「自殺を考えた」卒業生ら次々証言|犯行は10年以上前から【江差看護学院パワハラ事件】

北海道立江差高等看護学院で明らかになった教員らの集団パワハラが、10年以上前に始まっていたことが、複数の卒業生らの証言で明らかとなった。道庁は長期間、犯罪行為を見逃してきた疑いがある。

当時も現在も、関係者からまっ先にパワハラを指摘されているのは品川由美子副学院長。他の教員が替わっても同じような手口の犯罪行為が続いており、同校教員の生徒との向き合い方が、明らかに歪んだものだったことがうかがえる。

ハンターには、パワハラを苦に自殺を考えたという元生徒の証言が次々に寄せられており、事件は拡大する一方。しかし道庁は、こうした状況をあざ笑うように、事件を矮小化して幕引きを図る構えだ。

■「自殺」を考えた卒業生たち

ハンターの取材に応えたのは、ここ数年の間に江差高等看護学院を卒業または退学した元生徒や10年~12年前に巣立った6人の人たち。すべての元生徒が、これまで報じてきた教員によるパワハラ行為を認めており、中には「自殺を考えた」という人が3人もいた。

パワハラの手口は、昔も今も同じようなものだったらしく、10年以上前に学院を卒業したある女性はこう話す。
――ハンターの記事を読んで驚きました。私が在学してたのは10年以上前ですが、当時と同じようなこと――例えば課題を持っていってもなんだかんだ言って受け取らず、進級させないと脅される――といったことです。私が何か過ちを犯したというわけではなかったはずなんですが、いきなり指導放棄されることもしばしばでした。そして、「私が間違っていました」と言うまで罵倒され、いじめ抜かれるんです。私、冤罪被害者の方々の気持ちが、だから、よく分かるんです。まだ続いていたんですね……。

(記者から現在までに加害者として名前が挙がっている教員の名前を聞いて)ああ、私たちの年代で分かるのは、品川さん(副学院長)だけですね。他の教員は替わっているんじゃないでしょうか。品川さんに感化されているのか、それともパワハラが江差(看護学院)の指導方針なんですかね。とにかく、思い出すと今でも涙が出てきます。自殺を考えたこともあったほどですから。北海道庁は、当時から見て見ぬふり。被害が出てることを知ってたはずですが、何も変わりませんでした。今度こそ、パワハラ教員を一掃してもらいたいですね

悪質なパワハラが10年以上前から続いていることは、別の卒業生の証言からも明らかだ。
――私が卒業して10年は経ちます。卒業はしましたが、3年でストレートというわけではありませんでした。理不尽な、本当に理不尽な理由で、単位をとらせてもらえず留年しましたから。あ、もちろん点数が足りないというんじゃなくて、課題が提出されていないなどという理由で、ですが。課題は持って行ったけど、受け取ってもらえなかったんですよ。期限内に行ったんですよ、課題持って。でも受けとらない。パワハラというより、子供じみたいじめですよね。どうにもなりませんでした。

誰かに相談しようにも、仕返しが怖くてそれもできない。思い出したくもない毎日でした。訴えられるものなら、いまでも訴えたいですね

直近に寄せられた告発メールも、同様の被害を訴えるものだった。ご本人の了解を得て、本文を掲載する。

江差高等看護学院の卒業生です。私が在学していたのはもう10年以上前になりますが、その頃から既にパワハラは実際にありました。

単位は全て取れていたのに、教員から執拗にレポートの訂正を求められたあげく、「卒業はさせない」と言われた生徒がいました。「看護師国家試験に合格したら、辞退届を提出しなさい」と言われた人もいました。私自身、教員から言葉に表せないひどい仕打ちにあい、精神的に追い込まれ、自殺を考えたこともあります。

特定の生徒のことを「生理的に受け付けない」と発言する教員もいましたから、何のための看護学校かわかりませんでした。
看護師になれた事は感謝しておりますが、未だに当時の教員から叱責されている夢を見て夜間に飛び起きることもあり、トラウマとなっています。

私の在学中に教員が生徒に危害を加えたという話は聞きませんでしたが、あとは記事の内容通り、提出物を受け取ってもらえなかったりは、しょっちゅうでした。退学や留年したクラスメイトについても、本当に単位取れなかっただけなの?と疑問に思うこともありました。

教員たちのあまりの恐ろしさに、理不尽に退学や留年させられた人は泣き寝入りするしかなかったので、今回この件について記事に取り上げ、公にしてくださりどうもありがとうございました。

■生徒を利用し事件を矮小化する道庁の汚さ

7日夕に開かれた保護者向け説明会では、卒業する3年生の中から「こうした騒ぎは就職に影響する」「パワハラはなかった」「厳しい指導を受ける生徒の方にも問題がある」などといった意見があがったと道の担当者が強調したという。幕引きを狙った、とんだ茶番である。

実際にそうした声があったとすれば、いじめやセクハラがあっても見て見ぬふりの、ある意味での“共犯”になっているも同然だろう。本気で卒業生や在校生たちの苦しみを否定する生徒がいるというのなら、看護師になる資格などあるまい。もちろん、一番汚いのはパワハラ否定を演出した道庁で、事件を糊塗するために、生徒の間に溝を作るような話を持ち出したことは絶対に許されない。

前出の卒業生たちが証言するように、パワハラは10年以上続いて行われてきたことが明らかで、道庁が知らなかったはずはない。数年前には道の担当課に実情を記した告発の手紙を送った関係者もいたが、黙殺された末に、教員から告発のことを咎められるという出来事もあった。道庁は、“パワハラを放置した”というのではなく、事実上の“共犯”だったとみるべきだろう。だからこそ、幕引きを急ぐ必要がある。

■問われる「被害者」との向き合い方

卒業生の中には、かつての体験を語りながら号泣するケースが少なくない。記者は、「トラウマ」という言葉を、ここ数日の間に何度も聞いた。前述したように、「自殺」を考えたと振り返る人は、一人ふたりではない。メールに、こう綴ってきたお母さんがいる。

娘は、先生のパワハラにあって休学し、心の整理がつかず退学という苦渋の決断をしました。親として、娘の数年間の努力、そして看護師としての未来が先生によって奪われたことが本当に悔しかったです。看護師はこれからもなくてはならない大切な職業です。報道により、江差高等看護学院の体制が変わり、いい看護師さんをたくさん輩出してくれる学校になっていただきたいと思います。

このお母さんと娘さんの心情は、察するに余り有る。鈴木直道北海道知事はもちろん、道庁の役人、教員、在校生、保護者、卒業生――すべての関係者が、過去と現在の「被害者」の声と真剣に向き合うべきだろう。

ちなみに、鈴木北海道知事は、初当選した2019年(平成31年)の知事選の際に公表した公約集「あらゆるピンチをチャンスに!」の中で、次のような約束をしている。

『 いじめや体罰など、学校や地域で生じる問題で悩み苦しむ子どもや保護者への相談や助言などに積極的に取り組み、いじめの根絶を図ります』

『道内各地で安心して医療を受けるために、医師をはじめ、看護師、薬剤師など、医療に関わる人材の確保に取り組みます』

 

 

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