鹿児島市教育委員会が、ハンターに開示した「いじめの実態報告」に記された“重大事態”の証拠を不正に黒塗りし、真相が露見しないよう工作していたことが分かった。
小学校でいじめにあった被害者の保護者が、当時の関連文書を個人情報開示請求で入手し、ハンターが先行して得た同じ文書と照らし合わせて明らかになったもの。露骨すぎる隠蔽の手法に、いじめを受けた被害者の両親から、怒りの声が上がっている。
■消された「重大事態」の記述
下は、平成30年に市内谷山にある小学校の6年生のクラスでいじめを受け、学校と市教委が解決に動かなかったことから、やむなく学区変更を願い出た児童の事案に関する報告内容の一部。市立伊敷中で令和元年に起きたいじめが、学校と市教委によって隠蔽されていたとするハンターの記事を読んだ保護者が、自身の子供のケースを確認するため市教委に個人情報開示請求を行っていた。今月2日までに開示された報告書の中の、『学校の対応』の欄である。「本児童保護者から重大事態の申し立てがあり」とある。
一方、ハンターが市教委への開示請求で入手した平成30年度から令和2年度までの「いじめの実態報告」の中にあった、当該事案が起きた小学校の報告書が下。さらにここから、『学校の対応』の欄を抜粋した。
ハンターに開示された報告書の記述から、「重大事態の申し立てがあり」の部分だけが黒塗りにされていることが分かる。
なぜ市教委は、この部分だけを黒塗り非開示にしたのか――。表面上の非開示理由は、市教委が発出した「公文書一部開示決定通知書」に記されてはいる。
非開示理由は一つしかなく「当該公文書には、特定の後塵を識別する情報が記載されているため」だ。しかし、「重大事態の申し立てがあり」という記述から、ハンターの記者が特定の個人を識別することは100%不可能。開示したからといって、被害児童の身元が分かるはずがない。
つまりこの黒塗りは、市教委が「重大事態」という文言を隠すためのもので、それ以外の理由はない。保護者からいじめの重大事態を申し立てられていたにもかかわらず、「重大事態」となることを避けるため十分な調査も行わず、いじめも解消しなかったというのが真相だろう。
被害児童は、集団での無視や、「きもい」「おえっ」などの暴言、さらには腕を引っ張るなどの直接的な暴行を受けて体調を崩し、長期にわたって医療機関で治療とカウンセリングを受けていた。いじめを行っていた児童たちは教師の聞き取りにも口裏を合わせて対抗するなどしたため、被害児童はやむなく卒業まで欠席を続け、中学進学時に学区変更を申し出て友人たちとは別の学校に通わざるを得なくなっていた。欠席日数は40日超。いじめ防止対策推進法が定める「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」(相当期間とはおおむね30日)に該当するケースだった。
■憤る被害者とその家族
市教委が「重大事態」の4文字を黒塗りにしていたことを知った被害者本人は、「隠蔽していることは事実なので、ちゃんとした資料を提示して間違いをしっかり改めて欲しい」とコメント。保護者も、憤りを隠そうともせず、次のように話している。
「被害児童とその家族は市教委にとっては無かった事にしたい存在なのか?個人情報開示により一連の流れが大体分かったので、残念な思いもあるが合点がいく面もあった。教育を行うことが目的の学校で働く大人の存在を守ることが、本来守り育くむべき児童一人ひとりの人生より大事にされている。市教委においても、ハンターの情報公開請求に対し、学校からあげられた重大事態という文言を消して事の矮小化を図っている。説明責任も果たさず、謝罪も反省も後悔もなく過ごしているのなら、鹿児島の未来の子ども達のために、関係者は、せめてその職を去るべきだと思う」
■いじめを助長する教育界のクズたち
鹿児島市立伊敷中のいじめや、市内谷山の小学校で起きたいじめに関する記事を通じて、いじめ防止対策推進法が定めた「いじめの重大事態」を、事案の矮小化で“なかったこと”にしてきた鹿児島市教育委員会の隠蔽体質を追及してきた。いずれのケースも、学校や市教委の不作為で被害者が転校や学区変更を余儀なくされたにもかかわらず、ろくな調査もせず、法が規定する首長への報告も行われていなかった。
背景にあるのは、教員免許を持った学校の先生や教育委員会職員の“庇い合い”と保身だ。「いじめの重大事態」は、担任や学校長が指導力のなさを露呈させた結果であり、そうならないように、寄ってたかっていじめを「なかったこと」にし、被害を受けた子供を黙殺している。教員、市教委職員の資格を云々するまえに、いじめの隠蔽に走った関係者は人間のクズだと指摘しておきたい。極めて残念なことに、鹿児島の教育界にはクズが多すぎる。実は、隠蔽の実例がまだまだある。