消費者裏切るAOKIの商法(2)― 元幹部社員の証言 ―

紳士服販売大手「AOKI」の複数の現役従業員から、セール企画商品(以下、『セール品』)を早い時間に撤去して、「売れた」と偽り、他の高額商品を販売してきたという証言が飛び出した。事実だとすれば、消費者を裏切る詐欺的行為が多くの店舗で常態化している可能性が高い。

問題は、証言した従業員が九州から首都圏までの広範囲に散らばっていること。AOKIでは、組織的に詐欺的商法を奨励しているのではないか――?疑いを強めたHUNTER取材陣は、従業員に指示する立場にいた元AOKI店長や幹部社員に接触。長年にわたって彼らが知り得たAOKIの販売手法について詳しい話を聞いた。驚きの実態とは……。

元幹部社員が語るAOKIの体質

HUNTERの直接取材に応じてくれたのはAOKIの元幹部社員。本稿ではD氏としておく。メールのやりとりから始まり、電話連絡を取り合った後、約1時間にわたってAOKIの商法について話を聞いた。

記者:AOKIには何年くらい勤務されていましたか?
 D氏:10年以上です。

記者:現役の従業員から、セール品が売れていないのに「売れた」と偽って、別の商品を販売してきたという証言を得ました。本当でしょうか?
 D氏:本当です。私もそうした指示を行っていました。エリアのミーティングで、セール品を引き上げる時期について話をすることもありましたから。多くの店舗で、同じようなことが行われています。4月に福岡清水店で起きた詐欺的行為についての報道があった時、『ああ、やっぱり表面化したのか』と思って見ていました。

記者:告発メールを送って下さった時のお気持ちは?
 D氏:AOKIでは、お話のような販売方法が常態化していました。世の中ではあまり問題視されることではないのかと思っておりましたが、悪いものは悪いとすることが必要だと思います。この問題に真摯に向き合ってくださったことで、お店で頑張っている方々も報われると思いました。

記者:ところで、エリアのミーティングとは?
 D氏:AOKIの組織については、もうご存知ですよね。まず、それぞれの店舗があって、その上にエリア、次がゾーンと呼ばれます。エリアは数店舗ごと。ゾーンは、例えば「九州」とか「四国」といった範囲の括りです。それぞれに責任者がいます。店長会議もあれば、エリアマネージャーだけの会議もありました。

記者:AOKIで行うセールの流れから教えて下さい。
 D氏:例えば、新店を出すとします。チラシを打ちます。そこで「限定5着」とか「限定10着」とか、目玉になるものを入れます。大体3週間で一つのセール。最初は来店が多いのですが、2~3週間目には反応がなくなってきます。そのあたりから、いろいろやり始める。限定5着と書いても、10着出すこともあるのです。問題は、セール品があるのに、引っ込める行為でしょう。ほかの閉店セールとか改装セールも同様ですね。

記者:それでは、具体的にセール品撤去の実情を話してもらえませんか?
 D氏:10時に開店します。セール品があるのは、長くてせいぜい2時間。昼ごろにはセール品を引っ込めるのです。客数が多いときは、11時に引っ込める時もありました。私の知る範囲の店舗では、どこも同じようにやっていました。

記者:なぜ客を騙すような商売がまかり通ってきたのでしょうか?
 D氏:セール品は客を呼ぶため。あとはどうやって売り上げを伸ばすかですから。より高い商品を売るのは当然ということになります。AOKIという会社の体質なんです。これはAOKIだけではなく、他の紳士服メーカーも同じだと思います。ただ、AOKIの場合は度を越えている。

記者:誰の指示でこうした詐欺的行為が行われているのですか?
 D氏:繰り返しになりますが、企業の体質というしかないですね。染みついているんです。誰が指示を出すというのではなく、AOKIにいれば、自然と覚え込まされることなのです。少なくとも、私がいた10数年間は、知る限りの店舗ではセール品の引き上げをやっていましたから。従業員さんたちの話は嘘ではないのです。当たり前だと思っている。麻痺してるんですよ。

記者:AOKIに望むことは?
 D氏:商品自体はいいものなんですから、これを機に顧客第一の会社になってほしい。それだけです。まじめに働いている人間ばかりであることも、私は知っているつもりです。AOKIは変わるべきだと思います。

元店長―詐欺的商法は「企業風土」と指摘

HUNTERの直接取材に応じたのは、複数の店長やエリアマネージャー経験者、さらにはその上の役職に就いていた人物。いずれも、AOKI勤務時代の名刺や、当時のメモなどを残しており、取材の際は、そうした証拠を示してもらっている。次に紹介するのは、最近まで店長だったというE氏との1問1答である。

記者:AOKIではどのような役職でしたか?
 E氏:店長です。何店舗かで。辞めて1年も経っていません。

記者:ズバリ聞きますが、セール品を引き上げるよう、従業員に指示を出されていましたか?
 E氏:はい。やってました。大体昼過ぎにはセール品を引っ込めてました。私がやることもあれば、従業員に指示することもありました。私は店長も、副店長も経験しましたが、受け持ったどの店でも当たり前のようにやっていましたね。

記者:どこからの指示ですか?
 E氏:どこからの指示、ということではない。伝統なんですよ。私は中途入社なんですが、AOKIに入ってまず驚いたのが、セール品を売り場から引き上げるという行為でした。その時の店長とか、上の人間から教えられるんです。逆らって辞めるわけにもいきませんから。私にそうした仕事の段取りを教えた人たちが、エリアマネージャーになり、役員になっている人もいます。だから、本社が知らないはずがないが、何十年もそうした商売の仕方で大きくなってきたということなんですよ。いまさら、どうしろこうしろと指示を出す必要などないんです。ただ、エリアマネージャーから、(セール品撤去について)指示を受けたことはあった。

記者:すべての店舗で詐欺的行為が行われていると見ていいのですか?
 E氏:いい加減なことは言えませんから、正確を期すなら、『私が勤務した店舗では』と言うべきでしょうね。でも、店長会議でセール品引き上げが話題になることがあったのも事実です。どこもやっていた、ということになりますね。少なくとも、そうしたことが不自然とは思われない企業風土があるのは間違いありません。

記者:詐欺的な商売を、止めようとは思わなかったのですか?
 E氏:売り上げ至上主義ですから。利益を上げないと店長は生き残れない。AOKIの中では、ちよっとでも会長らの意に沿わぬことをやれば、すぐに飛ばされるんです。AOKIから系列のカラオケ店に飛ばされた人間もいます。少しでも利益を上げようと思えば、より高い商品を数多く売るしかなくなるでしょう。セール品だけしか売れないというのでは、利益は出ない。セール品はあくまでも客寄せの道具なんです。早く(売り場から)なくなるに越したことはない。

記者:いま、AOKIに言いたいことは?
 E氏:AOKIだけの問題ではありませんよ。紳士服業界は、どこも似たり寄ったりのことをやっています。いい機会ですから、徹底的に膿を出してしまった方がいいと思っています。

今回紹介したのは、取材できたAOKI関係者の中の、二人の元幹部社員だけの話。他にも同様の証言があることを付け加えておきたい。いずれも、セール品を早い時間に引き上げ、「売れた」と偽って顧客に高い商品を買わせる手口について詳しく証言しており、詐欺的販売手法がAOKIの各店舗で常態化していたことを証明している。AOKI本社は、改めて社内調査を行い、真相を公表すべきだろう。

別の詐欺的販売手法が浮上

ところで、AOKIの店舗で行われている詐欺的行為は、「セール品撤去」だけではなかった。ある意味、よりたちの悪い販売手法が存在していることを、元幹部社員や従業員たちが証言しているのである。詳しくは次の配信記事で明らかにする。

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