「レベル低過ぎ」那珂川市議会に対する新聞記者・ジャーナリストの声

「ネットメディアは報道機関に非ず」――時代を理解できない一部の議員が、記者クラブ加盟社の記者だけを優遇しようとする背景にあるのは、間違いなく監視される側とする側による「癒着」だ。そうした意味で、福岡県那珂川市の議会運営委員会でにおける“議論”は、同議会のレベルの低さと、市民にとって必要な情報が記者クラブに独占されている状況を如実に示す舞台だったと言えるだろう。

その那珂川市議会は、暴論を繰り返した一部市議らに押し切られる形で、議会傍聴を記者クラブ加盟社などに限定するため「議会運営に関する申し合わせ事項」を改定していた(下、参照)。

 

では、こうまでしてネットメディアを締め出す那珂川市議会の姿勢を、実際に記者クラブに属している新聞記者やジャーナリストたちはどう見たのか――。寄せられた声の一部を紹介してみたい。

【北海道を中心に活動するジャーナリスト・小笠原淳】那珂川市の議会は主客顛倒しています。あるメディアを報道機関と「認める」かどうかは読者・視聴者(この場合は地元市民?)が判断すべきことで、市民に監視される側の議会が決めることではありません。というか、そもそも委員会に一般傍聴人を入れていないという時点で恐るべき閉鎖性。感染症を理由に傍聴人を絞るのであれば「先着順」もしくは「抽籤」にすべきで、特定の職業に就く者(記者)を優遇するのは明白な「職業差別」、憲法22条違反です。

あと、前半にある「おれは記者ばい」から始まる発言も憲法違反(21条)。「知る権利」と「言論・表現の自由」は国民全員に認められているため、それこそ「おれは記者」と名乗った瞬間にその人は記者です。

ジャーナリスト寺澤有氏などが言うように、記者は全員「自称記者」。前世紀あたりまでは、たまたま一定の新聞社・通信社・テレビ局がその権利を行使するだけで商売できていただけで、上記各社の関係者が「職業として」記者を名乗っていたに過ぎません。それが商売になるかならないか、また報道機関として信用できるか否かは、繰り返しになりますが読者・視聴者の支持いかんで決まることで、取材される側の公権力が判断すべきことではありません。全体として、那珂市議会は19世紀あたりで時間が止まっているのではないでしょうか。

全国紙記者T】このような議会傍聴規定があり、さらに議論の内容を見て、正直、驚かされました。結論としては、当事者(既知の報道機関も含めて)を交えて、議論をすべきだと思います。一部の議員の発言からは、当事者の考え、意見を聞かないまま、一方的に決めつけていると感じました。本来は意見や主張は異なれども、議論を尽くして最善の方向を見いだす議会のあり方から、かけ離れた姿です。各議員のふだんの発言内容は知らないため、あくまでも議事録を見る範囲ですが、一部議員の発言は、あまりにも偏狭な見識にもとづく議論で、「見せない、聞かせない、言わせない」という印象を持ちました。

問題と感じた点ですが、第一に、一部議員が、自分たちで報道行為の検閲とも受け取られる行為の是非を、認識なく、自覚もなく議論していることです。特に、これまでの報道内容を些細に調べることなく、先入観でインターネット報道を十把一絡げでくくってしまっている点です。

拒否する理由は大別して、既知の報道機関じゃない(記者クラブ加盟=報道機関。ネットメディアだからダメ)、希望する報道機関すべてに許可をしたら席が足りない、インターネット媒体は、取材もせず思い込みで、事実と異なる内容を報じる(発言者に、その裏付けがあるのかどうかだが……)など。いずれも、理性ある一般市民から果たして共感されるのか、はなはだ疑問です。

一方で、コロナ禍という状況の下、傍聴を制限するのは各自治体議会でも同様の対応をしているので、やむを得ないと思います。そこで、国民の知る権利の代弁者たる報道機関には、ネット傍聴環境がない中で、代替措置として傍聴を認める。では、報道機関とは、どこまでの範囲か、その線引きについての問題だと思います。
そこに、先入観や、裏付けのない論拠にもとづく議論は、開かれた議会としては、妥当性を欠きます。先入観を排して、前例主義、他自治体議会追随の姿勢はやめて、自ら当事者の意見を聞き、そのうえで合理性のある結論を導き出すのが、ありうべき議員の姿と思います。

そもそも、報道機関というくくりに、法的定義はありません。歴史の積み重ねからできあがった記者クラブ制度が、報道機関というくくりを形作ってきた経緯があります。まずは、クラブ加盟の記者たちの報道という行為に対する見識、報道に携わる者として持つべき倫理性が問われるとも言えます。

参考までに、日本新聞協会が2002年(2006年に一部改訂)記者クラブに関する見解(「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」)をまとめており、その一部を引用します。その中の「解説」部分からです。
《2002年見解をまとめた後、インターネットを利用したメディアはますます普及し、メディア環境は変化を続けている。こうした状況を踏まえ、記者クラブ問題検討小委員会は2002年見解に示された記者クラブの意義、役割をあらためて確認するとともに、2006年に本見解を補足した。それは、新たなメディアからの記者クラブへの加盟申請や記者会見への出席要請に対して、報道という公共的な目的を共有し、報道倫理を堅持する報道機関、記者クラブの意義・役割を理解・尊重し、運営に責任を負う報道機関には、クラブは「開かれた存在」であり続けることを確認するためである》――まさに、「報道という公共的な目的を共有し、報道倫理を堅持する」する者・組織が、報道機関であり、報道人だと思います》

【地方紙記者Y】こんな議論を真面目にやっている那珂川の市議会は、まさに税金の無駄遣いの典型だ。そもそも、一般市民の傍聴を断っていることが間違い。ネットメディアがどうのという議論をする前に、まずその点を見直すべきだったろう。他の自治体の議会は、感染防止策を講じた上で、制限はしているものの、傍聴自体は認めているところばかりだ。ハンターを締め出す以前に、地方自治の主役である市民を締め出しているのだから話にならない。

首相官邸はもちろん、永田町や霞が関ではネットメディアやフリーの記者を会見に入れている。もちろん、誰でもOKというわけではないが、「会見フリー」は時代の流れ。傍聴容認をどこまでの範囲にするかも、役所や議会の工夫にかかっている。インターネットを活用した情報発信が主流になりつつあるいま、ネットメディアを締め出すのは間違いだろう。

【週刊誌・月刊誌を舞台に活動するジャーナリストI】お話になりません。こんな議会があるんですね。しかも「市」の議会……。自治体名が書いてなければ、どこぞの田舎の村議会の議論かと思いますよ。それも、10年だか20年以上前の、ね。こんな連中とやり合うのなら、ハンターの記者さんも大変でしょう。

【全国紙記者E】那珂川市議会の議運の議論は、「ハンターが報道機関か否か」に終始し、論点がずれている。まず議論すべきは、議会の原則公開、透明性の確保であろう。そもそも一般の傍聴を認めず、議会のネット配信すらしていないことがおかしい。1千歩譲って傍聴(取材)を報道機関に限るとしても、原則公開の議会はどんな記者からの取材も制限するべきではない。どの報道機関(記者)が信用に足るかは国民が判断することであり、政治家であってはならない。ハンターがネットメディアだというだけで峻別する那珂川市議会の見識を疑わざるをえない。

【全国紙記者S】議論自体のレベルが低すぎて、笑ってしまいました。まともな議員さん(女性の方のようですが)がいるのは救いですが、むきになってネットメディアを締め出しにかかっている議員には、特別なご事情があるのかと思ってしまいました。しかも、『取材せずに記事を書いた』というハンター排除の理由が、まったくのでっち上げだったというのでは、名誉棄損に問われかねない話ですね。記者クラブ以外のメディアにうろつかれて、困ることでもあるんでしょうか?

那珂川市議会は、こうした声とどう向き合うのだろうか。

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