パワハラ“主犯”に反省なし|江差看護学院前副学院長、加害認定に不満

北海道立高等看護学院のパワーハラスメント問題で、一連の加害行為の中心人物とされる江差看護学院の前副学院長が自身の行為の問題点をほとんど理解していないことがわかった。4月下旬に設けられた被害者への謝罪の場で、前副学院長は「私は正しい指導だと思っていた」と主張、第三者委員会のハラスメント認定について「ショックだった」「謎だった」などと発言していた。

■謝罪の席、保護者を前に自己正当化

発言があったのは、4月26日午前。不適切な指導で留年せざるを得なくなった学生(23)=今春卒業=の保護者が、いきさつを話す。

「副学院長に謝罪を求めたら、まず手書きの謝罪文が送られてきたんです。中身はほとんど謝罪になっていなくて、不適切な指導を『私は曲がったことが嫌いなので』と正当化するような内容でした。その後、直接お会いして謝罪を受けることになったんですが…」

函館市のホテルで前副学院長と対面することになった保護者は、ここでも真っ当な陳謝の句を耳にすることができなかった。前副学院長の謝罪は、事前に送られてきた謝罪文とまったく同じ文言を読み上げるだけのパフォーマンスに終わったという。

被害学生は、1科目ぶんの単位を取得できずに留年を余儀なくされていた。原因は、看護学とは無関係の科目で不適切なレポートを提出したため。先輩学生の間に代々伝わる模範解答をレポートに引き写したことが発覚し、単位を落とす結果となった。しかし同種の行為にはほかの同級生たちや過去の在学生らも手を染めており、また先述のように科目そのものが看護職と関係のない一般教養的な教科だったため、当時の学院長と担当教員は「留年の必要はなく、レポートを再提出すればよい」との意向を示したという。ところが前副学院長は頑なにこれを拒否、当該学生に挽回の機会を与えず1年間の留年を言い渡した。卒業間近だった学生は、採用内定を得ていた医療機関への就職を諦めざるを得なくなったという。

前副学院長が留年を決める根拠としたのは、学内で参照されていた『試験の取り扱い』なる文書。ところがこれは正式な文書とは言い難く、のちに発足した道の第三者調査委員会は同文書を「制定過程の不明な文書」と認めることになる。これにより、前副学院長の対応はハラスメントと認定された。

謝罪の場が設けられたのは、以上のような事情による。前副学院長は「学院長の意見に耳を傾けるべきだった」と「反省」しつつ、一連の対応については「私は曲がったことが嫌い」「看護学生は誠実であるべき」と弁明、飽くまで当時は正しい指導と認識していたと強調した。

ハラスメントの端緒は、たしかに学生自身の不適切な行為にあったといえる。だが学生が受けたハラスメントはこの件に留まらず、逐一被害を申告していないものの「暴言」や「指導拒否」などは日常的に行なわれていたという。謝罪の場で保護者がこれを質すと、前副学院長は「暴言も指導拒否もしていない」と加害を全面的に否定し「そのように受け止められたのはショックです」と答えた。

先の第三者委は、前副学院長による数々の暴言や指導拒否を事実と認定し、「教員としての適格性を欠く」と指弾していた。3月29日付で前副学院長を懲戒処分とした北海道も、処分の理由に暴言などの加害行為を挙げている。保護者がこの事実を指摘すると、前副学院長はこう述べたという。

「正しいことをしていると思っていたので、認定されてショックでした」

第三者委はまた、前副学院長がハラスメントの中心人物だった事実も認定している。ところがこれも、本人は全否定。保護者とのやり取りでは次のように主張した。

「どうしてそのように思われたのか、そこが謎です。まったく私1人で決めたことはなく、すべて教員みんなで決めました」

ほかの教員らが前副学院長に従うことが多かった理由は――、

「私が正しかったからではないでしょうか」

文字通り、取りつく島もない。前副学院長は、第三者委の認定や道の懲戒処分を受けてなお「自分は間違っていなかった」との姿勢を貫いているわけだ。

■保護者は法的措置検討

約1時間の面談後、当該学生の保護者は疲れ切った様子で「まったく反省していないし、謝罪にもなっていない」と不快感を顕わにした。

「(報道などで)騒がれたから道庁さんが動いて、道庁が動いたから『間違ってないと思ってたけど、指摘を受けたので反省します』と。まともな謝罪もない、誠意もない。同席していた学院長に『あなただったらどうします? 納得できます?』って訊いたら、『答える立場にない』って。……逃げられた感じですよね」

謝罪パフォーマンスを終えた前副学院長は、人目を避けるように非常階段を使って会場のホテルから脱出、報道陣の呼びかけに一切答えぬまま、現学院長が運転する車でその場を立ち去った。

陳謝の言葉を事実上まったく聴くことができなかった保護者は、近く何らかの法的措置に臨むことを検討しているという。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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