをお祈りする。

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