ツイッターやフェイスブックなどSNSの普及により、個人による情報拡散が容易になった。一般市民による投稿が共有され、何万、何十万単位の読者に情報が伝わる。ツイッターなどでは実名登録しない「匿名性」が投稿を活性化しており、普段口にできない話題もつぶやくことができる。
功罪相半ばするシステムと言えるのだが、マスコミに対する内部告発や情報提供の在り方を、SNSが大きく変えつつあるのは事実だ。時に、SNSが、既存のマスコミより早く、正確な情報を伝えるケースもある。
■新聞より10日も早かったツイッター上の感染情報
今月20日、徳島新聞が「徳島市内の居酒屋に勤務する兵庫県在住の20代男性が7月9日に新型コロナウイルスに感染していたことがわかり、10日に兵庫県が徳島県に情報提供したが、徳島県はそれを公表しなかった」と報じた。徳島県の危機管理が適切だったのか問われる事態だが、実は同紙の報道の10日も前に、関係者がSNSを通じて警鐘を鳴らしていたことが分かっている。
それが下の画像。偶然見つけたハンターの記者がスクリーンショットで画像を残していたもので、11日午前2時半頃、ツイッターに匿名のアカウントから投稿されていた。
徳島市内の居酒屋を実名で挙げ、従業員がコロナに感染したこと、その従業員が県外在住者のため徳島県の感染者にはカウントされていないこと、店は通常営業していることが記載されていた。徳島新聞の「徳島市内の居酒屋に勤務する兵庫県在住の20代男性が7月9日に新型コロナウイルスに感染していたことがわかり、10日に兵庫県が徳島県に情報提供したが、徳島県はそれを公表しなかった」と符合する内容だ。
感染の実態を知る投稿者は、興味本位からではなく、かなりの危機感を抱いてツイッターに投稿したものと見るのべきだろう。個人の特定を恐れたのだろう、投稿者は「数時間後に投稿を削除する」という予告通りに、11日午後には投稿自体を削除していた。
その後、徳島県のホームページをチェックしてみたが、一連の事実は一切公表されておらず、20日の徳島新聞の報道まで、匿名投稿者の“情報提供”は無視された格好になっていた。
感染拡大に歯止めをかけるには、正確な情報発信が欠かせない。感染者が県境をまたいで移動した場合も、訪問先の自治体と居住地の自治体が連携して、行動履歴を明らかにしていくことが求められる。
(東城洋平)