日本維新の会から出馬予定の河村建一氏に金銭スキャンダル 

林芳正外相の参議院から衆議院への転出に伴い、河村建夫元官房長官の長男で秘書を務めていた河村建一氏は、山口3区の選挙区を追われた。建一氏は2021年に行われた衆院選の比例代表北関東ブロック、22年参院選の比例代表でいずれも自民党公認としてチャレンジしたが落選。その後自民党を離党し、次の解散総選挙に日本維新の会の公認候補として出馬することが明らかとなった。

建一氏の選挙区は東京6区。地元の山口県から遠く離れることになる。日本維新の会の藤田文武幹事長は「官房長官の息子さんであり、秘書官も務められた。政治経験も豊富で非常にいい人材」と期待する。しかし、ここに来て建夫氏と建一氏の両人にまつまわるスキャンダルが浮上。先行きへの懸念を示す声が上がっている。

◇   ◇   ◇

建夫氏が官房長官や文科相、自民党選対委員長として要職を歴任できた背景には中内セツ子さんという秘書の存在があったことが知られている。中内さんは、建夫氏に地盤を譲った田中龍夫元文部大臣時代から永田町で知られた名物秘書だ。「80歳を超えても議員会館の事務所に陣取り、安倍晋三元首相や小泉純一郎元首相らがわざわざ中内さんに挨拶に来るほどだった。まさに昭和の時代を体現していた名物秘書でした」と自民党のベテラン秘書が振り返る。

2021年8月、その中内さんが89歳でこの世を去る。問題が勃発したのは遺産相続を巡ってだった。

中内さんは、建夫氏の事務所を一手に取り仕切っていた。とりわけ政治資金に関しては、「建夫先生はカネに関しての才覚がなく、中内さん頼りでした」(前出・ベテラン秘書)というほど頼られていたという。生涯独身。神奈川県大磯町に100坪を超すエレベーター付きの豪邸を所有していたことも知られている。

中内さんの遺族は亡くなる直前、「銀行口座があるということや、暗証番号もセツ子さんから聞いていました。亡くなれば遺産相続をしなければならないので、すぐに通帳や印鑑を探したのですがなかなか見つからない。すると、建一さんからいきなりやってきて、1枚の紙を差し出したのです」と中内さんの親族、Xさんは話す。

2021年11月に建一氏が持参した紙には、『種類別相続財産明細書』なるもの。建夫氏と親しい税理士が作成したものだそうで、中内さんの資産は大磯町の豪邸や預金などで約3,320万円。一方で、大磯町への税金に加えて借金が2,500万円以上もあり、それを差し引くとトータルが466万円という金額になっている。

借入先は、中内さんが社長で自宅が会社所在地になっているR社。もう一つが、田中元文相の親族宅が本社になっている会社だった。その後、中内さんの親族は何度も銀行の通帳やキャッシュカードを返すよう建一氏に求めたが、なかなか実行されなかった。

実は中内さんは、大磯町の自宅に帰宅できない時は田中元文相の親族が所有するマンションに泊まっていた。そこに置かれていた遺品も返却の対象だったが、実際に戻ってきたのは銀行の通帳などごくわずか。Xさんは、こう憤慨する。
「ブランド品もたくさん持っていたのに、聞けば『遺品としてあちこちにあげた』と建一さんはいう。親族の誰一人として同意していませんよ。びっくりしたのは通帳でした。セツ子さんが亡くなってから47万円あまりが引き出されていたのです」

さらに中内さんの遺族を激怒させたのがR社の銀行口座だった。こちらも中内さんの死後に310万円が無断で引き出されていたというのだ。そこで今年3月、遺族は神奈川県大磯警察署に刑事告発したという。
「私は何度も警察に行って事情を説明した。そして供述調書も作ってもらった。セツ子さんが長くお世話になったのは事実ですが、亡くなったら手のひらを返すかのように連絡さえない、個人口座や会社口座からカネを勝手に引き出す――。借用書もない借金をでっち上げる。遺品は勝手に処分する。こんなひどいことではセツ子さんも浮かばれないと思ったのです」(Xさん)

告発状には「有印私文書偽造・同行使・詐欺」と書かれている。さらに、Xさんの手元にあったR社の通帳を詳細にチェックしてみたところ、営業実態がないにもかかわらず毎月のように、少ない月で数十万円、多い月には500万円ものカネが振り込まれていた。

R社は、前述した中内さんの大磯町の豪邸が登記された住所で、2014年3月の設立。教育事業、土木建築工事、経営に関するコンサルティングなどが法人登記の目的欄に記されている。だが、会社の代表電話すらないのが実態のペーパーカンパニーだった。

通帳で確認できるだけでも2021年10月までに6,000万円を超す入金がある一方、河村元官房長官の政治資金管理団体などには、R社から毎年数百万円が寄付されていた。

R社に6,000万円以上も入金していたのは、福岡県に本部があるT学園という学校法人。なぜか中内さんが亡くなって3か月ほどした2021年11月5日付で、T学園から『解約通知・顧問契約を契約の実行者の喪失により解除』という書面が発出されていた。R社というペーパーカンパニーに対して、税制上の優遇措置が受けられる学校法人が6,000万円以上も振り込んでいたという事実。おまけにR社に振込があったある一定の期間、建夫氏はT学園の評議委員にも名を連ねていた。評議委員就任の2か月前にはT学園からR社に200万円が入金されていたことも分かっている。

Xさんは言う。
「実はセツ子さんの香典も河村事務所が持って帰ったきりで、説明もないし受け取ってもいません。R社もよくわからない会社で、もし政治的に変なことに関係していれば大きな問題です。しかし、私たちのような高齢者では、とても手に負えない複雑なものですから、告発状という形で警察にお願いしたのです。建一さんがきちんと誠実に対応してくれれば、何もしなかったと思います」

名物秘書の遺族を泣かせたまま、建一氏は出馬するのだろうか。

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