「公文書偽造」の兵庫県立淡路医療センター、経緯説明に数々の疑問

 30台のノートパソコンを決裁を経ぬまま不正に購入し、真相を隠すために入札を偽装。さらに、その件に対する情報公開請求をごまかすため、存在していなかった決裁文書を偽造した――。前代未聞の犯罪行為を行っていた淡路島の公立中核病院「兵庫県立淡路医療センター」への調査を進めている兵庫県が先月23日、ハンターにこれまでの経緯をまとめた説明資料を開示した(⇒参照記事)。踏み込んだ調査であることががうかがい知れる内容だが、記述の中には、鵜吞みにできない怪しい“言い訳”もある。

■160万円超は入札―「気づかなかった」に関係者苦笑い

 下が兵庫県病院局からメールで送られてきた「物品調達に係る不適切な事務処理について」と題する説明文書である。

 淡路医療センター側の、現時点での「言い訳」はこうだ。

 令和2年12月18日に、看護部全体で参加するオンライン会議で使用するパソコンなど30台のパソコンの調達が必要となったため、センターの総務課が1月15日頃までに納品となるよう経理課に依頼。これを受けた経理課の担当者が、原則として総額160万円超の調達には入札が必要であるにもかかわらず、これを超える金額であることに気づかず、事業者にパソコンを発注するFAXを送信し、購入を行ったのだという。誰が考えてもおかしな話だ。

 160万円を超える金額であることに「気づかず」という点についてだが、関係者によれば、FAXを送ったのは少なくとも2~3年は淡路医療センターに勤務している職員。これまで報じてきた入札偽装のメールを複数の業者に送り、指定した金額より上の額を記入した入札書を郵送するよう強要した人物だ。勤務年数や取材で確認できた出入り業者へのこれまでの応対状況を考えれば、「気づかなかった」という言い分は到底信用できない。

 ある兵庫県の関係者は、「気づかず」という言い訳について、苦笑いしながらこう話す。
「馬鹿も休み休み言えということですね。何年も仕事をやっている職員が、金額も確かめずに30台ものパソコン購入を進めるわけがない。実機の納入後に、納品書を見て調達額が分かったという経理課長の話を信じる役人はいないでしょう。金銭感覚が麻痺している。こんな言い訳が通るのなら、兵庫の県立病院は、いつもデタラメをやっているということになりはしませんか。忙しいというのは理由になりませんよ。ましてやコロナを言い訳に使うなどもってのほか。日常的に官製談合みたいなことをやっているという話もあるから、裏にカネ絡みの動きがあるかもしれませんね」

 確かに、30台ものパソコンを購入するにあたって、金額を確認しなかったという主張に頷く人は少ないだろう。また、発注の時点で当該職員の上司である経理課長がチェックを入れなかったという話も不自然だ。公文書偽造・同行使という犯罪行為の発端となったパソコン発注段階の状況を、気付かなかったなどという軽い話で済まそうとする調査結果には不同意と言うしかない。

■疑問山積 確かなのは組織の腐敗

 ここで、上掲の文書に沿ってハンターが作成した時系列表を再掲しておきたい。

 一連の事務処理の「問題点」について、県側は説明文書にこう記す。

(1)既に納品のあった物品の調達に関して、入札通知書等の入札に関係する書類を関係事業者に送付し、入札書や辞退届を受理することにより、入札を行ったかのような体裁を整える書類を作成したこと
(2)上記の処理の中で、本来、応札者に伝えてはならない金額(納品業者の参考見積額)を事前に伝えたこと
(3)公文書公開に当たり説明できないと考え、存在しない文書(随意契約決裁書)を当時に遡って作成の上公開したこと

 言うまでもなく、(1)は入札を偽装するために嘘の内容を記したメールを作成、送信したという公文書偽装・同行使にあたる行為。(3)は、パソコン調達についての情報公開請求をごまかすために、随契の決裁文書を偽造し、開示請求者から開示実施手数料を得るために、その偽造文書を交付したという公文書偽装・同行使及び詐欺にあたる行為だ。問題点というより、犯罪行為。「法的問題」として整理し直すべきだろう。

 「発生原因」について、県は次のように分析している。

(1)公務員として法令遵守の意識が低く、体裁を整えることのみを重視し、規則や制度の本質を理解せず、事務処理にあたり厳正さに欠けていたこと
(2)公文書に対する認識が甘く、適正な公文書管理が情報公開の基盤であることの重要性も認識できていなかったこと

 「公務員として法令遵守の意識が低く」ではなく「公務員として法令遵守の意識がなく」だろう。「規則や制度の本質を理解せず、事務処理にあたり厳正さに欠けていた」のも確かだし、「公文書に対する認識が甘く、適正な公文書管理が情報公開の基盤であることの重要性も認識できていなかった」というのも間違いではないが、最大の原因は、経理課長をはじめとする管理職が自己保身に走ったことにある。その証拠に、ハンターの追及を受けた岩崎聖子経理課長は記者とのやり取りの中で、責任逃れとしか思えない発言を行っていた。

岩崎課長:いえいえ、あのー。そういう風にしようとは思ったんですが、思ったというか、そういう風な……、あのー。入札をしなければいけないということに気が付いた段階で、一旦、あのー、入札ということも含めて考えないといけないということで、先に動いてしまったというところがあります。ただ、あの、組織で相談をしたときに、入札なのか、やっぱりこれは、入札をするにはおかしいということになって、最終随契ということで、組織で決定をしています

 岩崎課長のいう『組織』が、経理局なのか、淡路医療センターなのか、あるいは兵庫県なのか分からないが、「自分だけの責任ではない」という卑劣な言い訳にしか聞こえなかった。結果からして、犯罪行為を「組織で相談」し「組織で決定」したのが事実なら、兵庫県立淡路医療センターという組織は、根太から腐っていると言わねばならない。

 事件の詳細が掴めていない段階で「今後の再発防止策」を提示するのは早計だと思うが、説明文書の最後に記された下の4項目をみると「いまさらこういうことを指導せねばならないほど、県立病院事務方の程度は低いのか」というのが正直なところだ。

(1)当該行為に至った責任の所在を明らかにし、厳正に処分を実施
(2)幹部職員も含め、再度会計規程等の習熟を図り、規程に基づいた事務処理を徹底
(3)病院局が行う業務検査を拡充(年1回→年2回)するとともに、契約関係事務に関する検査を徹底し、適正な事務処理に反映
(4)病院局主催の経理研修の内容を職員全員で共有する場を設け、適正な事務処理に必要な知識を組織として共有化

 こうした指導も結構だが、淡路医療センターは公文書偽装・同行使という犯罪行為を2度も犯している。兵庫県がやるべきことは一つ。刑事訴訟法は、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」(第239条第二項)と公務員の告発義務を定めている。

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