警察の内部文書を外部に漏えいしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで鹿児島県警の前生活安全部長が逮捕された件に絡み、同県警とみられる「捜査関係者」が、読売新聞に捜査情報を漏らしていた疑いが浮上した。情報漏洩の捜査や取材が進行している過程で新たな情報漏洩が行われるという非常識な出来事。捜査機関と大手メディアへの不信が、さらに増大しそうだ。(*下は、読売新聞6月7日朝刊の紙面。赤いラインはハンター編集部)
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同紙は7日、朝刊社会面に「前刑事部長の連絡先同封」との見出しを打って記事を掲載。記事自体が「情報漏洩」によるものであることを示す「捜査関係者への取材でわかった」という文言を記した上で、後半部分でさらに「捜査関係者などによると」と明記していた。
記事は、北海道在住のライターに郵送した文書の中に、3月に退職した前刑事部長の氏名や住所が同封されていたことが「捜査関係者への取材でわかった」と取材源を捜査関係者であると紹介。さらに、逮捕された前生活安全部長が郵送した封筒に、差出人の名前の記載がなかったということの情報源については、「捜査関係者などによると」とごまかしていた。
郵送された郵便物の内容や封筒の裏書きの有無を知っているのは、差出人と受け取った北海道のジャーナリスト、そしてジャーナリストが寄稿しているハンターだけだ。差出人は身柄拘留中で、話を聞くことは不可能。読売が正直に書いているように、情報源は「捜査関係者」、つまり警察か検察ということになる。
報道記者による「夜討ち朝駆け」は、しょせん情報漏洩のそそのかしであり、話が洩れれば守秘義務違反だ。読売の記事はその典型だが、情報漏洩の捜査や取材が進行している過程での新たな情報漏洩には、開いた口が塞がらない。
背景にあるのは、事件の構図を塗り替えようとする警察組織の思惑だろう。キャリアである県警本部長による“犯罪の隠蔽指示”という前代未聞の事件を、地元ノンキャリ幹部同士のさや当てという形に変え、真相を闇に葬るつもりなのではないか。読売は、その思惑に乗ったということだ。