理不尽な決定だ。今年9月に鹿児島県指宿市の公立小学校に勤務する20代の女性教師が、同僚で30代の教務主任に呼び出されて性的暴行を迫られ、懸命に難を逃れたものの身体と心に大きな傷を負った問題で3日、鹿児島県教育委員会が加害者である男性教師を「定職1ヵ月」の懲戒処分にしたことを公表した。免職ではなく停職という一段軽い処分。加害男性は依願退職したというが、退職金は支払われることになる。
処分理由を問い質したハンターの記者に対し、県教委側が示したのは「猥褻行為があったとは認められないから」という到底容認できない一言。改めて、加害男性が被害女性の両親と学校長、教頭の前で発した「肉声」を確認しておきたい。
■腐った鹿児島の教育界
鹿児島の教育委員会は腐っている。“猥褻行為を行おうとした男が、なぜ懲戒免職ではないのか?”という記者の問いに対し、県教委の担当者から返ってきたのは「猥褻とは認められない」という、ふざけた発言だった。
“なぜ猥褻ではないのか?”――県教委が理由にあげたのは、「本人に聞いたところ、猥褻を否定したから」。さらに確認を求めたところ、「本人」とは加害者のことだという。呆れてものも言えない。卑劣な加害者は、被害女性の両親と学校長、教頭の前で「猥褻」を認めていたからだ。その時の発言を再掲する。
■犯意を認めていた加害者に「退職金」
被害女性の母親から「(娘に)何をしたか?」と追及された加害者は、こう発言する。
「はい、あの本当に、こう猥褻にあたるような、そういったことをしてしまって、本当にもう、あの謝っても謝っても、本当にどうしようもないということだというふうに、はい。大変申し訳なく思ってます」
母親から性的な行為をする“下心”があったかどうかについて確認された加害者は「下心は最初はありませんでした」とごまかしたが、さらに厳しく追及されると「ただ時間が経つにつれて、段々段々、私も、あの酒の量も増えてきましたし、時間も遅くなってきましたので、まぁそういった部分がでてきたと思います」。
“何をしたかったんですか?”に対しては「まぁそのような……」とぼかし、最後は“どうにかなりたいと思っていたわけでしょ”と詰められ「下心はあったと思います」と認めていた。
「どうにかなりたい」という下心をもって部屋の鍵をかけ監禁し、相手の女性の身体をさわり、傷までつけた――これは明らかな強制性交未遂だろう。
県教委は、「猥褻ではなくセクハラ」だと主張しているらしいが、とんでもない話。教員同士のかばい合いであり、腐った教育界の典型例が序実に現れた形だろう。「退職するからいいじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、懲戒免職ではないため、卑劣な犯行に及んだ加害者に、県民の税金から退職金が支払われることになる。本当にそれでいいのか――。
■新たな“加害者”への警鐘
懸念はまだある。こうした被害者無視の歪んだ教育行政が、さらなる被害を生む可能性があるということだ。
じつは現在、指宿市内の、しかも一部のPTA関係者の間から、被害にあった女性教師のことを「騒ぎ過ぎ」「事を大きくし過ぎた」などと非難する声が上がっているのだ。ある市議会議員に至っては、同僚議員らの前で「夜、男性の部屋に行ったのがまずい」などと発言したのだという。どこにでも、腐った大人はいるものだ。
身内が女性教師のような被害にあったとして、新たな“加害者”たちに同じことが言えるとは思えないが、「猥褻ではない」とした県教委の間違った判断は、こうした一部の歪んだ考えに免罪符を与えることにつながりかねない。
真相を確認もしていない連中が、被害者の傷口に塩をぬるようなマネをすることは許されない。心無い誹謗中傷をした方たちについては複数の顔ぶれが確認できているので、「二次被害」が続くようなら、直接話を聞いた上で記者とのやり取りを実名で公表する予定だ。傷ついた弱者を攻撃した人間に、「人権がどうの」という資格はあるまい。