暴行被害の男性が黒田如水ゆかりの寺と副住職らを提訴

18日、浄土宗「圓應寺(えんのうじ)」(福岡市中央区)で修行していた20代男性が、同寺の副住職から日常的に暴行を受けたことでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、寺と副住職らを相手取って逸失利益など約6,000万円を支払うよう求めて福岡地裁に提訴。同日、代理人弁護士とともに会見を開き被害の実情などを訴えた。

■指導と称して暴力

訴状によると、子供のころから僧侶になりたいと考えていた男性は高校卒業後、別の寺で掃除などの手伝いを行っていたところ、親族の知人から紹介を受けて黒田官兵衛の妻が開基したと伝えられる圓應寺に出入りするようになり、2016年4月頃から副住職の指導のもと、修行を始めていた。

修行開始からまもなく、副住職による激しい叱責や暴力が始まり日を追うごとにエスカレート。17年6月頃には、日常的に暴力が振るわれるようになっていたという。

男性は、空手の師範代でもある副住職から繰り返される暴行により全身に内出血や傷を負い続けたものの、僧侶になりたいという夢を叶えるため、我慢して寺に通い続けていた。

■副住職は傷害罪で罰金刑に

2018年5月14日、寺での修行中に副住職が男性に対し、叱責しながら殴る蹴るの暴行。男性はかろうじて帰宅できたものの、混乱状態となり病院へ救急搬送されていた。
(下は、暴行被害を受けた日の男性の写真)

耐えかねた男性と家族は警察に被害届を提出。副住職は同年11月28日に傷害罪で略式起訴され、翌12月6日に罰金20万円を支払うよう略式命令を受けている。

当時の診察書には、骨折していたことをうかがわせる記載もあり、痛みに耐えて修行を続けていたことが分かる。

■今も残る障害

男性はその後、情緒不安定となり医療機関を受診して療養を開始。PTSDと診断され、1年以上も薬物療法や精神療法の治療を受けていた。

今年1月、「日常生活で助けが必要」「就労できるが、職種が相当に制限される」など精神後遺障害9級に相当すると認められ、これ以上治療を受けても症状がよくならない症状固定の診断を受けている。

男性側は、度重なる暴行がPTSDを引き起こし、精神後遺障害が残されたことにより将来にかけて得ることができた収入を失ったとして、慰謝料などを含め約5,991万円を請求。加害者である副住職のほか、寺には使用者責任を、副住職の父である住職には監督責任があるとして、連帯での賠償を求めている。

提訴後、取材に応じた原告の家族は「刑事事件で問われたのは、修行の最後の日となった2年前の暴行だけ。あの日以来、家族の生活がおかしくなった。暴行を受けた本人は当然だが、家族みんな一日でも早い決着を心から願っている」と語った。

 

 

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