指宿市長、女性教師暴行事件の議会質疑で被害者軽視の暴言連発

15日、今年9月に鹿児島県指宿市で小学校の男性教師(懲戒処分を受け辞職)が起こした女性教師への暴行事件が同市の議会で取り上げられ、答弁に立った豊留悦男市長が、被害者の傷に塩を塗るような発言を連発した。

これまで報じてきたとおり、事件は市内の公立小学校に勤務する20代の女性教師が、同僚で30代の教務主任(当時)から性的暴行を迫られ、かろうじて難をのがれながらも身体と心に大きな傷を負ったというもの。どうみても強制性交未遂だったが、市長は事件を「セクハラ」と片付けた上で、女性にも非があったかのような主張を展開。さらに今回の問題を「教育員会が出て行ってやる問題ではない」とまで言い切った。

加害者擁護としか思えない市政トップの非道な姿勢――。被害女性の周辺や市内在住の女性らから、厳しい批判の声が上がっている。

■支離滅裂

15日の指宿市議会一般質問。会見などで前面に出て、この問題について力を尽くすつもりはないのかといった主旨の質問をうけた市長は、次のように答弁した。

質問の意図が見えません。二人の人生に関わることです。もちろん、被害女性は大きいです。すべての、これまで教育者としてキャリアを積み、実績を残した。それを全て否定して、そして、一人の教師としての人権に関わることにつながるような事例にならないように、慎重に、こういう問題は対応した方がいい。そのような話はした覚えがあります

そういう事例というのは○○小(議場では実名)の事例が初めてではありません。いろんなことがあるわけであります。

もうテレビとかいろんな問題で広報されてるとこですので、私はあえて(小学校の)名前を申し上げましたけれども、それが差し支えあるようでしたら、学校名は訂正させていただきたいと思います。

今回この事件で、市議会も県議会も県教委も巻き込んで大きな問題になったのは何故かっていうのを、私は考えているところであります。そうするためには、軽々にものは言えない

つまり、こういう問題というのは、教育委員会が出ていっていろいろやる問題ではないと、私は思っております。

学校は第一次的に経営者として責任のある報告をし、そして市教委を通して県教委、この指導を受けながら、こういう問題を適切に処理する、それがこれまでの道筋でありましたので、私はこれまでの経験を踏まえて、どのように処理すべきか、ということは私なりには考えております

このように大きく議会でも複数の議員がこの問題に対して大々的に質問をするという、このことについても私はこれまでに経験のないことでありますので、議員のおっしゃる質問に対して、的を射た回答をすることができないところであります。

長い答弁だが、意味不明。冒頭で「質問の意図が見えません」と言っておきながら、最後は「的を射た回答をすることができない」と話しており、これはつまり『意図』が分かっていたことを示している。“大丈夫ですか”と聞きたくなる迷走ぶりだ。

被害女性は20代であり、「教育者としてキャリアを積み、実績を残した」というわけではない。すると市長が言う「全て否定」される対象は、発言の脈絡からしても加害者ということになる。豊留市長の「一人の教師としての人権に関わることにつながるような事例にならないように、慎重に、こういう問題は対応した方がいい」との発言は、加害者に対する配慮としか思えない。

滑稽なのは「人権」だの「慎重に」だのと格好をつけている市長が、報道でも市議会質問でも一切出てきていない小学校の校名を、あっさりしゃべったあげく、指摘を受け「差し支えあるようでしたら、学校名は訂正」とあわてた場面。ちぐはぐさに、議場から失笑が漏れていた。

驚いたのは、次のくだりだ。「こういう問題というのは、教育委員会が出ていっていろいろやる問題ではない

鹿児島県では、行政上の措置(懲戒より軽いもの)や懲戒といった教員の分限について審議する場合、措置を市町村の教育委員会が、懲戒を県教委が所管している。つまり教員の暴行事件に対応するのは教育委員会の職務なのだが、市長はこれを否定している。

教育委員会の役割ではないとすると、いったいどの機関がやるのか?ここまで言った以上、当然答えを明示するかと思いきや、直後に出てきたのは「学校は第一次的に経営者として責任のある報告をし、そして市教委を通して県教委、この指導を受けながら、こういう問題を適切に処理する、それがこれまでの道筋」だった。今回の事件への対応を教育委員会の仕事として認識している証拠で、発言内容にはまるで整合性がない。

■加害者擁護

さらに市長の対応を追及した市議に対する豊留氏の答弁は、市長としての資質を疑わざるを得ない暴言だった。

被害女性については大切に、その経緯を踏まえた対応をすべきであろうけれども様々な要因が絡んでいるだろうと思います。何故こう申し上げるかといいますと、えてして、こういう個人的な男女問題、つまり傷害につながったセクハラの問題というのは、それぞれの立場が、それぞれのことで、それぞれの思いがあってやったことだろうと、あった事件だろうと思うわけであります。ですから、ここでトップつまり市長がこうこうということは言えない、ということを言ってるわけであります。

「被害女性については大切に、その経緯を踏まえた対応をすべきであろうけれども様々な要因が絡んでいるだろうと思います」――。ここに出てきた「けれども」は、前に述べた事柄と相反する内容を導く語だ。つまり市長は、“”被害女性を大切にして、経緯を踏まえた対応が求められのが当然だろうが、じつはそれを否定する要因があるかもよ」と言っているのである。日本語を正確に理解するなら、そうなる。

最大の問題は、「えてして、こういう個人的な男女問題、つまり傷害につながったセクハラの問題というのは、それぞれの立場が、それぞれのことで、それぞれの思いがあってやったことだろう」という豊留流の解釈。「だろう」という表現で明らかなように、この人は、推測を前提にして自らの主張を組み立て、議場という公の場でその貧相な説を公表している。

しかし、今回の事件は「個人的な男女問題」では決してなく、加害者の元教務主任が一方的な欲情をもって女性教師に襲いかかり、いやがる相手を力で監禁し、傷を負わせたというもの。これまで、事件を矮小化しようとする連中がいることを指摘してきたが、元凶が豊留市長だったことをうかがわせる質疑だったと言えるだろう。そもそも、今回の事件は「セクハラ」ではなく、軽くても“わいせつ”、正確を期すなら“強制性交未遂”なのである。認識違いも甚だしい。

次に、「それぞれの立場が、それぞれのことで、それぞれの思いがあってやったこと」などと、なぜ市長が言えるのか?「それぞれの立場」についてハッキリさせておくが、元教務主任は加害者、20代の女性教師は被害者である。「それぞれの思い」については、加害者は性的欲求を満たそうという思い、被害者はただただその場を離れたかった、助かりたかったという思いだ。あたかも被害者の女性にも非があったかのような物言いは、女性蔑視、加害者擁護の裏返しでしかあるまい。

豊留市長は、公立校の校長から市長に転身した人物だ。かつての教育者が発したとは思えないこの日の酷い答弁に、被害者の周辺や関係者は声を失ったという。市議会の中からも、「長々としゃべった割には意味不明の答弁。被害者ではなく、加害者に寄り添っているとしか思えない」と厳しい批判の声が上がったのは言うまでもない。

ある指宿市在住の主婦は、次のように話している。
「この市長は、人権とか、女性の立場というものがまるで理解できていないのでしょう。性的被害を受けたか、あるいは受けそうになった女性が、その後にどれだけ苦しむのか、これっぽっちも分かってない。おまえはバカか、と言ってやりたい。加害者の身内に元校長がいるそうですが、市長も元校長。ウソかまことか、そんなつながりが事件の背景にあるとまで言われています。議会での加害者擁護としか思えない豊留さんの発言を聞くと、市長、校長、市教委、県教委が、そろって事件を矮小化して終わらせようとしていたとしか思えません。学校関係者の間で、被害者であるはずの女性の先生やその周辺を批判するというケースがあるもの確かで、裏にデマやでっち上げを広めようとしている人の動きを感じています。残念ですが、指宿は腐っていますよね」



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