東京地検特捜部、現金買収のターゲットは柿沢未途衆院議員

「区長の選挙に国会議員が口出しして、疑惑が浮上するなんて聞いたことがない。なんてバカなことをしてくれたんだ。それでなくとも岸田政権の支持率が凋落している時期。これで、もっと下がってしまう」――そうぶちまけるのは、自民党の大臣経験者だ。

東京地検特捜部は10月24日、今年春の江東区長選で複数の動画サイトに有料広告を掲載したとして、公職選挙法違反で告発されていた木村弥生区長への強制捜査に着手。26日、木村氏は辞意を表明した。そこに浮上したのが、江東区が含まれる東京15区選出の柿沢未途衆議院議員を巡る買収疑惑である。

◇   ◇   ◇

柿沢氏は、木村氏の「選挙参謀」として動画サイトへの有料広告を指導。動画の撮影場所として衆議院議員会館の部屋まで提供していた。有料広告事件を主導したのが、柿沢氏だったということだ。

江東区長選が行われたのは今年4月。統一地方選の際に、江東区議選と同日に投開票された。区長選には、自民党で衆議院議員を2期経験した木村が無所属で出馬。対抗馬は、自民党が推薦した元都議の山崎一輝氏だった。

山崎氏の父である孝明氏は、区長4期を務めた地元の「顔役」として知られる。自民党は、選挙戦初日から茂木敏充幹事長をはじめとする「大物」を投入し必勝を期した。地元の都議が次のように打ち明ける。
「自民党の東京都連は萩生田光一政調会長がやっています。萩生田氏さんと山崎親子は非常に緊密な仲で知られています。自民党が一致結束して山崎氏を支援する中でおかしな行動をとっていたのが柿沢氏でした」

柿沢氏は2001年、父親である故・柿沢弘治元外相の秘書から都議会議員に。2009年の衆議院選挙では東京15区からみんなの党公認で出馬し敗れるも、比例復活当選。以来、維新、民進党、希望の党とめまぐるしく党をかえながら5回当選を果たしてきた。

自民党入りしたのは2021年の衆議院選挙で当選した後だ。当初は東京都連入りが認められないなど、ごたごたが続いた。背景に、山崎親子との「確執」があったという。

柿沢氏は自民党所属。しかも法務副大臣というポストまでもらっている。当然、江東区長選では党が正式に推薦した山崎氏を支援すべき立場だったが、裏で木村支援に回っていた。

柿沢氏は、有料広告を木村氏に紹介したことや自らが仕切って議員会館で動画撮影をさせたことなどが発覚したとたん、9月に就任したばかりの法務副大臣を辞任。「法務副大臣を辞任いたしました。本当に申し訳ありません。ご支援・ご指導くださっている皆さまにお詫びの申し上げようもありません」――SNS上で発信はしているが、国会を欠席するなど説明責任は果たしていない。

「もう柿沢氏が公の場で説明することは無理じゃないか。特捜部が狙いにきている」と話すのは安倍派の国会議員。木村氏と柿沢氏が、“区長選のため金を配った”という話が広がっているという。地元の関係者が声を潜める。
「区長選が4月なので1月末から2月にかけてかな。柿沢やその秘書が『挨拶にいきたい』とあちこちに電話して、金をバラまいているという話を何度も聞いた。こんなご時世なので『柿沢は何を考えているのか』と怒っている議員もいた。噂が広がるというのは、かなり広範囲にやっていたということ」

有料広告を掲載した木村区長は、公職選挙法違反に問われる可能性が高い。しかし、取り調べで罪を認めれば、罰金刑と公民権停止で収まるとみるのが普通で、これは特捜部が捜査に乗り出すような話ではない。特捜部の狙いは、柿沢氏が絡んだ「現金買収」だ。すでに永田町では、臨時国会開催中にもかかわらず、柿沢氏の「Xデー」まで囁かれる状況だという。

「すでに江東区の区議、都議、さらに柿沢や木村さんとこの後援会幹部らが特捜部から事情を聞かれています。11月3日から3連休ですが、区議や都議、普段仕事がある人などが特捜部から取り調べに呼ばれています。休みなので断ることもできず、困っている人もいる。すでに聞かれた人は有料広告の話などではなく『区長選で金をもらったか』という点を集中して聞かれているようです。かなりあちこちに配っているような感じですね」」(柿沢氏の後援会関係者)

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またしても発覚した自民党の「政治とカネ」。本サイトで何度も報じてきたのが、2018年の参議院広島選挙区で2,900万円もの現金をばらまいた河井克行元法相と妻の案里氏の公職選挙法違反事件だ。すでに2人とも有罪判決が確定しており、克行氏は目下服役中である。

東京では、菅原一秀元経産相が2021年に公職選挙法違反(買収)で有罪となり議員辞職に追い込まれている。前出の安倍派国会議員が厳しい見方を示す。
「総選挙で自民党候補と戦って勝った柿沢は、ようやく自民党に入党できたばかり。それが、こんな事件を起こした。区長選で、自民党の推薦候補を無視して対抗馬を応援していたなんて、あり得ないことだ。離党でことを済ませるという意見もあるが、それは甘すぎる。特捜部は柿沢が金を配ったことはわかっていて、その趣旨、意味が区長選のための買収か、党勢拡大の意味なのか、その判断のための事情聴取をはじめているからだ。配った範囲が広ければ、もちろん区長選の買収と特捜部の調べに口を割る人もいるはず。柿沢は、岸田政権の支持率が落ちる前に議員辞職すべきだ」

関係者に対する事情聴取の後は、本丸とみられる柿沢氏への家宅捜索まで噂になっている。「世襲議員」の柿沢氏、近づく「Xデー」に後がなさそうだ。

 

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