「脅迫追認」の西日本新聞筑豊版に関係者から批判の声

今月7日の西日本新聞朝刊(筑豊版)が、田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長。田川市、大任町、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町で構成)の市町村長らが発出した「脅迫文書」を巡る問題を取り上げた。(*下が西日本新聞8月7日朝刊・筑豊版の紙面)

脅迫文は、田川市の議員などが企画した「情報公開」に関する勉強会の内容に言いがかりをつけ、主催者側に謝罪を要求するという非常識な内容。しかし、吉川文敬という西日本新聞の記者が書いた記事は、脅した側と被害者側を同列に扱うことで脅迫行為を追認するという、悪徳政治家の意に沿ったとしか思えないものだった。

脅迫文書に署名した首長らや新聞記者による権力者=永原大任町長への忖度が波紋を広げる中、関係者から問題の新聞記事に対する厳しい批判の声が上がる事態となっている。
【参照記事】⇒「報道失格|西日本新聞が大任町長らの脅迫行為を追認

■市民オンブズマン福岡が怒りの公開質問

今年4月に開かれた地方自治に関する勉強会の講師を務めたのは、市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事。約90人の参加者を前に児嶋代表幹事が話したのは、地方自治の中で重要性が増す「情報公開」の在り方についてだった。その中で、児嶋氏が一つの事例として挙げたのは、福岡都市圏の水道企業団に関する問題で、田川郡東部環境衛生施設組合が整備するゴミ処理施設についての具体的な言及など一切なかった。

児嶋氏がわずかに触れたのは、町が発注した公共工事の入札結果や施工体系図など、法律で公表が義務付けられている建設関係文書を非開示にしている大任町の姿勢について。ところが、組合側が発出した脅迫文書には「市民オンブズマン福岡代表幹事の児嶋研二氏との一般的な勉強会ではなく、広域行政勉強会とは名ばかりで、実際は田川郡東部環境衛生施設組合が大任町で建設している当該事業の情報公開や事業費用を批判するものに外なりません」、「福岡在住の児嶋代表が大任町に建設中の当該施設について、知る由もなくこの勉強会に先立って、誤った内容が、事前に説明したのではないかと想定されます」などと、児嶋代表幹事の講演内容を捻じ曲げて脅迫の道具にし、さらには同氏の名誉まで棄損する内容の記述があった。

勉強会の様子や、この脅迫行為を受けて主催者と児嶋氏が開いた記者会見を取材した記者なら誰でもが分かる「言いがかり」を、無批判に記事にし、加害者側に加担した格好となった西日本新聞の記者――。彼と彼の記事に、関係者から厳しい批判の声が上がったのは言うまでもない。

温厚な人柄で知られる市民オンブズマン福岡の児嶋代表幹事が、怒りを露わにこう話す。

――8月7日付西日本新聞朝刊に掲載された「不当圧力か誹謗中傷か」という見出しの記事は、私が、4月26日に田川市で行った「議会と情報公開」という勉強会の内容をねじ曲げて、「ごみ処理施設建設」をめぐる対立に話をすり替えたとんでもない記事だ。

私の講演は、情報公開の歴史と議会の役割、特に市民オンブズマン福岡が取り組んできた一部事務組合の春日那珂川水道企業団違法取水事件を報告して議会や市民の役割を強調したものだった。市民オンブズマン福岡は、「ごみ処理施設建設については賛成でも反対でもない。情報公開を徹底したうえで住民が判断すべきもの」という立場である。

問題の本質は「情報公開をなぜしないのか」ということである。勉強会を「政争の具」に利用して「印象操作」をしたのがこの西日本新聞の記事だ。

 市民オンブズマン福岡は県庁記者クラブで会見を開き、問題の脅迫文書については「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長)に、また勉強会の件で町の総務課長を使って「直接話したい」と脅迫めいたクレームをつけてきた永原大任町長に対しては、25日付で下の公開質問状(*画像クリックで拡大)を発送したと発表している。

■報道関係者からも厳しい批判

筑豊地域の住民に間違った報道をたれ流し、混乱に拍車をかけた西日本新聞筑豊版の記事について、ある民放局の記者は次のように批判する。

――『不当圧力か誹謗中傷か』との見出しに大変驚かされました。勉強会が“誹謗中傷”ではなかったということは、取材した記者が一番分かっているのではないでしょうか。両論併記の形を装っていますが、背景に何があるのか想像せずにはいられません。

戦争報道への反省からに西日本新聞の編集局長の席の後ろには「編集綱領」が掲げられていると聞きます。
【参考】⇒https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/124374?page=2

「地域とともに歩み、その自立と発展に尽くす」とされていますが、今回の記事はその編集綱領に則った内容なのでしょうか?

戦時中の報道の反省として「問題を見て見ぬふりしていないか、権力者にとって都合のいい報道になっていないか」――常に自省しながら報じることが基本とされているはずですが……。

別の報道機関の関係者も、問題の記事を厳しく糾弾する。

――酷すぎる記事。勉強会の中身や田川郡東部環境衛生施設組合の謝罪要求を受けて勉強会の主催者が開いた会見の内容を知っていれば、絶対に書けない原稿だ。それをあえて記事にして紙面に載せたということは、新聞社としてこの記事を認めたということになる。チェック体制が甘いのか、あるいは大任町長に忖度したのか……。

西日(西日本新聞)も含めて、田川市あたりの支局にいる大手新聞社の記者たちは、問題の多い大任町の実態について何も報じてこなかった。まず、その理由から検証しなければならない時期に来ているということだろう。それにしても、ちょっと考えられないクズ記事だ。

確かに、田川市あたりの支局にいる新聞記者たちが、永原譲二氏が町長を務める大任町の法律や条例を無視した行政運営や、暴力を背景にした支配の実態について報じたことはほとんどなかった。大手メディアが動き出したのは、昨年ハンターが、同町や永原氏の義理の弟が市長の座にある田川市の「闇」を追及し始めてからだ。

例えば、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入札適正化法)が公表を義務付けている「入札結果」の一覧については、担当課の窓口に常備するのが最低の努めで、ホームページ上で公開する自治体が増えているのが現状だ。ところが大任町では入札結果を隠蔽するため、すべての情報を非開示にしており、町会議員が請求しても実態がつかめない状態が続いてきた。田川郡内を取材範囲にする記者なら当然気付いていたはずだが、これまで記事にしたという話は聞いたことがない。

自治体や首長から理不尽な仕打ちを受けている住民や企業に、「私はあなたたちの味方です」「不正について記事にしたい」などと、おためごかしを連発した挙句、記事を書くどころか権力側に情報を渡す記者さえいるというのだから呆れるしかない。田川郡内で『活躍』されている記者たちの動きは、腐った大手メディアの象徴といえるだろう。

もともと問題意識も能力もない間抜けが記者面しているだけなのか、あるいは地域の権力者に媚びているのかのどちらかだろうが、報道の「不作為」によって大任町や田川市における権力の不正が見逃されてきたのは事実だ。関係者の怒りは、西日本新聞にだけ向けられているのではない。“報道とは?”――その問いに記事で答えを出せない人間は、新聞社に籍を置くべきではない。

(中願寺純則)

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