地方紙・北海道新聞が本年5月から6月までの1カ月間で購読部数を2万部以上失っていたことがわかった。部数減そのものは従前から続く傾向だが、昨年7月からの11カ月間では3万部あまりの減に留まっており、この1カ月間で減少ペースが急激に加速した形。昨秋の夕刊休止(既報)と本年6月からの購読料引き上げ(既報2)が大きく影響したとみられ、現役の記者からは「そもそも値上げの説明自体が不充分だった」との声が上がっている。
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道新が直近の『社報』であきらかにした6月時点の発行部数は76万4338部。前月の78万6,497部から2万2159部のマイナスとなり、僅か1カ月で3パーセント近くの読者を失ったことになる。一方、電子版の北海道新聞デジタル(紙面コース)は21万9,165部から3,900部増やし、22万3065部となった。昨年7月は紙媒体が81万6955部(朝刊)で、1年間で5万2,617部減(▲6.4%)に、デジタルは当時の20万1269部に対して2万1,802部増(+10.8%)となった。電子版は辛うじて右肩上がりが続いているものの、その動きも紙版の減少ペースには追いついていないようだ。
若手記者の1人によれば、今回の部数減は社内でとくに大きな話題にはなっていないという。
「社長が道内各地を回って『思ったよりも減ってない』とか言ってるようですが、要は予想の範囲内だと。6月からの500円値上げで今回の部数減をカバーできている、という理屈です。社内が騒がしくなったのはむしろその前段階の、値上げ方針の社内周知不足でした。地方によってはほとんど何の説明もなかったとかで、全道会議でキレていた支局長がいたようです」
別の中堅記者は「減部は織り込み済みとは言うが、紙代の上昇幅が大き過ぎて麻痺しているところがある」と苦笑。元社員の1人は「単月2万部減は衝撃的。単純計算で年24万部減のペースだが、どうするつもりなのか…」と、危機感の不在に驚く。
6月24日には定時株主総会が招集され、宮口宏夫社長の続投などが決まったほか、2期連続の減収減益があきらかになった。社内では札幌本社の移転が4カ月後に迫り、9月の竣工式を皮切りに移転関連のイベントが続くが、現役記者らは「社内はいわゆるフリーアドレス(「自席」の廃止)になるとかで、顔を出す人は減るんじゃないか」と冷ややかだ。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |