北海道立江差高等看護学院で認定された教員によるパワーハラスメント問題で、一連の被害が表面化するきっかけをつくった保護者らが近く、最悪の被害である在学生自殺事案についてハラスメントとの因果関係を認めるよう北海道知事へ申し入れを行なう考えを固めたことがわかった。年内にも関係者が道を訪ね、知事自身の言葉による遺族への謝罪などを求める予定。
知事への申し入れを行なうのは、2020年秋から同学院のハラスメント問題を告発し始めた学生の保護者らでつくる「江差高等看護学院の正常化を求める父母の会」。被害の事実解明や加害教員への適正な処分などを求めて発足した集まりだが、のちに第三者調査委員会のハラスメント認定を受けた道が教員の処分や学生の救済に乗り出してからは、事実上活動休止状態となっていた。
今回改めて知事への申し入れに臨むことになったのは、会の関係者らが本年10月下旬に伝わった在学生自殺事案への道の対応を問題視したため。とりわけ自殺とハラスメントとの相当因果関係を否定する『回答書』について「問題解決と真逆の方向に向かっている」と、会として知事に同回答書の撤回を求める方針を固めた。
年内に道を訪ねる方向ですでに調整に入っており、早ければ今月25日にも知事もしくは担当課へ申入書を手渡すことになる見込み。関係者によれば、申入書には「10月の回答書を撤回し、知事自身の言葉でご遺族へ謝罪の上、『丁寧かつ誠意をもって』再協議に応じていただきたい」などの要望をまとめているという。また、現在の江差看護学院で学習環境が改善されつつある中、今回の対応が現場の足を引っ張ることになりかねないとして、地元議会で指摘があった「知事の政治判断」を強く求める内容となっている。
亡くなった学生の遺族は「父母の会」に参加しておらず、会員の多くと面識がない。今回の申し入れの動きを伝え聞いては「会と関わり持てていないのに気にかけていただき、とてもありがたい。皆さんのお力添えには本当の『誠意』を感じます」と話している。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |