北海道・看護学院パワハラ問題|道議が保健福祉部長に謝罪要求

第三者調査により少なくとも52件の被害が認定された北海道立高等看護学院のパワーハラスメント問題で11月初旬、道の担当課が調査結果を地元議会に報告し、保健福祉部トップが陳謝した。一連の問題が議会で採り上げられるのは6度目となり、追及を続けた議員は「この場だけでなく学生や保護者に謝罪を」と強く求めた。

 議会報告があったのは、4日午後に招集された道議会保健福祉委員会。被害調査にあたっていた第三者調査委員会(山内良輔座長)が10月19日にまとめた『調査書』に基づき、保健福祉部の三瓶徹部長がハラスメント確認の経緯などを説明した上で、次のように謝罪の弁を述べた。
これまでの間、ハラスメントにより傷つき、悩み、苦しみ、心穏やかに過ごすことのできない日々を送られた学生、元学生、保護者、ご家族の皆様、そして関係者の皆さまに対し、心から深くお詫び申し上げます

 続く質疑では、これまで毎月この問題を追及してきた平出陽子委員(民主、函館市)を含む全5会派の委員から厳しい声が飛ぶこととなる。

「ハラスメントを、単なる当事者間の問題ではなく組織全体のあり方にかかわるものと捉え、学院運営を大胆に改革していく必要がある」(自民・久保秋雄太委員)

「道自らが当事者能力を持っていないことがあきらかにされた。行政に対する不信は極めて大きい」(結志会・滝口信喜委員)

「およそ教育機関であってはならないことが行なわれてきた。今後このようなことが二度と起こらないよう取り組んで貰いたい」(公明・田中英樹委員)

「第三者委の報告は極めて重いもので、これを道は真摯に受け止めて反省し、再生に向けた道を具体的に進めていく責任がある」(共産・真下紀子委員)

問題発覚以降この件を質し続けてきた先の平出委員は「賽は投げられた」と道に迫り、保健福祉部の三瓶徹部長が改めて当事者に直接謝罪することを求めた。これに「私の責任は極めて重い」と応じた三瓶部長は「誠意をもって速やかに対応していく」と答弁。平出委員はさらに、教員による謝罪についてこう続けた。
「学生や父母から罵声を浴びる、そんな覚悟があるのか。覚悟がないと本当の謝罪とは言えません。学生や保護者たちが納得し、そして社会が納得するような謝罪でなくてはならないと思います」

2時間ほどにわたった質疑を傍聴した学生の1人(21)は、相継いだ指摘に「言いたいことを言って貰えた」と意を得つつ、謝罪や処分などの対応期限を示さなかった道の答弁には不満が残った様子だった。同席した保護者の1人(54)も、ため息まじりに「前回と同じですね」と声を落とした。

学生の救済について道は10月下旬、認定された被害者各自へ個別の救済措置をとることを表明していた。11月2日には被害者のもとに「意向確認」の通知が届き、同15日までの提出期限が示されたが、学生たちが申告したパワハラがすべて被害認定されたわけではないため、保護者らは改めてこれらの扱いについて問い合わせを検討中。一部の被害者はすでに地元弁護士に救済の相談を寄せており、地元弁護士会も相談対応にあたる方針を固めたところだ。

週が明けた11月8日、函館弁護士会(平井喜一会長)はパワハラ問題について会長声明を発表( https://hakoben.or.jp/archives/statement/1220 )、第三者委が認定したハラスメントの多くを違法行為と評価し、「被害救済と再発防止は北海道の責任」と、道に対して速やかな救済を訴えた。同弁護士会は今月11日から2日間、パワハラ問題の無料電話相談窓口を設けることになっている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

*「江差高等看護学院の正常化を求める父母の会」公式サイト⇒https://esashi-seijo.main.jp/

 

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