昨日、ハンターの記者が取材目的で委員会の傍聴を申し入れたことをきっかけに、福岡県那珂川市の議会が行っていた議論の記録を配信した《参照記事⇒「記者クラブ以外はマスコミに非ず」― 福岡県那珂川市議会・一部議員の不見識》。報道とは何かが理解できていない一部議員の存在に唖然とする思いだが、そのそも、新型コロナを理由に一般市民の傍聴を一切認めていない同市議会の姿勢こそ、批判されるべき対象ではないのだろうか。
ネットメディアを軽くあしらうことに一々腹を立てるつもりはないが、同議会の議会運営委員会で一方的に当サイトの取材活動や記事を、記録に残る形で誹謗中傷した議員たちの発言を見過ごすことはできない。このどうしようもない低レベルの議論について、ハンターとしての見解を示しておきたい。
■議論をリードした議長の発言
まず、議事の最初にあった髙原隆則市議会議長の発言から。
「あるインターネットの記者を名乗る方から、傍聴させてほしいという申し出がありました。いろいろあったみたいですけど、松尾(経済福祉委員会)委員長の判断で、記者と言われても、インターネットの記者と名乗る方でありまして、いわゆる筑紫地区の4市の記者クラブに所属してあるわけでもないし、一般の報道機関でもないというようなことで、松尾委員長の判断で、それは断られたようであります」
――つまり、議長も経済福祉委員会の委員長も、記者クラブ加盟社だけを報道機関として認めているということだ。時代遅れの狭量さに辟易するが、「一般の報道機関」が何を指すのかについては、このあとの議論でも出てこないから判然としない。残念なことに、続く議長の不見識極まりない発言が、全体の議論をリードしていく。それがこのくだりである。
「そこでいわゆるマスメディアの傍聴について、一般の傍聴についても12月議会、3月議会、状況に応じては、もしかしたらオープンにするかもしれませんけども、現状お断りをしておるわけです。そこでマスメディアについては、一応、前回オッケーで入れていますから。じゃあ、どこまでをマスコミとして認めていくのか、そこを議論いただいて、議会運営委員会としての結論を出したいと。(中略)どこまでをマスコミとして認めていくのか、そこの結論を出していただきたい」
「どこまでをマスコミとして認めていくのか」――報道機関の監視対象である権力側が、“どこがマスコミか、こちらが決める”と言っているのだ。都合の悪い相手が出てくれば、「お前のところはマスコミではない」として排除するつもりなのだろうか。そうなると、不見識を通り越して不適切。自治体や議会、さらには公人が批判の対象であることを全く自覚していない間違った考え方と言うしかない。しかし、全体の議論は、この議長が示した歪んだ方向性に沿って進んでいく。
■裏付けなしで誹謗中傷
壽福正勝という市議の主張は、この議長発言を受けてものだった。
「今、議長が言われたことで、要はですよ、今回のことについては、あれはハンターと名乗っとったですかね。そういうとこなんですけど、実体がよくつかめないという話も聞いているんですが、要はインターネット媒体という中で、いろいろ今回のようなことをやっているわけですよね。それが報道機関とか、マスメディアとかっていう位置づけになるかどうかということだろうと思うんですよね。私どもの、今までの認識としては、先ほどお話がありましたように、当然、筑紫地区の読売新聞、西日本新聞、毎日新聞、朝日新聞の4紙、そういった報道機関と、あるいは、テレビ、ケーブルテレビを入れたテレビ関係が、認識では、本会議場に来られても、そういった方だったわけですよ。今回初めて、インターネット媒体みたいなことでね、報道機関だと言われても、そういう認識がないもんだから。だから、これはちょっとどうなんですかね。私は、それを報道機関だというふうに認めてしまうと、今からこういうことが、ハンターに限らず、いろいろなところが来ると。本会議の記者席もそんなに広いわけじゃないんですよ。そういったことを考えると、今まで我々がやっていた、認識をしていた報道機関でいいんじゃないかと。それをそこまで広げる必要性があるのか。それを報道関係として認めるということにはならないんじゃないかというように思います」
“マスコミ=マスコミュニケーション”とは「大衆伝達」のこと。“マスメディア”はマスコミの媒体、即ち新聞・テレビ・ラジオ・雑誌のことで、もちろんWEBサイトもその中に入る。どうやらその基本的なことさえ理解していないとしか思えない壽福議員は、認識している報道機関(つまり記者クラブ加盟社)以外は報道機関として認めないと言っているのだ。現実が分かっていないのか、屁理屈なのか分からないが、認識不足もはなはだしい。
最悪なのは、この壽福市議が当サイトに対する根拠のない誹謗中傷を繰り返し、それをメディア選別の理由にしたことだ。「ネットメディアも認めるべきだ」という複数の市議の発言を受けて、あることないことまくしたてていた。
「報道機関というのは、当然取材しますよね。基本的に何かを出そうと思えば、当然取材をしますよ。普通そうです。松尾委員長がハンターと話したときに、『ちゃんと取材しているのか』って、博多南駅前ビルの関係を言うなら、『役所とどういうことで、どうなっているのかという、そういう取材をやって載せているのか』って、“それはしてない”と。自分の思いで出しているわけですよ」
「取材をして、それを根拠に何かを主張されるのはいいけども、取材もしてないというようなことを言われたと。それはいかがなものかと。だから、その辺は報道機関というのは、そこで区別をしないと、自分の思いだけで、インターネット媒体ではどんどん書いていって、人を誹謗中傷するようなことがあるかもしれん。本当にそれでいいのか。やっぱり報道機関というのは、一定の、一般的な常識っちゅうたらいかんですけど、そういうものがあってやりよるわけですから、ハンターがそうかそうじゃないかということやなくて、そういう松尾委員長との話の中で、松尾委員長が言ったら“取材していない”と言うから、そういったことを出すっていうことがいかがなもんかて。そういうものがあるから、きちっとした報道、マスメディアというものは、この中で、議会運営委員会の中できちっと決めとったほうがいいんじゃないかっていうことを言っているんです」
「取材もせんで、自分の思いだけでバーと書くって、それが報道関係者というのを認めるんですかって。個人的な意見をバッと書くんやったら、我々が、議会が、逆にそれを報道関係者だと、マスメディアだということを認めること自体が、議会はね、『なんや、この議会は』って、何でも開かれた議会っていったら、ものすごく聞こえはいいですよ。だけど、ありもせんようなことを取材もせんどいて、自分の思いだけで書くというのがよ、それを報道機関と認めるんですか。そういうことでしょ。違ったことを書いているわけですから」
松尾という委員長から聞いたという形で、「ハンターの記者が取材せず記事を書いた」と断定し、「だから報道とは認めない」という論法だ。裏付けをとったという話はないまま、最後までこの調子で持論を展開していた。
この壽福氏の発言を議事録で見たハンターの記者が同氏に対して抗議したのだが、その時のやり取りを再現しておきたい。
――8月27日の議運の議事録にハンターに対する発言があった。弊社として看過できない発言であり、お尋ねしたい。
壽福:そうですか。――あなたは、松尾市議から聞いた話として発言されている。「ハンターは取材をせず、自分の思いで記事を書いている」と。
壽福:執行部に取材をしなくて、書いているということでしょ。――きちんと取材しているが。
壽福:そうですか。――松尾市議に確認した。松尾市議は「そういう意図で言っていない。書くなら、ちゃんと取材して書いてくれと記者に話したというやりとりはあった」と認めている。
壽福:私は聞いたままを、議運で発言した。――取材をせずに書ける内容ではない。
壽福:ああ、そうですか。――なぜこのような発言になったのか?
壽福:そうなのか、私はわかりませんが、私が聞いたままを発言した。――松尾市議に確認してもらいたい。
壽福:でもあなたがそのように松尾市議に聞かれたんでしょ。――次の議運で、きちんと説明してもらえるか?
壽福:何をですか。私は松尾議員から聞いたままを発言しただけ。どのようにしたらいいのか。御社のことをどうのこうの言うことはない。ネットでハンターを調べても、よくわからない。記事を読んだこともない。――記事を読んだことがないのか?
壽福:まったくありません。――読んでもらえれば、取材せずに書ける内容かどうかわかるはずだ。
壽福:ああそうですか。一般でいう報道機関という会社ではなくて、という意味合いの発言だったと思う。――ここまで「取材しない会社だ」と言い切られると。
壽福:まともに取材しないじゃなくて、行政、執行部に対して取材をしないで書いていると――。――それを記事を読まずに、発言されたのか?
壽福:聞いたから言ったまでで。もちろん読んでいない。――読んでもないのに、聞いたまま発言したのか?
壽福:そうだ。――随分いい加減な発言だが。
壽福:いい加減ですかね。そういうふうに聞いているから、そのまま発言した。
誰がどう見ても“いい加減”である。壽福氏は、松尾市議から聞いたというだけで、何の裏付けもとらずに、ハンターの記者が「取材せずに書いた」と断言していたのだ。しかも、「記事を読んだこともない」という。「行政、執行部に対して」云々と言い逃れしているが、当サイトの記者は、行政側にきちんと取材した上で記事を書いている。それは、記事中に何度も出てくる「市の担当者は~」という言葉でも明らかだし、取材しなければ分からない“事実”が、壽福氏の主張を否定している。当該配信記事を読めば、分かることなのだ。
■委員長は壽福発言を否定
ちなみに、壽福氏に「取材もしないで書いた」と話したとされる松尾委員長は、事実関係の確認を求めたハンターの記者に次のように説明している。
「そういういい方はしていない。あなたに(記者に)『取材をきちんとして、記事にしなさいよ』と言った。そのあとで、あなたに都市計画課を紹介したでしょう。そんな発言をするわけがない」「(壽福氏が)聞き間違えたのか。私も議事録を見たが、これはあんまりだと思った。私の名前も連発されている。『取材をきちんとしなさいよ』という話が違う内容になっている。議運に出席していたら、訂正していた」
松尾氏の話が事実なら、壽福市議の議運での発言はまったくのでっち上げ。当サイトを貶める悪質な誹謗中傷である。
「(ハンターの)記事は読んだこともない」とうそぶく壽福氏が、人の話を確認もせず、議事録という公式記録が残る会議の場で、ハンターの取材活動や記事を罵倒したことは絶対に容認できない。本稿で、改めて謝罪を求めておきたい。
次週の配信記事では、那珂川市議会議会運営委員会の議事録を読んだ全国のジャーナリストたちから寄せられたコメントや意見を紹介する。
(ハンター・中願寺純隆)