ビッグモーター・福岡店元社員が語る悪質業務の実態

「法令遵守なんてまったくありませんね。売上のためなら、何やってもいいというブラック企業ですよ」――そう話すのは、福岡県内のビッグモーターで数年間、営業を担当していた元社員のYさん。故意に車体に傷をつけて保険金を不正請求したり、公道の街路樹に除草剤を撒いて」枯れさせるなど、数々の「悪事」が明らかになっているビッグモーター。ハンターの地元、福岡県や佐賀県の店舗でも同様のケースがあったとYさんは言う。

■除草剤説明書の2~3倍を散布

Yさんが福岡県内のA店舗に配属された間もない頃。店長がYさんを呼ぶと「これを撒いて」と手渡されたのは、大きな容器に入っていた除草剤だった。

指示されたのは、歩道にある街路樹や低木の下にはえてくる雑草。店長からは「環境整備点検で偉い人が見回りにくるので、雑草があれば減点される」と説明を受けた。しかし、街路樹などは公道にあるので大丈夫なのか心配になったYさんは、同僚に相談した。すると同僚は「今までずっとやっていてバレたことがない。雑草を手で抜くのも面倒だし、仕事も忙しいので除草剤が手っ取り早い。多めにまけば雑草ははえてこない。環境整備点検でバツがつくと給料が減る、異動になるなど最悪だから、こうするしかない」と言い、ビッグモーターの「経営計画書」を読むように勧められたという。

経営計画書には、職場の環境整備の方針として「会社の周り10メートルは毎日清掃する」とあり、それが除草剤の根拠となっていた。Yさんは仕方なく除草剤をまいたという。

A店では、月に1度ある環境整備点検の前に2回くらいの頻度でまいていたというYさんは、申し訳なさそうにこう振り返る。
「当然ですが、1年か2年かして街路樹の葉が枯れ始めましたよ。その後異動になったのでどうなったかわからなかったが、今回の騒動後、マスコミ報道で街路樹が枯れて切られていたことを知りました。私がいた頃は、除草剤の説明書にある分量より2、3倍は多めにまいていましたね。枯れるのも当然ですよね」

グーグルのストリートビューで確認すると、ビッグモーターに隣接する商業施設前には街路樹、低木が青々と成長しているのがよくわかる。遡って、2013年4月のものを見ると、すでにビッグモーターの前の街路樹や低木はほとんどなく、砂がむき出しになるという不自然な状態だ。

ビッグモーターは、社員や元社員による告発がメディアで報じられると、突然『ご指摘を受け当社で調査したところ、当社の複数店舗におきまして、過去に店舗で清掃活動の際に使用した除草剤等による影響により、街路樹や植え込みが枯れた可能性が高いことが判明いたしました』、『除草剤等による影響で枯れた可能性の高い街路樹や植え込みにつきましては、今後、行政のご指導をいただきながら、外部専門家にも相談のうえ、土壌の入れ替えや植樹など、当社として原状回復に向けた手続きを行ってまいります』とホームページで責任を認めた。だが、枯れたり、切られた街路樹は元に戻らない。福岡県をはじめ他の都道府県でも同様のケースが多数報告されており「刑事告訴も辞さない」と憤る自治体もある。

■外注先にも押し付け販売

ビッグモーターが依頼した外部弁護士の調査で、保険金不正請求の疑いが明らかになったことを受け、国土交通省が立入検査を実施。金融庁も、ビッグモーターに保険販売を委託する保険会社7社に対し、保険業法に基づく報告徴求命令を発出している。

Yさんが見せてくれたビッグモーターの経営計画書には「自動車保険を経営の柱」、「自動車保険に加入していただくために車を売る」と書かれており、計画書は毎朝、出社している社員が声を出して読み上げるのだという。前出のYさんには、保険契約についても苦い思い出がある。
「車を1台売ると、ワイパーゴムの交換などが無料になる“乗るだけ安心パック”とか、車のコーティングなどさまざまなオプションがあります。オプションの中でも自動車保険の加入は必須。保険がとれないと、店長や上司に徹底的に詰められて『なぜとれない』と延々と説教されました」

ビッグモーターは、中古車の販売から保険、修理までワンストップですべてが揃うことを“ウリ”に事業を急成長させた。だが、洗車や修理などは外注することもある。そこでも、発注側の立場を利用した悪質な商売が行われていた。再び、Yさんの話。
「店長から、『外注先のスタッフの車を見てこい。車検がいつか調べろ』と言われて聞きにいきました。要するに、ナンバーと車検をチェックしておいて、ビッグモーターで新たに買わせるか、検査受けを強制的に出させろというのです。発注者という上から目線で、ビッグモーター以外では買うなという意味です。車検の満了日がわかれば、確実に受注できる、売上の計算ができるという利点もある。おまけに買わせれば保険もオプションパックもすべて加入させられる。むこうの責任者は最初、渋々教えてくれていましたが、そのうち『どこで買うのも自由』と断られるようになりました。当然のことです。するとビッグモーターは『洗車料金は半額しか払わない』と言い出した。ホント、むちゃくちゃな会社です」

まさに「下請法」で定める優越的地位の乱用であり、商業の自由を毀損する手法だ。ビッグモーターの「闇」はどこまで広がるのだろうか?

 

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