福岡県田川市の二場公人市長の陣営が、後援会活動の実態を隠し、政治資金収支報告書に虚偽の記載を行っていた疑いがあることが分かった。
■活発だった「後援会活動」
下の画像は、平成31年(5月から令和元年)2月から3月にかけ田川市内で配布された二場陣営のリーフレットだ。同年4月に行われた田川市長選挙に向け事前活動が活発化していた時期で、赤い○印で示したように「ふたば公人後援会」、「後援会討議資料」とある。
同じ頃に作成、配布された名刺大の印刷物にも同様の記載があった(下、参照)。
この年4月に行われた田川市長選挙は、二期目を目指していた二場氏と新人の元市議が立候補。市を二分する戦いとなったため、告示前から激しい前哨戦が繰り広げられていた。投票結果は二場氏の13,770票に対し、元市議が11,902票。強いといわれる2期目の戦いであったにもかかわらず、1,860票差まで詰め寄られるという、二場氏にとっては冷や汗ものの勝利だった。
闘いに臨んだ二場陣営が“後援会の事務所開き”を行ったのは3月3日、ある福岡県議会議員のブログにもその日の記録が残っている。
後援会の印刷物や事務所開きの様子から見て、「ふたば公人後援会」が、活発な運動を展開していたのは事実。市長選告示日(4月14日)の「出陣式」の案内も、後援会から関係者に郵送されていた。
これだけの動きをすれば、後援会の支出が増えるのは当然で、それを賄うだけの収入もなければならない。では、市長の後援会は、どれほどの資金を費消したのか――。
■収入も支出も「0」―虚偽記載の可能性
市長選が行われたのは平成31年4月。つまり、同年の「ふたば公人後援会」の収入と支出は、令和元年分の政治資金収支報告書に記載がなければならない。福岡県選挙管理委員会で、提出された報告書を確認した。
驚いたことに、複数の立派な印刷物を作成し活発な政治活動を展開した二場氏の後援会の、令和元年の支出は「0」。1円も使っていないことになっている。
一方、収入の方は前年から繰越した約28,000円があるだけで、この年の分はやはり「0」。つまり、政治活動に係るその年の全ての収入・支出が「なかったこと」にされていた。
前述した一連の印刷物にかかった費用や後援会事務所の維持費などは、前年(平成30年)の政治資金収支報告書に遡っても該当する支出がなく、虚偽記載が強く疑われる状態だ。
政治資金規正法は、政治団体に対しその年におけるすべての収入と支出を記載した報告書を作成し、活動地域の都道府県選管もしくは総務省に提出するよう求めており、違反すれば5年以下の禁錮又は百万円以下の罰金。二場市長の後援会が、本来計上すべき支出や、それに見合う収入を一切記載していない現状の政治資金収支報告書を放置した場合、同法違反に問われる可能性がある。