「AOKI」創業者、五輪汚職で逮捕|もともとなかった規範意識

2021年(令和3年)に開かれた東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約に絡んで、東京地検特捜部は今月17日、衣料品販売大手「AOKIホールディングス」側から総額5,100万円の賄賂を受け取ったとして、大会組織委員会の元理事で広告代理店「電通」の幹部でもあった高橋治之容疑者(78)を受託収賄の疑いで逮捕した。

贈賄側で逮捕されたのは、AOKIホールディングス前会長の青木拡憲容疑者(83)とその弟で副会長だった青木寶久容疑者(76)、子会社のAOKIの前社長上田雄久容疑者(40)の3人。人気タレントを使ったCMで知られる同社の“闇落ち”に驚いた人は少なくあるまいが、スポーツの祭典を金儲けの道具にしたとすれば最低の行為。そもそもAOKIは、規範意識が欠如が強く疑われる企業なのである。

■常態化していた詐欺的商法

ハンターがAOKIの詐欺的商法を取り上げたのは2014年4月。「AOKI 福岡清水店」(福岡市南区)を訪れた女子学生に対応した店員が、宣伝されていた「スーツも込みで19,000円」というセット価格での購入を希望した女子学生に、各日5セットの分は「もう出ました」と明言。通常の割引価格による販売を行い、「43,640円」を請求したことが発端だった。女子学生の父がハンターの記者だったことで、“事件”に火が付く。

「19,000円」で購入が可能だと考えていた女子学生は手持ち金が不足していたため、店側の勧めで20,000円の内金を入れて商品を持ち帰ったが、不審に思った記者が、送られてきた印刷物を確認した上で、セット販売数について店側を厳しく追及。追い詰められた売り場責任者が、虚偽に基づく販売手法だったことを認めた。

この日のセット販売は2件しかなく、売り場の店員や責任者が、この事実を知りながら、女子学生を騙していた。その後の調べで、多くの店舗で同様の手口が常態化していたことが分かっている。

【参照記事】
・「
紳士服「AOKI」の詐欺商法発覚
・「AOKI 詐欺行為発覚の顛末

この時の記事がきっかけとなって、AOKIの元幹部や現役の社員から、数えきれないほどの告発メールが届くようになる。

連絡がとれた関係者に会って話を聞いて分かったのは、より利益を上げるため、AOKI本社が決めた「上代価格」を店舗ごとの判断で高い価格に変えたり、値引き額が過大に見えるように偽装するなどといった消費者を食い物にする商売の手口だった。

上代価格とは、商品の小売価格として設定されたもので、いわゆる「定価」。いまは是正されていると信じたいが、当時のAOKI各店では、定価を上回る価格設定での販売が常態化していた。

【参照記事】
・「消費者裏切るAOKIの商法(1)― 現役従業員の証言 ―
・「消費者裏切るAOKIの商法(2)― 元幹部社員の証言 ―
・「AOKI各店で消費者欺く上代価格操作― 消費者裏切るAOKIの商法(3) ―

AOKIの関係者によれば、当時、一連の報道の発端となった「AOKI 福岡清水店」を訪れた青木会長が、同店の店長に「有名になって良かったじゃないか」と話していたという。詐欺的商法を反省する気持などなかったということ。規範意識が欠如したAOKIの企業体質は、創業者自身が醸成したものだった可能性がある。

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