鹿児島市教育委員会に公文書毀棄の疑い

いじめの隠蔽問題で揺れる鹿児島市教育委員会が、被害者家族に提出させた“いじめが継続していることを示す文書”の存否を曖昧にし、事実関係の隠蔽に走っていることが分かった。当該文書は廃棄された疑いがあり、関係職員が公文書毀棄に問われる可能性もある。

■「いじめは解消」は真っ赤な嘘

問題の文書は、令和元年(2019年)に鹿児島市立伊敷中学校の2年生クラスで“いじめ“をうけた生徒の保護者が提出したもの。いじめが収まらなかったため転校を余儀なくされた生徒の保護者が、“転校理由を示す文書が足りない。このままでは転校を許可できない”という市教委側の指示を受けて手書きした文書だ。ハンターが入手した実物には、次のように記されている。(*以下、実際の校名や氏名などは◇・○・▲・●で表記

◇◇中を希望する理由

いじめによって学校へ行けず、クラスに入れない状態が十一月十二日以降続いています。 

そのため、本人はもとより、家族一同たいへん悩み苦しんでいます。

◇◇中は、全校ぐるみでいじめ防止に取り組み、いじめのない学校造りを進めていらっしゃることが新聞報道や学校ブログでわかります。

従って、いじめから逃れ、安全で安心な環境のもとで子どもを学習させるために、転校先として◇◇中を強く希望します。

保護者 ●●●●

同文書が提出されたのは12月。『いじめによって学校へ行けず、クラスに入れない状態が十一月十二日以降続いています』という記述から、いじめが収束していなかったことが分かる内容だ。もちろん、いじめが続いていたからこそ「転校」という最終手段をとるしかなかったのだが、伊敷中が作成した「いじめの実態報告」(令和元年度分)や今年6月3日に開かれた市教委の会議で配布された資料には「いじめは解消」となっていた。

下は、市教委の会議で配布された資料だが、『当時、学校、教育委員会事務局は、いじめが解消していることや生徒の登校状況などから総合的に判断し、重大事態と捉えなかったところである』と明記されている。(*赤い書き込みはハンター編集部)

一連の報道で「いじめの隠蔽」が露見した後だというのに、なおもいじめを「解消」したと強弁する市教委。問題の「◇◇中を希望する理由」という文書の存在を認めるわけにはいかないのだろう、被害生徒の保護者が求めた個人情報開示請求では文書の存在そのものに触れず知らぬ顔で通し、その後の保護者側の存否確認にも答えない状況がつづいている。

■極まった市教委の不誠実

ハンターは今月20日、市教委青少年課に当該文書の存否について確認しようとしたが、同課の課長が文書でのやり取りを要求してきたため、以下の質問書を送付した。

鹿児島市教育委員会青少年課 御中                令和3年7月20日

質問書

ご多忙とは存じますが、以下の点について確認いたしますので、ご回答下さい。

【前提となる事実】

・令和元年に鹿児島市立伊敷中学校の2年生のクラスで起きたいじめに関して、いじめの被害にあった▲▲□□さんの保護者・▲▲○○さんから、「◇◇中を希望する理由」と題する文書(別紙1)が、市教委に提出されました。

・▲▲さん側から市教委に対して個人情報開示請求が行われ、市教委は▲▲□□さんのいじめに関する文書を開示していますが、その中に「◇◇中を希望する理由」は含まれていませんでした。

当該「◇◇中を希望する理由」が開示されなかった理由についてお答え下さい。廃棄なら「廃棄」、紛失なら「紛失」という回答でも結構です。破棄の場合は、その理由をご回答ください。

これに対して、市教委が送ってきたのが下のFAX。答えではなく、おとぼけとしか思えない逆質問だった。

 これが回答ではないことは、子供でも分かる。文書の存否を問われて、「いつ、どこに出された文書ですか」ととぼければ、不存在を認めたも同然だ。幼稚過ぎて話にならない。こうした不誠実な対応しかできない人間たちが、どうして教育を司ることができるだろう。強く抗議したが、2日経ってもなしのつぶてだ。

そもそも問題の文書は、前述の通り伊敷中のいじめが収束せず、被害生徒が転校を余儀なくされた際に市教委側が保護者に指示して書かせたものだ。もちろん、提出日も提出先も分かっている。ハンターは現物のコピーを質問書に添付しており、対象文書が分からないはずはない。悪質な時間稼ぎは、文書がないことの理由を考えるための時間稼ぎに過ぎない。

当該文書は、被害生徒の転校に正当な理由があったことを証明する重要な公文書。提出されていなければ、転校は許可されなかった。ただし、その文書はいじめが継続していることの証拠でもあり、「いじめは解消」と虚偽を重ねてきた伊敷中と市教委にとっては、「なかったこと」にしたい1枚だった。いじめの隠蔽が表面化したことで、辻褄を合わせるため廃棄された可能性が否定できない。言うまでもなく、公文書毀棄は犯罪である。

被害生徒の家族は、新たに「◇◇中を希望する理由」の写しを市教委に提出した上で原本の存否確認を求めたが、数週間経っても返事は来ないという。

姑息な市教委のこと、「提出されたという証拠はない。あとで作成されたもの」と開き直ることも考えられる。だがハンターは、転校が許可された際の市教委と被害生徒側のやり取りの正確な記録を確認しており、市教委が被害生徒側に文書の記述内容まで指導していたことが分かっている。

鹿児島市内の公立校で起きたいじめを巡っては、隠蔽されてきた伊敷中のケースを含む3件の事案について、市教委が設置した第三者委員会で調査が始まったところだ。実態解明を期待したいところではあるが、隠蔽やでっち上げを繰り返す市教委事務局が提示した資料に基づく調査なら、時間と税金の無駄に終わる可能性もある。委員各位の良識と、真相を見抜く力に期待したい。

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