【指宿女性教師暴行事件】犯罪行為を矮小化した「事故報告書」(上)

女性教師への暴行事件が起きた鹿児島県指宿市には、卑劣な犯行に及んだ元男性教師を庇ったり、傷ついた被害者を誹謗中傷したりする“歪んだ考え方”の人間が少なからず存在する。直接的に手を出しているわけではないが、そうした連中は紛れもなく「加害者」だ。

一番の問題は、加害者と被害者の上司である学校長が、被害女性に「加害者の●●先生を追い込む気か!」と逆切れしたあげく、「示談」を勧めたという点。不倫の前歴がある加害者を「教務主任」に任命した責任を問われたくなかったのか、あるいは庇わざるを得ない「特別な事情」があったのか定かではないが、校長がとった一連の行動は、明らかに女性教師と周辺の信頼を裏切るものだった。

じつは、鹿児島県教育委員会が「停職一カ月」という加害男性の懲戒処分を決めるまでの過程で、暴行を受けた女性教師の被害状況や気持ちは、まったくと言ってよいほど考慮されていない。被害者の人権を否定し、加害者だけを守ろうとする「不正義」が、まかり通っているのが現在の鹿児島なのだ。事件を矮小化するために作成されたとしか思えない、学校側が県教委に提出した「事故報告書」について二回にわたって詳しく報じる。

■報告書記載内容への疑問

学校内で体罰やいじめ、教員同士のトラブルなどが起きた場合、現場を預かる校長は「事故報告書」を作成し、教育委員会に報告を上げなければならない。9月23日に起きた今回の女性教師暴行事件では、5日後の28日に市教委に対し事故報告書が提出されていた。下は、ハンターが入手した報告書の写しである。

県教委が加害男性への処分を決めるにあたって、現場からの「第一報」となった事故報告書の記載内容が重要な意味を持つのは言うまでもない。関係者からの聞き取り調査も行われているのだが、事故報告書が事案全体の方向性を決定付けるのに、多大な影響を与えたことは想像に難くない。

分かりやすい例だが、県教委の調査に応じた被害者教師は県教委側から、実際には何分もの間身体的な接触をしようとする加害者ともみ合った状況だったにもかかわらず、あたかも“一瞬”の出来事だったように言われ驚いたという。そうした間違った見立ての原因は、学校長の事故報告書にあったと考えられる。報告書の該当部分は、1枚目の「9月24日 0:50分頃」にある次のくだりである。
玄関の鍵を閉められたことから、更に恐怖を覚え、「さわらないでください。」と強く抗議したところ、●●(加害男性)がつかんでいた手の力が緩んだことから、○○(被害女性)は玄関の鍵を開けて外に逃げた》――どうみても、もみ合いというより瞬間的なやり取り。この記述が、当事者以外の関係者に予断を与えたのは確かだろう。

時系列的にはこれより前になるが、「9月23日 20:20頃」、つまり事件当日の加害男性の部屋での動きも、実態とは違う。《仕事上のアドバイスをしたい》として引き留めた加害者に対し、女性教師は《仕事上のアドバイスなら聞きたい》と思ったことになっている。ところが、当日このようなやり取りは一切行われておらず、女性教師が積極的に部屋に残ったわけではなかったことが分かっている。この記述は、明らかに加害者側の言い分をそのまま文章にした、いわばでっち上げと言うべきものだ。

報告書の記述内容が、加害男性の罪を軽くする目的をもっていたとすれば、当然のことながら教育委員会の処分方針は大きく変わる。形だけ被害者の訴えを入れながら、巧妙に加害者の逃げ道を作ったとすれば、この報告書の罪は重い。現に、県教委の担当職員は“加害男性のやったことは、わいせつ行為ではないのか”というハンターの確認取材に対し、「わいせつ行為にはあたらない」と断言。信じられないことに、その理由は「(加害者)本人がそう言ったから」だった。

強制性交未遂としか思えない犯罪行為を行った人間の主張だけを取り上げ、被害女性の言い分を軽く扱って処分を決めた県教委の姿勢の裏には、学校長の事故報告書があったとみられている。

事故報告書の記載内容はどこまで信用できるのか――?ハンターは、被害者及び周辺への取材を重ねた。

(つづく)

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