福岡県八女市・矢部川水辺公園整備事業を揺るがす疑惑の土地

八女市や福岡県が隠蔽を図った矢部川河畔の公園整備事業は、同市に編入合併された旧立花町が計画したものだった。町政時代の計画は、集団移転で残された土地に公園を造るという内容。しかし、合併から5年も経って復活した公園整備事業には、当初の予定になかった2,138㎡もの「余分な土地」(市関係者の指摘)が加えられ、市内部からも疑問の声が上がる状況となっている。

取材を進める中で明らかになったのは、八女市が本当に隠したかったのは「余分な土地」の存在だということ。公園整備は、その「余分な土地」の買収を正当化するための道具に過ぎなかったことも分かってきた。疑惑の土地の正体とは……。

■公園計画ないと明言した県の文書に「矢部川親水公園」

8月初旬、HUNTERは福岡県に、「矢部川水辺公園(仮称)に関する全ての文書」を開示請求。これに対し、県側は「八女市の矢部川沿いに公園を造る計画はない」として開示請求の取り下げを求めてきた。

対象文書が存在していなければ「不存在通知」を出すべきなのだが、「八女市には公園整備の計画があるようですが、県にはありません」という県側の言い分を信用して請求を取り下げ、改めて八女市に関連文書の開示請求を行っていた。その後に起きた八女市の隠蔽工作については、これまで報じてきた通りである。

意図的に隠された数々の公文書について八女市とやり取りする中、明らかになったのが県の関与。八女市の保管文書の中には、県側が「公園」の整備で市と協働することが記されていた。

“実際には、公園または公園に近いものを整備する計画があるのではないか?”――厳しく県側を追及したところ、建築都市部から県土整備部に回され、最後は八女県土整備事務所が対応。結局、矢部川の河川敷に「公園ではないが、階段を整備する程度の工事は計画している」と主張が変わった。詭弁である。

再度、県に対して情報公開請求し、ようやく出てきたのが200枚を超える関連文書。いくつかの記録文書のタイトルは、当初県が明言した「八女市の矢部川沿いに公園を造る計画はない」という主張を、完全に否定するものだった。

下は、平成30年8月に八女県土整備事務所が作成した会議の記録。県と八女市が協議した際の要旨が記されているのだが、表題は「矢部川親水公園について」。次の令和元年5月27日の会議録も、タイトルは「矢部川親水公園について」となっていた。福岡県も八女市も、同市立花町山崎付近の矢部川河畔に整備される施設が、「親水公園」であると認識していた証拠だ。

八女市内で予定される公園の整備計画を巡り、県や市が事業の実態を隠そうとしたことは確かだ。そして、隠蔽の原因が「余分な土地」にあることも、複数の関係者による証言から明らかになっている。

■「余分な土地」を買った理由

問題の土地のことを「余分な土地」と揶揄した市関係者は、その理由を“買う必要がなかった土地だからだ”と断言する。確かに、前稿で指摘した通り、旧立花町時代は集団移転跡地を公園にする計画で、問題の土地はその中に含まれていなかった。

問題の土地を八女市が買収したのは、2015年(平成27年)から16年(同28年)にかけてのこと。しかも、情報公開で入手した資料からは、問題の土地の買収目的が「道路の拡幅」のためで、公園整備のためではなかったことが分かっている。

分かりやすく述べれば、事実上公園整備のための道路の拡幅のはずなのに、公園を整備するという方針が決まる前に、なぜか道路の手当だけを先行させたということだ。公園整備も、道路整備も、後付けの理由だった可能性が高い。

では、八女市の三田村市長は、なぜ「余分な土地」を取得するという決断をしなければならなかったのか――?疑問の答えを探すため問題の土地について調べを進めると、ほとんどの八女市民が知っている“事件”の存在が浮かび上がる。

(以下、次稿)

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