福岡県筑後市議会議長が違法な政治活動(1)|前代未聞!「後援会」は選管無届け

ソフトバンクホークスのファーム施設があることで知られる福岡県筑後市の原口英喜市議会議長が、政治団体の届出をせずに、長年「後援会活動」を続けていることが分かった。

政治資金規正法は、政治団体の設立から7日以内に、目的や事務所所在地など一定の内容を都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に届け出るよう定めており、届出をせずに団体として収入を得たり支出を行った場合は5年以下の禁固または100万円以下の罰金となる。

原口議長の“無届け後援会”は2019年、印刷物を作成して支出を行っており、同法の規定に抵触するのは確実。こうした状況が少なくとも20年以上続いてきたとみられ、議長であること以前に、“議員資格”が厳しく問われる事態となりそうだ。

■選挙費用の「リーフレット」に注目

前代未聞の市議会議長による違法な政治活動。その実態が分かるきっかけとなったのは、一昨年4月に行われた筑後市議会議員選挙で原口氏陣営が筑後市選挙管理委員会に提出した「選挙運動費用収支報告書」の記載だった。

選挙運動とは区別すべき“後援会活動”とみられる複数の支出がある中で、ハンターが特に注目したのが「リーフレット」の印刷費である(*下が報告書の表紙と該当ページ)。

一般的に、政治の現場で使用されるリーフレットとは立候補予定者本人の政治信条や政策を示し、後援会への加入を促す目的で作成された印刷物のこと。後援会活動と選挙運動はまったくの別物だ。従うべき法律も違っており、前者は政治資金規正法、後者は公職選挙法の規定に縛られる。当然、後援会活動の収入や支出が、選挙運動費用収支報告書に記載されることはない。では、原口陣営の選挙運動費用収支報告書にある「リーフレット」は、何のための印刷物だったのか?

市選管への情報公開請求で入手した印刷業者の領収書を確認したところ、あて名は「原口ひでき後援会」となっている(*下、参照)。

やはり「後援会活動」の支出と考えられるが、印刷業者が選挙運動と後援会活動の区別がつかず、あて名に「後援会」と入れた可能性もある。経緯を調べるためリーフレットの実物と発注者を確認しようとしたのだが、業者はすでに廃業していた。

選挙期間中に「リーフレット」が使われたのかどうか――。そもそも本当に作成されたのか――。現地での取材は、リーフレットの実物を捜すことから始まった。

■前代未聞「無届け後援会」発覚の瞬間

よほど親しいか、陣営関係者でもない限り、政治家の印刷物を保管している人は少ない。2年も前に配布されたものなら、なおさらだ。筑後市のあちこちで聞いて回ったが、原口後援会のリーフレットを持っている人が見つからない。やむなく、原口議長本人に取材し、事実確認を求めた。

“選挙でリーフレットを作成したというのは本当か”――記者の問いに、同氏は「リーフレットは手元にないが、確かに作成しており後援会活動で使った」と明言した。しかし、後援会活動用のリーフレットなら、作成費用を選挙運動費用にカウントすることはできない。議長の主張が事実なら、市選管に提出された選挙運動費用収支報告書自体が不適切。もちろん、訂正が必要となる。

ただ、現物を見て「リーフレット」が後援会活動用のものなのかどうかを確認しなければ、訂正の必要性を指摘することはできない。選挙期間中に頒布することが禁じられた、違法な印刷物だった可能性も否定できないからだ。先に進むには、リーフレットの実物かコピーがいる。議長としても、支出を証明するには実物を示すしかない。

現物を保管していそうな関係者について聞いたところ、議長から訪ねるよう指示されたのが、陣営で選挙の責任者を務めてきたという人物。在宅を確かめて訪問し、「リーフレット」の確認を申し出たところ、保管されていたのが下のハガキ大・二つ折りの印刷物だった。(*上の右側が表紙、左側が裏)

後援会討議資料」と明記されており、記載された連絡先は「後援会事務所」のもの。さらに「後援会規約」も掲載されており、裏面には「後援会 会長」の挨拶まである。「リーフレット」は、明らかに政治活動用であり、選挙向けではない。

すると、この印刷物の作成費用は、公職選挙法ではなく、政治資金規正法に従って処理されなければならない。つまり、「政治資金収支報告書」への記載が義務付けられた支出ということだ。だが、実際には選挙運動費用として処理されている。

こうした場合、まず筑後市選管に提出された「選挙運動費用収支報告書」にあるリーフレット印刷費などの後援会活動にかかった支出を抹消して収入・支出総額を訂正。さらに、後援会が県選管に提出した「政治資金収支報告書」に、それらの支出を加えて、収入と支出のバランスをとるという形で「違法な状態」を是正する。そこで一件落着だ。

では、この選挙の年の「原口ひでき後援会」の収支報告は、どのような内容だったのか?政治資金収支報告書を閲覧するため県選管に出向いた記者は、そこで驚きの事実に直面する。「原口ひでき後援会」という名称の政治団体は、法的には存在していなかったのである。つまり「無届け」。これだけでも違法性が問われる状況だった。

(つづく)

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