鹿児島県警「情報漏洩」の真相(2)|ストーカー事件「巡回連絡簿悪用」も隠蔽か

前稿で報告した鹿児島県警の警察官による盗撮事案に続き、筆者とハンター編集部が把握する未発表不祥事の概要を伝えておきたい。こちらは盗撮事案と異なり未だに報道発表される兆しがなく、このまま握り潰される可能性が高い。

■「巡回連絡簿」を悪用

不祥事の舞台は、県内の警察署。同署地域課に所属し、ある駐在所に勤務していた30歳代の男性巡査長(当時)が、業務を通じて不正に取得した個人情報をもとに悪質なストーカー行為を行なっていたという。

同巡査長は一昨年4月、パトロール中に立ち寄った事業所で一般の20歳代女性と知り合う。当初は月に一回程度の巡回の際に世間話をする程度の関係だったが、およそ1年を経た昨年4月ごろから、2人は個人的にLINEのやり取りをする間柄となった。巡査長が駐在所の巡回連絡簿から女性の個人情報を不正入手し、携帯電話番号にメッセージを送信したのがきっかけだったとされる。

同女性に頻繁にLINEを送るようになった巡査長は、仕事の休みを聞き出したり「抱いていい?」などと不適切なメールを送信する言動に及び始めた。女性は努めて当たり障りのないメッセージを返していたが、その後も食事の誘いやラブホテルなどについて尋ねるメールが送られてくるようになったため、昨年暮れになって交際相手に被害を相談することにした。この「交際相手」が加害者の同業者、つまり警察官だったことで、事件は県警の知るところとなる。本部人身安全少年課の調べに対し、巡査長は「若くて好みのタイプだったので男女の関係になりたかった」などと供述、不適切な言動があったことを認めるに到った。

被害女性の自宅や勤務先が駐在所の近くにあることから、所轄署は巡査長を駐在所勤務から外し、署内で勤務させる措置をとる。事件の調べにあたった本部は、上の供述やメッセージの記録などから、巡査長の行為がストーカー規制法に抵触する可能性を確認、年が明けて本年1月に捜査員3人が被害女性宅を訪ね、女性と両親に謝罪した上で捜査状況などを説明していた。

この訪問からさほど時間を経ていない2月上旬、捜査は唐突に終了する。被害女性が事件化を望まない意向を示したためだ。女性の本意は定かでないが、県警にとっては好都合な結論だったと言ってよい。立件されない以上は報道発表の必要がなく、事実関係を隠蔽し続けることができるためだ。実際、今に到るまで一切の経緯が公表されていない。ただし、巡回連絡簿が犯罪に使われたという事実は極めて重く、県警はその点だけでも公表して謝罪するべきだろう。

巡査長の処分などは、ハンターが情報を掴んだ3月下旬の時点で不明。筆者に送られてきた告発文書には、ストーカー行為の端緒をつくった巡回連絡簿の不正利用について、県警監察課が調査に入ったとの情報も記されている。

■県警本部長のブラックジョーク

ところで、地元紙「南日本新聞」は、5月30日朝刊に野川明輝鹿児島県警本部長の定例会見での発言を掲載。記事では、県下の県警地域課長会議で野川氏が、次のように訓示したことも紹介している。(*下の画像。5月30日南日本新聞の紙面より。赤いラインはハンター編集部)

巡回連絡などの活動により、統計だけではわからない治安課題を把握することができる。その解消が安心感や体感治安向上につながる」

ここ数日の報道によれば、筆者に件の内部告発文を送ったのは県警の前生活安全部長で、一連の犯罪隠ぺいを指示したのは野川本部長だったという。述べてきた通り、現職警官のストーカー事件で利用されたのは「巡回連絡簿」。その事件を握りつぶした張本人が、巡回連絡の強化を指示していたことになる。ブラックジョークとしか言いようがないのだが、事実なら、巡回連絡に協力する県民はいなくなるだろう。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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