道警「速度違反捏造」に2年6カ月求刑|発覚直後の隠蔽で被害拡大

北海道警察の交通機動隊員が大量の速度違反を捏造していた問題(既報)で、証拠隠滅などの罪で起訴された元警部補(58)の初公判が12月9日、札幌地裁(中川正隆裁判長)で開かれ、即日結審した。起訴事実を全面的に認めた元警部補に対し、検察側は「刑事司法への信頼を失い、極めて悪質」と、懲役2年6カ月を求刑した。事件で起訴されたのは元警部補のみだが、公判では内部で揉み消しをはかった上司の存在なども指摘されている。組織的な隠蔽があったにもかかわらず、事件は元警部補1人が罰を受ける形で幕を閉じることになりそうだ。

■闇に葬られる「組織的犯行」

起訴状などによると、被告人の元警部補は2019年8月から20年5月までに少なくとも10件、速度違反の反則切符(青切符)を捏造した。パトカーに搭載していたレーザー式速度測定装置を悪用し、本来は停車中のパトカーから一般車輌に照射するレーザーを、走行中のパトカーから固定物(電柱など)へ照射して嘘の記録紙を作り続けたという。違反取り締まりは警察官2人がペアを組んで行なうもので、一連の事件には元警部補のほかに巡査長3人が関与していたが、いずれの巡査長も不起訴処分が決まっている。

検察の陳述では「実績を挙げたかった」などの犯行動機が指弾された一方、不正が始まった翌月には元警部補の上司にあたる交機隊の中隊長が事実を把握していたことが明かされた。中隊長は「内々で処理しよう」と不正の隠蔽をはかり、元警部補に是正を指導することなく問題を放置し続けたという。被告人質問で「もし指導を受けていたら不正をやめていたか」と問われた元警部補は、涙ながらに「やめていました」と答えている。

事件に使われた測定装置には、レーザーの照射対象を撮影するカメラが搭載されている。撮影された映像はDVDに記録される仕組みだが、交機隊ではこの映像を確認する作業を怠っており、20年6月に内部告発があるまで一切チェックされていなかった。極めて杜撰な手口による捏造事件が職場全体で揉み消され、あるいは見逃がされてきた結果、被害が拡大し続けたというわけだ。ペアを組んだ3人の警察官が無罪放免となったのは先述した通りだが、揉み消しをはかった中隊長やカメラ映像のチェックを怠った上司などもまた、一切罪に問われていない。

走行中のパトカーから固定物にレーザーを当てる捏造方法は、元警部補が職務中に思いついて始めたこととされているが、本当の意味でその人独自の発案といえるかどうかは微妙なところだ。札幌市内で交通取り締まり勤務を経験した元警察官は「誰でも思いつく方法で、決してオリジナルなものではない」と指摘する。

「捏造は簡単で、私でも思いつきます。実際、私が現職のころもレーダー式(非・レーザー)の装置で同じ不正をやった同僚がいました。この時は本部に上げずに『訓戒』で済ませ、つまり隠蔽したので、表面化しなかっただけ。元警部補は可哀想ですが、ノルマの地獄にハマったんですね」

こうした組織的な問題にメスを入れず、実行犯のみを罰して幕引きをはかろうとする道警。元警部補の弁護人はその姿勢を批判し「中隊長が把握した時点で適切に指導していれば、不正の半数以上は防ぐことができた」と指摘する。法廷での意見陳述では、元警部補が「(不正の容易な)レーダー式の車輌から旧式のパトカーへ乗り換えたい」と要望していた事実も明かされた。知ってか知らずか、道警は元警部補の逮捕後も同じ装置の追加導入を決め、随意契約により計9台を約5000万円で購入している。

捏造事件の判決は1月13日、札幌地裁で言い渡される。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 

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