情報公開条例を改悪し、請求権者を「何人も」から「町の区域内に住所を有する者(請求日から起案して1年以上住所を有する者に限る)」に変えるなどして、入札結果や積算書など町の発注工事に関する情報の隠蔽を図ってきた福岡県大任町(永原譲二町長)。町会議員でさえチェックができないという異常な町政がまかり通ってきたが、永原氏が一番隠したかったのは、町が発注する工事を町内に本社を置く「ぺーパー業者」に「元請」として受注させ、自身がコントロールできる別の業者に丸投げさせるという仕組みだったとみられている。(参照記事⇒「ペーパー業者、丸投げ、談合|福岡県大任町・永原町政下で横行する不正公共工事の実態」)
“独裁者”と呼ばれる永原町長だけに「からくりは分かっても町発注工事の受注実態はバレない」と思っていた節があるが、世の中そう甘くはない。福岡県県への情報公開請求で入手した各業者の「工事経歴書」から、町長との関係が深いペーパー業者などが大任町から受注した工事の、大まかな件数と契約額が明らかとなった。
■ペーパー8業者、6年間で約19億円受注
“論より証拠”である。下の表は、「スコップ1本持たず、下請けに丸投げする」(町内の業界関係者)と言われてきた各業者が県に提出した工事経歴書の中から、「大任町発注」の工事分だけを抜き出したものだ。
工事経歴書を精査したところ、平成27年頃から令和3年までに、8業者が計117件もの工事を受注し、受注総額は約19億円に上っていた。工事経歴書にはすべての受注実績が記載されているわけではなく、実際の受注件数や契約額は増える可能性がある。
8業者のうち5つの業者は法人登記していない個人商店で、いわゆる「一人親方」。その売上高の多さには驚くしかない。
仕組みは、こうだ。まず、町が発注する工事をぺーパー業者に「元請」として受注させる。ぺーパー業者は町長のコントロール下にある複数の建設業者に実務を丸投げする。3次下請けあたりに町長の息子が代表を務める会社が入る場合もあるというが、同社は実務担当で表面上は出てこない。なお、ぺーパー8業者のうち、法人1社を含む3業者が、大任町に関するハンターの取材・報道が始まった後に廃業している。
建設業法は一括下請負(丸投げ)を禁止しており、違反した場合は元請も下請も「15日以上の営業停止処分」が課されることになるが、大任町では公然と違法行為が行われてきた疑いが濃い。
■側近企業4社、5年間で21億円受注
ぺーパー業者ではないが、ペーパー業者が丸投げした仕事を請負っている業者が、大任町から別に多くの工事を受注していることも分かった。下が、工事経歴書から確認できた各社の実績だ。
平成28年から令和3年までの5年間に4社で91件、契約額で21億円を超える町発注工事を受注していた。
大任町では、平成27年から令和3年にかけて、たった12の業者が208件もの工事を受注。契約額は約40億円以上に達していた。永原町長及びその周辺に従順な関係者だけが、税金を原資とする公共事業を独占している形。役場の関係者からは、次のような声があがっている。
「町が発注する工事の受注業者を決めているのは町長です。役場の人間なら大抵は知っていますよ。元請で仕事をもらっている複数の業者が、実は工事の実務はやらず、丸投げしていることも周知の事実です。業法違反の実態があることを、警察が知らないとは思えない。圧力なのか忖度なのか分かりませんが、報道が先行するいまの状況は、やはりおかしいと思いますね。あと、町長が恐れていたのは、まさに工事発注の実態が暴かれることで、そのために情報公開条例をいじくって町外からの請求を止め、役場内では指名業者が漏れないよう、管理する職員を一人にしました。関連文書を廃棄させるなど徹底した隠蔽が行われました。ハンターの記事が出るたび役場内で犯人探しが行われますが、誰もが、別に悪いことをやっているわけではありませんよ。そもそも、刑事訴訟法は公務員の告発義務を定めていて、役人が犯罪行為があると認めたときは告発しなければならないんです。恐怖政治は、そろそろ終わりにしてもらいたいものです」
暴力を背景にした永原町長の支配体制は、確実に崩壊への道をたどっている。